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アニメ版 ONE PIECE
第849話
「夜明け前 侠客団ガーディアンズ団長ペドロ 」 




【原作の対応話数】
87巻 第877話~878話



もくじ
あらすじ
原作からの変更点
感想
登場した技
声の出演



【あらすじ】
 
ペロスペローが生み出したキャンディの壁を打ち破ったルフィ。彼はサニー号を出航させるため、船を乗っ取ったカタクリと対峙する。
 そんなルフィの姿を、ペドロはある男と重ね合わせていた。海賊王となった男、ゴールド・ロジャー。かつて光月おでんと共にゾウの地を訪れた彼は、ペドロにいずれ訪れる「出番」の到来を告げていたのだった。

 ネコマムシ達の待ち望む「世界の夜明け」。5年前、ペドロはその礎となるべく、ビッグ・マムに片目と50年の寿命を差し出し生き残る道を選んだ。だが彼は、今回のルフィ達との航海が最後の旅となる事を予感していた。
 同時にルフィ達こそが、自分達一族と光月家が数百年に渡って待ち続けた、「夜明け」を導く者達である事も。

 海岸を包囲する軍艦からの砲撃に加え、後方から迫るビッグ・マム。最悪の状況をサニー号の“クー・ド・バースト”によって切り抜けようとするナミ達に追い打ちをかける様に、ペロスペローのキャンディが船を包み込む。サニー号は動きを封じられ、このままでは出航する事すらも叶わない。
 絶体絶命。その時、ペドロが動いた。その剣技により、ペロスペローに戦いを挑むペドロ。しかし7億の賞金首であるペロスペローは、容易く破れる相手ではない。キャンディの能力によって攻撃をいなされ、やがてペドロは地へと倒されてしまう。

 しかしペドロには、ただ敗北するつもりなど毛頭なかった。ロジャーから告げられた「出番」。リスクを犯してまで拾い上げた、命の使いどころ。ペドロは、今こそがその時だと直感していた。
 ペロスペローさえ倒せれば、彼のかけた「魔法」は全て解ける。ペドロが衣服を広げると、そこには大量の爆弾が仕込まれていた。焦るペロスペローを、彼は決して逃がさず、抑え込む。
 別れの言葉と共に、彼は導火線に炎を灯す。ルフィ達を生かすため、ペドロは自らの犠牲を顧みない、決死の大爆発を引き起こすのだった。



【原作からの追加点・変更点】
※セリフの変更点は細かい差異が多いため、気になった箇所のみ紹介


・ペドロの回想シーンが追加。
 くじらの森に置かれた“ロード歴史の本文ポーネグリフ”の前で、ネコマムシが「世界の夜明け」という言葉を語るシーンが描かれている。

・ルフィとカタクリが互いの伸ばした腕での撃ち合いを行うシーンにて、原作では拳同士が衝突するだけだったが、アニメではカタクリが腕を部分的に膨張させていき、その勢いを利用してルフィを後方へと跳ね除ける様に変更。

・キャロットおよびペドロの用いる二人称が、ミンク族特有のものに統一。
 「あいつの能力……!! ルフィみたい!!」→「あティアの能力~~~」(カタクリに対し)
 「これでお前の“魔法”は全て解けるよな…」→「これでゆガラの~~~」(ペロスペローに対し)

・後方から迫りくるビッグ・マムの歩みにより、地割れが発生する演出が追加。

・ペドロがルフィの背中にロジャーの姿を重ね合わせ、彼から言われた「人には必ず出番ってものがある」という言葉を反芻する描写が追加。

・カタクリに“ゴムゴムの鷹銃乱打”を叩き込んだ際、ルフィが「覇気を纏った攻撃が通用しない事」に疑問を持つ描写が追加。

・ペロスペローがアメで作った足場を動かし、サニー号から陸地へと移動するシーンが追加。

・サニー号へと飛び乗ったナミとジンベエが、アメで固められたチョッパーとブルックの安否を心配するセリフが追加。

・ペドロがキャロットに「突然の事態に驚くな」と語りかけるシーンが、原作ではサニー号へと駆ける最中に話されたが、アニメではサニー号の前でビッグ・マムに対峙する様に身を構えた状態で語られる様に変更。

・ペロスペローからの海岸線包囲の指示を受けた際、ニワトリ伯爵が麦わらの一味の生存に驚くシーンが追加。

・ペロスペローからの通信に従い、モンドールがナッツ島のアマンドに「ホールケーキアイランド南西の海岸の包囲」を指示するシーンが追加。

・ナミがジンベエに“クー・ド・バースト”の説明をする際のコマにて、原作では船の中庭にてルフィとカタクリが戦闘を行う様子が描かれているが、アニメでは省略されている。

・ジンベエが錨を上げながらチョッパーとブルックにかけた言葉が、「意識はあるのか!?」から「意識を強く持て!」に変更。

・ナミが“クー・ド・バースト”使用のためのコーラをセットする際、原作ではナミが1人で準備を進めていたが、アニメではキャロットがナミに代わり残る2本の樽をセットする様に変更。
 これに伴い、原作ではキャロットがナミに対して発した「船がキャンディによって捕まった」事を伝えるセリフが、アニメではナミからキャロットに対するものになっている。

・原作では奇襲をしかけるのみだったペドロとペロスペローの戦闘シーンが、アニメでは加筆。
 “獣剣 唐獅子”によってキャンディの盾を打ち砕くが、杖の一撃を腹に叩き込まれ、地面に倒された。更に首元へとキャンディを流し込まれ、身動きを封じられかけている。

・原作ではダイナマイトの爆発を引き起こした後に描かれた回想シーンが、アニメではそれ以前のタイミングに散りばめられている。

・ペドロを抑え込んだペロスペローが、かつて「ノックス海賊団」の名の意味を「夜明け前」と語ったペドロに、「お前に待っていたのは死という永遠の闇だけ」と述べるシーンが追加。

・ペドロの回想シーンが加筆。ロジャーの海賊船、オーロ・ジャクソン号が、夜明けと共にゾウを訪れた際のシーンが描かれた。

・ロジャーの死をペドロに伝えるワンダのセリフが、涙を流しながらのものに変更。またそれを聞いたペドロも、「ロジャーが死ぬわけがない」と涙を浮かべている。

・ロジャーの公開処刑が行われた際のシーンが追加。

・“巻0”に収録されている「第0話 STRONG WORLD」における、ドフラミンゴ、バギー、ミホーク、クロコダイル、モリア、シャンクス、ドラゴンがロジャーの公開処刑を見届けた際のシーンが追加。
 またドフラミンゴに関しては、ロジャーの死によって「新時代が幕を開けた」と述べるセリフが追加されている。

・上記シーンの直後、船で酒を飲む24年前の白ひげの描写が追加。
 第0話にてシキと酒を交わしたシーンが元となっているが、シキや仲間達の姿は削除されている。

・ロジャーの死に涙を流す幼少のペドロのシーンにて、原作第100話におけるロジャーの言葉が使用されている。
 またその際、ペドロがいずれ自分も海へと出る事を決意するシーンが追加。

・ペドロが自爆を行う際、ロジャーの「人には必ず出番がある」という言葉を思い出し、「今がその時だ」と述べるセリフが追加。



【感想】

>全体感想

 遂に訪れた、ペドロ決死の自爆回。
 というわけで、1話を丸々使ってペドロにスポットを当てた内容となってます。回想を事前に挿入しておいたり、原作に比べ「ペドロがどういう想いで行動に至ったか」が、かなり分かりやすく描かれていたんじゃないかと。
 名場面なだけあって、アニメ的にもかなり気合が入ってます。原作では、意外と駆け足で自爆まで持って行っていた印象があったんですが、アニメではよりペドロに感情移入がしやすい形となっていた。演者さん達の好演もあり、このお話に関して言えば、原作以上に好みかもしれない。

 加えて、今回のエピソードにはあの海賊王ゴールド・ロジャーが登場しますが、初代ロジャー役である大塚周夫氏が逝去なされてから初の「喋るロジャー」となっているみたいです。(若年期および既存の音声の流用は除く)

 ロジャーの声と言えばアニメ初期のオープニング等でも馴染みが強い上、前任が亡くなってからの期間が長かったため後任のハードルも高くなっていましたが、新たにロジャー役となった津嘉山氏も中々に渋く良いお声であり、ロジャーの後任としての違和感は少なかった様に思います。
 故大塚氏とは少し毛色の違う雰囲気だが、その人物像がほとんど見えていなかった当時とはファンがロジャーに抱いている印象も変わっているだろうし、そういう意味でも悪くない配役だったんじゃないかと。

 また、津嘉山氏演ずる新たなるロジャーを根付かせる目的もあるのか、今回はロジャーの名台詞オンパレードの様な回にもなっていました。
 大海賊時代の幕開けとなったあのセリフに加え、「受け継がれる意志、時代のうねり、人の夢」というワンピースのテーマとも呼べる3つの言葉。
 双方ともアニメOPでも使われたセリフである事も含め、ロジャーを代表するセリフだからね。早い内に、新たな役者で聞くことが出来て良かったと思う。



>「数百年間待ち続けた」

 この辺に関しちゃ未だ明確になっていない……というか、物語の核心に迫る部分だと思うのだが、ペドロ達一族および光月家は「世界を夜明けへと導く者」を、数百年に渡って待ち続けているという。
 数百年という事は、光月おでんが航海を共にしたというロジャーの没後よりも遥かに昔、おそらくは世界政府が発足した800年前の先祖にまで遡る事なんだろう。

 「我ら一族」っちゅうのは、ゾウに住まうミンク族全般を指す言葉と受け取っていいのかな。
 で、光月家と言えば歴史の本文を後世に残す技術を持った一族。歴史の本文は、“Dの一族”に纏わるものと思われる「ある巨大な王国」の思想と存在を未来へと託すために作られたもの。800年前、世界政府の発足と同時期に歴史の本文を刻んだ光月家が「待っている者」と言われれば、それは恐らくは語られぬ歴史を解き明かし、王国の思想と歴史を背負い「世界」と戦う“Dの一族”の者達であると思われる。

 白ひげが死の間際に語った、「ロジャーが待っている男」と、これは同義だ。
 つまり光月家とペドロら一族に加え、ロジャーもまた「世界を夜明けへと導く者」を待っているのだと思う。

 ロジャーは“ひとつなぎの大秘宝”を見つけ、この海を制する海賊王となった。
 しかし、彼が旗揚げの際に掲げた「世界をひっくり返す」という目標は果たせなかったのだと思われる。ペドロ達一族が待つ人物は、ロジャーではなかった。数百年に渡り、今も彼らがその人物を待ち続けている以上、ロジャーでは世界を夜明けへと導く事はできなかったのだ。

 発見する事そのものが「世界をひっくり返す」とされる大秘宝だが、ロジャーではそれは叶わなかった。
 扱う事が出来なかったのか、実は発見自体が出来ていなかったのか。とにかく今なお、世界はひっくり返る事なく維持されたままである。

 しかしロジャーに出来なかった事が、ルフィになら出来る……とペドロが踏んだのには、何か明確な理由があるんだろうか。彼自身が持つ能力や人格は、ロジャーと重ね合わせる様に描かれる事は多い。が、それは別に「ロジャーを越える資質を持つ」様に表現されているワケではない。現時点では、なぜルフィになら、世界を夜明けへと導く事ができるのか、というのは明確ではない。

 考えられるとするなら、本人の持つ能力だけで言えば、ロジャーにもそれは可能であった、という可能性がある。
 しかし、時代は彼に味方をしなかった。そして残された時間も、多くはなかった。レイリーによれば、ロジャー達やオハラは「急ぎすぎた」のかもしれないと言う。寿命と言う時間制限のもと、結論を急いだ航海となってしまったからこそ、ロジャーは世界をひっくり返す事ができなかったんだろうか。

 レイリーはこうも言っていた。ロジャーと、ゆっくり世界を見渡したルフィ達とでは、「導き出す答えが同じとも限らない」と。
 この“偉大なる航路”を制し、導き出した「答え」の内容こそが、この世界をひっくり返し、夜明けへと導くことが出来るか否か……その違いとなってくるのかもしれない。

 そういえば、ルフィの父である革命家ドラゴンも、「世界は我々の答えを待っている」と意味深な発言を残していた。彼が導く答えもまた、ルフィやロジャーとは異なる結論となるのだろうか……?



>サニー号のコーラ樽

 アニメでの描写を見ると、サニー号に現在置かれているコーラ樽の数は全部で5本。
 一度のクー・ド・バーストに必要なコーラの数は3本なので、この緊急脱出手段が使えるのはこの1回が限度って事ね。
 ……ドレスローザの時もそうだけど、もっと潤沢に用意しといたら良いのになぁ。まあ、奥の手がそんなにポンポン使えてもアレですけど。

 この窮地を切り抜けても、しばらくは追われる展開を続けなければならない麦わらの一味ですが、基本的にもうフルパワーのクー・ド・バーストに頼る事はできないと考えた方が良いんだろう。……まあ、アニメ的な都合で、急遽タルが1本増える事もありえるかもしれないけど。



>キャロット「ブルックもチョッパーも元に戻してよ! アメ男!」

 どうやら「チョニキ」と呼ぶのは本人の目がある時だけだったらしい。

 ……というか、キャロットはブルックの事を「死体男爵」と呼ぶので、本来これはナミのセリフだったんじゃないかって気がする。原作じゃ、フキダシで誰の発言かの判別がつかないコマなんで確証はないが、アニメ側の解釈ミスっぽいかも。細かいとこだけど。


>オーロ・ジャクソン号、ゾウへ

 ペドロ幼少期の回想にて、ゾウを訪れたロジャー達は住民達からの歓迎を受けている。何気に、レイリーもちょっとだけ映り込んでたり。
 詳しい時系列は分からないが、上陸前の時点でこれだけ彼らが受け入れられているという事は、おでんやイヌアラシ、ネコマムシを連れて旅立った後の事なのかな、この回想は。
 ペドロのみならず、幼き日のワンダまでがロジャーの死に涙している辺り、彼の人柄がミンク族達に愛されていた事もうかがい知れる。

 原作などでも何度か描かれて来たが、船にはかなりの異彩を放つ巨大なタマゴが置かれている。これ何なんだろうな……?
 こんなにデカくて邪魔っけなものを意味もなく置いておくとは思えないし、やはり何か大きな意味を持つアイテムなんだろう。仮に「こういう形の部屋なんです」って言われたら、ずっこけながらも納得するけど。

 ロジャーに旅の同行を願い出るも、まだ「出番」ではないとして待機を命じられるペドロ。若干ながら、シャンクスに憧れた少年期のルフィの姿と被る。ペドロもまた、ロジャーから何かしらの意思を受け継いだのかな。



>ロジャーの公開処刑

 ゴールド・ロジャー最期の日。残る僅かな命を世界全土へと燃え広がらせ、“大海賊時代”幕開けのきっかけを作ったかの言葉も、二代目となる演者さんの声で聞く事ができます。
 このセリフ、原作第1話とアニメの最初のオープニングでは微妙に言い回しが異なるのですが、今回はアニメ版のものが採用。その後に出て来る、2番目のオープニングでのセリフも同様で、たぶん耳馴染みの深い方の言い回しをあえて選んだんだろう。

 更に今回は、この公開処刑をローグタウンで見届けた海賊達の姿も描かれた。
 これは「第0話」に収録されたシーンで、更にドフラミンゴに関してはセリフも追加されている。
 「新時代がついに幕を開けた」ってアンタ……この頃から、新時代って言ってたんスね。白ひげが死ぬ前にも、また新時代を予言してるし。なんか単純に、時代の移り変わりを感じるのが趣味なんじゃないかって気がしてきた。

 ついでに、直接処刑の場にこそいないが、船で酒を煽る白ひげの姿も確認できる。
 これも第0話にて描かれたシーンを元にしており、「仁義」の文字が入った瓶のラベルまで再現されている。
 ……が、これは原作では金獅子のシキと共に酒を飲んでいたシーンであり、後ろにはジョズら息子達の姿も描かれていた。のだが、映画連動と言うワケでもない今回はシキの姿を出すワケにもいかなかったのか、ついでに息子たちの姿まで抹消された結果、船で一人酒を飲む白ひげという若干寂しさのある映像となってしまっていた。……誰か、付き合ってやれよ。



【登場した技】 
ゴムゴムの火拳銃
使用者:ルフィ
 前話ラストに使用したシーンと同様。
 ペロスペローの“キャンディメイデン デコラシオン”を貫き、そのままサニー号のカタクリ目掛けて拳を撃ち込んだ。しかし武装色を纏ったカタクリの拳とぶつかり合いになり、相殺された。

ゴムゴムの ホーク 銃乱打ガトリング
使用者:ルフィ
 サニー号を乗っ取ったカタクリを船から追い出すために使用。
 しかし覇気入りの攻撃であるにも関わらず、能力により身体を変異させたカタクリに攻撃が当たる事はなかった。アニメ版では、この事にルフィが疑問を持つセリフが追加されている。

キャンディウェイブ
使用者:ペロスペロー
 “クー・ド・バースト”による麦わらの一味の出航を阻止するために使用。サニー号の船底をアメで固め、身動きを封じた。

獣剣 唐獅子
使用者:ペドロ
※アニメオリジナル技
※アニメオリジナルシーン

 ペロスペローとの戦闘にて使用。
 展開されたキャンディの盾によって防がれるが、連続斬りによってキャンディを打ち砕く事には成功している。



【声の出演】
ルフィ・・・・・・田中真弓
ナミ・・・・・・・岡村明美

ゴールド・ロジャー・・・津嘉山正種

ビッグ・マム・・・小山茉美
ジンベエ・・・・・宝亀克寿
ドフラミンゴ・・・田中秀幸
ペドロ・・・・・・三木眞一郎
キャロット・・・・伊藤かな恵
ニワトリ伯爵・・・麦人
ペロスペロー・・・内田夕夜
モンドール・・・・伊丸岡篤
アマンド・・・・・水田わさび
幼いワンダ・・・・折笠富美子

指揮官・・・・・・荒井聡太
ガーディアンズ・・・新井良平
砲弾・・・・・・・戸松拳也 竹田海渡
         宮園拓夢
ナレーション・・・大場真人