週刊少年ジャンプ2018年44号分の感想です。
 ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 


★もくじ
玉と家来達
花の都の教育方針
光月家と20年前の侍達
九つの影
その他



玉と家来達

 前回で玉のきびだんごを食べたスピードさんだが、もはや完全にの家来と成り果ててしまったらしい。

 ただ、自身が百獣海賊団“真打ち”であるという自覚やプライドは保ったままの様。
 なので、現時点では「カイドウを裏切って味方側についた」とか、そういう事ではないっぽい。多分、主である玉の身の安全が確保されていたり、玉からこれと言った指示が出されていないタイミングでは、百獣海賊団の一員としての振る舞いに戻る感じなんだろう。

 しかしそのカイドウ一派が、玉の能力を欲し身柄を奪おうとしていたのも事実。このままいけば、彼女が玉とカイドウの間で板挟みとなる事も確実だろう。
 そうなった時、彼女が玉とカイドウ、どちらに付き従うのかは見物かもしれない。

 
 しかし自分はてっきり、玉のきびだんごを「精神や感情にまで影響を与える洗脳能力」の様なものなのかと認識していたが、案外そこまで非道な存在ではないのかもしれない。

 第914話にて玉の回復に涙まで流していた狛ちよだが、彼は能力によって玉に従っているワケではなく、元からの玉の友達だった様だ。
 友好を結んだ経緯は分からないが、この2者間の関係にきびだんごの能力は関わっていなかったのね。
 ちょっと、安心した気がする。今後狛ちよを活躍させるにも、玉との関係が「能力によって植え付けられた紛い物」だったりしたら、どんなドラマも微妙になってしまうものな。


 玉への忠誠心のより高い狛ちよが、きびだんごの影響下にないと分かった以上、その効果の強さや持続時間なんかは気になるところ。
 スピードは今、玉を編笠村まで送り届けるという任を仰せつかったワケだが、「重要人物が敵の幹部と2人きりの状態になっている」というのも事実。
 ここできびだんごの効果が切れたりしたら、玉の身柄は大ピンチに……

 ……陥るワケだけれど、相手がスピードさんなので、あまりそこに危機感を覚える事はないのであった。
 イヤ、今更敵としてのスピードと戦う展開が訪れるとも思えないし。なんか、妙に愛着湧いちゃったし。アホすぎて。



花の都の教育方針

 食糧宝船によってごちそうにありつけたおこぼれ町の住人達は、涙を流してルフィに感謝を述べる。
 お腹をいっぱいに満たす事など久々であった事もあり、弱っていた老人や赤子もすっかり元気に。

 …危ないヤクでも入ってたんじゃないか、ってくらいの超速回復っぷりだけれども、気にしてはいけない。久しぶりのご馳走がもたらす精神的な影響は、身体がアドレナリンをブチ撒けるのにも十分な幸福度なのだ。たぶん。

 っていうか、よく考えたら鶴さんと全然コンタクト取らずにおこぼれ町を発っちゃったな。勤務中だったんじゃないのかい、菊さん。



 海賊にもかかわらず、町民達へのほどこしという「善行」を見せたルフィに、「ヘドが出る」などと言うトラ男さん。

 いやもうキミ、今更になって悪党オーラ出したって遅いですって。
 第815話じゃあなた、ゾウの住人を気遣う言葉を発して「ゆガラら本当に海賊かァー!?」なんて感動されてたじゃないっすか。
 アレ、地味に恥ずかしかったのか? だから今になって、普遍的な海賊イメージに戻そうと頑張ってるのか?


 あ、ちなみにバットマンが言っていた、「農園で起きた盗み」の犯人ですが、ローさんだったみたいです。
 確かに、シャンブルズを上手く使えば、侵入も盗みも容易だろうしなぁ。

 ……って、じゃあベポは食料や水を手に入れられる状態で川の水に手を出したって事になるのか?
 恐るべし、野生の本能。 

 しかしかと言って、お菊の意味深な反応的にも「酒天丸=ロー」という図式はあり得なさそう。
 第917話を見返すと、ホールデムはこの盗みについて

「最近の農園での盗みもお前ら 「頭山盗賊団」の仕業だろう!!」
ONE PIECE 第917話より引用 
 と決めつけているだけであり、単にホールデムの推測でしかなかった事が分かる。
 ローが行った農園での盗みには、そもそも頭山盗賊団や酒天丸は関与していなかったんだろう。



 ところは変わって「花の都」。
 寺子屋みたいな学習施設において、着物の女が少年少女達に国の歴史を教えている。

 「鎖国」とは「国の入り口を閉じ平和を守る事」「開国」とは「国に悪い人物や考えを持ち込む悪行」と、中々に偏った教育の仕方をしているっぽい。
 そしてその「開国」を行おうとした光月おでん、ならびに“赤ざや九人男”なる人物達についても、「愚か者」と。

 ……まあ、国の在り方に沿った歴史を教える事を否定はしないけど、けっこう露骨に描いて来たな……。
 与えられた思想に染まり切った子供達の姿も、中々に不気味。政権を奪ってからの20年間、こうやってオロチを絶対とした思想を育てて来たのね。

 この「間違った思想や歴史が子世代にまで受け継がれている」感じ、魚人島編とも重なるところがあるなぁ。
 やはり光月家の「国を滅ぼそうとした」行為と、ルフィの「魚人島を滅ぼす」という予言、似た様な行動を指すんじゃないかって気がする。


 まあオロチをよいしょしまくる教育は置いておいて、このろくろ首の様な先生は色々と謎。
 狒々や狛犬といった妖怪達が生物として生息するワノ国とはいえ、流石にこんなガチ妖怪が人に交じって生活しているとは思えない。
 悪魔の実の能力なんだろうが……なんの能力なんだろう。妖怪に変形する動物系の実があったとして、ヒトヒトの実に分類されるのかな……?

 能力者であるなら、ただのいち教師として登場するとも思えない。たぶん、洗脳教育を施すために派遣された、オロチの部下か何かなんだろう。
 戦闘能力もあるんだろうか。ろくろ首って何が出来るんだろうな……。人の血を吸ったりするタイプのろくろ首も、いるとは聞くけども。

 首が伸びるだけじゃルフィの下位互換だし、何らかの付加効果が欲しいところだ。いや、まだ深く掘り下げられるキャラだと決まったワケじゃないんだけど。



光月家と20年前の侍達

〇菊

 今まで散々素性不明とされてきた、かつ今回もゾロに「何か隠してる」とニヤリ顔で言われたさんだが、やはりというか錦えもんの関係者であった。

 関係者というか、どうも錦えもんにホレ込んでいる様で、腹痛に苦しむ錦えもんにガルチューまがいの勢いで飛びつくという暴挙に出とりました。殺す気か。
 
 菊もまた錦えもん達と共に戦う同志の様で、城の惨状を目にした時には涙を流している。
 それにしては錦えもんが国に戻っている事を知らなかったみたいだが……錦えもん、あまり菊に連絡を取りたがっていないんだろうか。なんか苦手意識ありそうな感じだし。

 しかしあのスケベ心の塊の様な錦えもんが、菊に飛びつかれてなおこの反応というのは妙な感じ。サンジはコマの隅でハートマークを浮かべているが、今までの描写も含めて「菊の男性説」はまた少し濃厚になった感じが……?

 いやまあ、どんな変態でもニガテな女の一人や二人、いたっておかしくないんだけど。サンジだって、実の姉であるレイジュにはメロリンしないワケだし。
 錦えもんは若い女は好きでも、それが「幼少期をよく知っている人物」だったりすると、いくら美人でもそういう目では見れなかったりするだろうしなぁ。

 正直、「伏線が露骨で逆にミスリードに見える」とか「男だったとして出オチにしかならなそう」とかの気持ちもあって、男性説には否定的なんだよな……。
 いや、フラットな気持ちで読んでみると、男でしたってオチの方が自然にも見えるんだけど。



〇20年前の侍

 前回のラストで衝撃的だった、あのモモの助達の墓。
 教育現場では「侍は全員死んだ」とされているし、オロチ御用達の両替屋、居眠り狂死郎曰く、20年前に光月家の侍は全員、おでん城の中で焼きころされたという。

 が、侍たちは死んでいなかった。
 錦えもん曰く、錦えもん、モモの助、カン十郎、雷ぞう、そしての5人は、20年前のワノ国から時を超えてやってきた人間だと言うのだ。


 うーむ、やっぱりそっちの方向で来るのね。
 この言い方だと、肉体の冷凍保存なんかとも違い、完全なるタイムスリップを果たし20年後へとやって来た感じだろうか。

 突飛な印象は否めないが、これでモモの助にまつわる不自然な発言にも説明がつく。
 ロジャーと会った事があるのも、イヌとネコの仲良かった頃を知るのも、単にモモの助が28年前に生まれた人間だったからなのだ。

 それなら、錦えもんらが散々強調していた「8歳児である」事とも矛盾はしない。
 ネコマムシの言っていた「まだ数か月」というのは、「モモの助の体感における経過時間」が、おでんの死から数か月分しか経っていなかった、という事なんだろう。 

 後はタイムスリップの方法だが……やっぱり、悪魔の実なのかなぁ?
 今までにも「肉体の成長や年齢に作用する能力」なら登場していた(シュガーのホビホビの実、劇場版よりアインのモドモドの実など)し、チユチユの実の復元能力などは「物体の時を戻す」能力とも言えるけれど、人間をそのまま未来に送れる能力など、存在するんだろうか。

 まあ、ミラミラの実やブクブクの実など、「世界そのものを作り出す」能力は登場してるし、時を飛ばす能力くらいあってもおかしくはないかもしれない。

 ベガパンクの様な科学者との関係、あるいは「光月」の名が指す通り宇宙に浮かぶ月との関係……など色々な可能性はありそうだが、根拠に乏しすぎるので大人しく次週を待つとしよう。



 しかし、20年間か……。
 どうもイヌアラシやネコマムシの仲違いにはおでんが関わっているみたいだけれど、彼らはおでんの死後20年間、モモの助達が姿を現すのをじっと待ち続けていたという事になる。
 ペドロは5年前、WCIにて「世界の夜明けの日は近い」と言っていたが、これも感覚的な話ではなく、20年というある程度の期日が分かっていたからこその言葉だったのね。



九つの影

 その20年前、錦えもんやモモの助達は命を持って20年後へと時を渡ったが、光月おでんとその奥方が死んでしまった事に違いはないみたい。

 しかしおでんの妻は、おでん城前にて命果てる際、ひとつの言葉を遺したという。

 “月は夜明けを知らぬ君 叶わばその一念は”
 “二十年はたとせを編む月夜に九つの影を落とし まばゆき夜明けを知る君と成る”
ONE PIECE 第919話より引用 

 このわらべ歌の一節の様な言葉、オロチは「呪い」と受け取った様だが、どちらかと言えば「予言」に近い印象を受ける。
 錦えもん達が飛んだ未来が「20年後」だったのも、この予言に従ったものだったんだろう。

 九つの影、というのは、花の都において教えられていた「赤ざや九人男」という人物達と数が合う。オロチの解釈は置いておいて、これは素直に読めば20年後、9人の侍達が「月」を「夜明け」へと導く、といった意味になるのかな。月や夜明けって言葉に関しちゃ、だいぶ抽象的だけど。


 が、それにしては侍の数が足りない
 赤ざや九人男というのは、おでん城にて死んだと思われた錦えもん達の事を指すんだろうが、20年後へと飛んだ侍は錦えもん、カン十郎、雷ぞう、菊の4人。侍ではないモモの助は、とりあえず数に含まないでおく。
 
 第818話によれば、おでんは錦えもんら家臣「全員の」命を守り、最期を遂げたという。
 まあこれに関しては「あの場にいた錦えもん、カン十郎、雷ぞう(およびイヌアラシ、ネコマムシ)」の事のみを指して「全員」と言っただけなのかもしれないが、仮におでんが9人全ての命を守ったのであれば、残る5人はどこへ行ってしまったのか、謎だ。
 仮に死んでしまったのであれば、予言通り「九つの影」を落とす事は不可能となってしまう。


 しかし9人と言えば、侍の数以外にも合致するものがある。
 麦わらの一味の現メンバーの数だ。

 錦えもん達は確かに猛者だが、彼らと同等の侍が9人揃ったところで、カイドウやオロチを討てる程の戦力になるとは思えない。

 それならペドロが考えた通り、やはりルフィ達9人が、世界だけでなくワノ国を夜明けへと導く者であると考えた方が面白そうな気がする。
 「予言の年にたまたまルフィ達が錦えもんに遭遇した」のではなく、「20年後」という予言の期日そのものが、ルフィ達9人がワノ国を訪れる時を示していたのだ。


 ただ、これはこれで問題がある。
 ワノ国におけるジンベエの一味加入が、絶望的になる事だ。
 ジンベエが加入すれば一味は10人となり、予言の人数を超過してしまう。つまりこの説を取った場合、ジンベエは麦わらの一味には加入しないという事が決定づけられてしまう。それは寂しい。

 しかしこの予言をよく読めば、「九つの影」と「夜明けを知る君」は、どうも別の人物である様に取れる。 
 九つの影が落ちる事により、他の一人の人物が「夜明けを知る君」へと成長するという予言なら、ジンベエを含む仲間達9人の存在を受け、ルフィが夜明けを導く者としての覚醒を果たす事を示すものである可能性が生じる。
 個人的には、これを推したい。




 ……本音を言うなら、「月は夜明けを知らぬ君」という文面からは、この「夜明けを知る君」と成る人物は「月」、つまり光月の姓を持つモモの助である可能性が高いと思う。

 が、モモの助と9人の侍だけで予言が完結してしまうと、あまりにもルフィ達が物語に介入する隙がない。それに、その内5人の侍が生存すら確認されていない以上、そちらの方向でシナリオを夢想するにも今は難しい。

 なので現時点では、「九つの影=麦わらの一味」であるという方向性で続きを待ってみようと思う。



その他

〇ゾロ

 冒頭いきなり、ルフィに二代鬼徹を見せて欲しくてウズウズしてるゾロ。
 しかし延々スルーされ続けてるのがちょっと可哀想だ。ひと悶着にも区切りがついたんだし見せてやりゃ良いのに、ルフィさんは聞いちゃいねぇ。

 菊の隠し事に気づいてた様子のゾロだが、これはやっぱり予め錦えもんから聞かされていたのかな?
 まあ何か楽しそーにしてるんで、トラブルの火種になる様な事じゃあないんだろう。

 ゾロが姿を消した後、菊が一時的にその場を離れているが……。
 ……秘密に気づいちゃったゾロさん、舞台裏でシメられたりしてないよね? 


 ルフィにはいつもの迷子と放っておかれているが、本当にどこへ行ってしまったんだろう。おかげでナミ達との合流も、少しお預け。
 仮にもゾロを懸賞金で上回ったサンジが、どう出るかも気になるんだが。ヴィンスモークの力で上がった様なもんだし、あんま触れようとしないかな。


〇おロビ

 将軍の座敷から声掛けをもらう事を目標に芸者の仕事にいそしんでいたロビンだが、まだ流石にその域には達してないっぽい。
 狂死郎はオロチとも繋がりがあるっぽいんで、そのコネを使えば何とかなりそうでもあるんだけど、狂死郎は全然ロビンに興味を示してないので、やっぱり難しいかもしれない。


〇腹を下した錦えもん

 「べん!」からの「便!」
 ……あまりにもくだらなすぎて、笑ってしまったのが悔しい。
 腹壊して大変だったせいで、電伝虫に出られなかったのね。

 腹を壊しているという事はベポ同様に川の水を飲んでしまったんだろうが、ワノ国の川の汚染事情を知らなかったんだろうか。
 まあ20年前の時点では、ワノ国内にカイドウの工場は作られてなかっただろうしなぁ。その辺も含め、錦えもんが現在のワノ国事情をどの辺りまで把握しているのかが気になる。

 同じタイムスリップ組でも、菊だけを国に置いていった理由もまだ分からないが……これに関しては、錦えもんの思考的に「女が戦場に出る事」自体をよく思ってなかっただけの可能性もあるか。


〇WCI組との合流

 ルフィと離れ離れになってしまったナミやサンジ、チョッパー、ブルック、キャロットの5名だが、無事にワノ国へ入国していた様だ。
 ルフィの入国時に海で失くしてしまったビブルカードも、サンジが回収してくれたらしい。 

 サンジと言えば“空中歩行スカイウォーク”による空中戦のイメージが強くなっているが、同時に“海歩行ブルーウォーク”による海中の移動術も会得しているからね。 
 まあそっちの面ではジンベエに敵うべくもないが、海底まで素潜り出来るのは素直に凄い。


〇モモの助

 おでん城跡地へと到着してから、剣術の練習をしていたらしい。
 幼さ、弱さゆえに父母の仇を討てず、歯がゆく思っていたモモだからね。ルフィに一人前として扱われて以降、自分も少しでも早く強くなろうと頑張っているんだろう。
 真っ先にルフィに報告している辺り、やっぱ「子供」として扱わなかった事が嬉しかったんだと思う。

 ラストから2ページ目、城内にて錦えもんが話を始めるコマでは、何やらご立腹の様子だった。
 最初、これはルフィの「汚ねー部屋」という言葉に腹を立てているのかと思ったんだが、よく見るとその横ではブルックもお怒り顔……?

 これは2人して、菊に色目を使うサンジに対して怒ってるのか? 
 ブルックはともかくモモの助が菊の正体を知らない事はないと思うし、その場合菊は男性ではないという事になる。
 菊が男なら、別にモモがお怒りになる理由がないし。

 ううーん……どっちだ? 男なのか女なのか。私の考えすぎか??