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アニメ版 ONE PIECE
第860話
「タイトル名」 



【原作の対応話数】
88巻 第886話~第887話


もくじ
あらすじ
原作からの変更点
感想
登場した技
声の出演


【あらすじ】
 
反逆者として捕らえたシフォンを人質に、電伝虫を通してベッジに降伏を迫るオーブン。捕まれば全員命はない窮地に、シフォンは自分を置いて逃げるようベッジに叫ぶ。母・リンリンに憎まれた彼女にとって、ベッジ達ファイアタンク海賊団の皆こそが、真に心を許せる家族だったのだ。自身の犠牲を厭わぬシフォンの言葉に、涙を流すヴィト達。そして口止めのため、シフォンに暴行を加えるオーブンの様子を察し、ベッジは彼の指示通り降伏をする事を伝える。

 だが次の瞬間、放たれた一発の銃弾により、オーブンの身体が吹き飛んだ。夫として、頭目として、父として。ベッジが選んだ生き様は、オーブン達ビッグ・マム海賊団の包囲に挑み、シフォンを奪い返す事だった。ベッジの決断に沸き立ち、歓喜の様子を見せるファイアタンク海賊団。そんな彼らの姿に、シフォンは涙を浮かべ、微笑むのだった。

 カカオ島港へと接近したベッジのノストラ・カステロ号。だがベッジは、船の速度を緩めようとはしなかった。シフォンを連れ、ビッグ・マム海賊団の包囲を突破するためのベッジの策。それは、ノストラ・カステロ号の秘密にあった。
 岸へと乗り上げたノストラ・カステロ号は、なおも止まることなく進み続けた。海を渡るためのパドルは陸を進むためのキャタピラとなり、カカオ島を突き進む。そしてその姿を確認したサンジは、シフォンたちを乗せた荷台を上空へと蹴り上げる事で、ケーキを船へ受け渡すのだった。

 一方、暴れるビッグ・マムの攻撃から鏡を通じて逃れたルフィは、鏡世界を渡り歩き覇気を回復するための時間を稼いでいた。
 見聞色の覇気により、少し先の未来が見えるというカタクリ。その境地へと自身も達し、全力のカタクリと戦う事を、ルフィは望む。
 10億の男、カタクリ。ルフィは、その人物を越えるという意志を固めるのだった。


【原作からの追加点・変更点】
※セリフの変更点は細かい差異が多いため、気になった箇所のみ紹介


・前話にて、ブリュレを背負ったままのルフィに対し“威国”を放ったビッグ・マムだが、ルフィは間一髪のところで鏡を発見、鏡世界へと逃げ込む事で攻撃を回避した。

・鏡世界への突入後、ブリュレが大声で助けを呼んだため、カタクリがルフィ達の再来に気づくシーン追加。
 モチと化した腕を伸ばし、ルフィを追ったが、ルフィは再びブリュレを連れ鏡世界から脱出。結果、カタクリは再度ルフィを取り逃がす事となった。

・カカオ島前の海上にて、ノストラ・カステロ号を取り囲んだ敵船からの砲撃に怯む部下に対し、ベッジが「弱音を吐いてる場合じゃねェ」と喝を入れるセリフ追加。

・オーブンがベッジに降伏を迫る際、港に武装した兵が配備されている事を明かし、脅しをかけるセリフ追加。

・シフォンがケーキを運ぶ際にオーブンに捕まった事を察したベッジのセリフが、原作では銃撃を仕掛けた後だったが、アニメではオーブンからの降伏勧告時となっている。

・シフォンが自分を置いて逃げる様ベッジに伝えるシーンにて、シフォンがベッジやファイアタンク海賊団の面々と過ごしてきた日常の回想が数カット追加。
 またこの際、シフォンの言葉にヴィトやゴッティだけでなく、その他の部下達も涙を流している描写が追加。

・ベッジがオーブンの指示に従いカカオ島に上陸する事を伝えるシーンにて、シフォンが電伝虫を通じてペッツの鳴き声や一味が自分を呼ぶ声を聞き、涙するシーンが追加。

・港へと上陸する前、ベッジが泣きじゃくるペッツを静かに抱き寄せ、ペッツが鳴き声を止める描写が追加。

・ベッジがオーブンに向けて放った銃弾の軌道が描写。
 砲弾の様な爆発を起こしてこそいるが、大砲ではなくベッジが握った拳銃から放たれた弾丸である事が明確になった。

・ベッジのオーブンに対する宣戦布告に沸き立つヴィト達の「やってやったぜ ファーザー!」というセリフが追加。

・オーブンへの攻撃を仕掛けたベッジに対し、船を包囲するビッグ・マム海賊団の部下達が一斉にベッジへ銃を向けるシーンが追加。

・銃撃を受けたのちに起き上がったオーブンが、能力により身体から高熱を発し怒りを露わにする描写に変更。

・敵船の姿を確認したチョッパーの報告に対する、ブルックの「いよいよ来ましたね…」というセリフが、ナミの「いよいよね」というセリフに置き換えられた。
 またジンベエが敵船に対し迎え撃つ事を提言した際、ナミが「迎撃の準備を!」と指示するセリフが追加。

・チョッパーが双眼鏡で敵船の見張りをしていた場所が、フォアマストの上からサニー号の2階部分に変更。
 またチョッパーがフォアマストの上で空を見上げるキャロットを探し出し、戦闘が始まる事を伝えるシーンが追加。(その後、原作通りキャロットが「今夜は「満月」かなあ」と呟くシーンへ移行。)

・ノストラ・カステロ号のパドルがキャタピラとなった際の、オーブンの「聞いた事ねェぞ!!? そんなギミック!!」というセリフが、モブのビッグ・マム海賊団員のものに変更。

・レイリーとの修行時代の回想に、猛獣相手に目隠しをして見聞色の特訓をしていた際のものが追加。

・ルフィがカタクリを越える決意を固めるシーンの箇所が変更。
 原作では海上のサニー号のシーンの直後だったが、アニメではサンジがケーキを積んだ荷台をノストラ・カステロ号へと蹴り上げるシーンの後となった。 




【感想】
>ルフィの安否

 前回、ビッグ・マムの“威国”に狙われたルフィ。
 が、なんとか鏡世界へ逃げ込めていた様で、特に問題なく無事でした。
 まあアレ、当たったら多分即死級の技だからね。代わりに今頃ナッツ島は大変な事になってるだろうけど、我々に出来る事は大臣であるアマンドさんが追われるであろう今後の激務を想像し、同情を捧げるくらいしかないのであった。合唱。

 覇気が回復するまでの時間は10分間だが、今回もまだルフィの覇気が戻る事はなく、再戦はお預け。長い10分間だ。
 メリエンダ前の一時決着の時なんて、カタクリが“加々身モチ”を放つだけで10分経過していたというのに。「我慢の限界だった」という割に、えらくのんびりとしていたものだ。

 そのカタクリ、今回もちょろっとだけ登場したが、鏡世界へ逃げ込んで来たルフィをとっ捕まえようとして失敗する程度で、本格的な出番はナシ。というか、一言も喋っていない。故に声の出演欄だけを見ると、未登場かの様な錯覚を受ける。
 ブリュレに助けを求められた時、反応くらいしても良かったと思うけれど、まあコレは声優のギャラとかの都合もあるんだろうね。



>ベッジ

 今回のエピソードにおいては、紛れもなく主人公と呼ぶべき人物。
 息子ペッツをあやしてやる表情と敵に向けたそれでは、もはや同一人物とは思えない違いがあって面白い。良いパパだ。
 まさか彼の初登場時には、ベッジが二重の意味での「良きファーザー」となって再登場するとは、欠片も思うとらんかった。だって、部下の事フォークで刺したりしてたし……。

 「世界一カッコいい赤ちゃん言葉」の呼び声も高いシフォン救出のシーンは、原作既読組にとってはもはや語り草。WCI編において、なんだかんだと数々の名場面を与えられたベッジだが、中でも最も輝いたのがこの瞬間かもしれない。
 アニメ版においてもそれは変わらず。セリフに渋い声がついた事で、赤ちゃん言葉のセリフとその中にある確固たる意志のギャップ感が増した様に思う。

 取り入った組織を内部から破壊する、という彼のやり方は非道なモノだし、まあ基本的な人物像としては悪党寄りなんでしょうね。
 しかしそれでも、一度自分に命を預けた者のためには身を挺して戦える、“頭目”として、また一家の主柱としての誇りを失わない辺りが、彼の大きな魅力なのです。



>ベッジの銃弾(?)

 そんなベッジの人物像は良いのだが、それにしてもあの銃撃の威力は凄まじすぎる。
 原作初見の時は「ノストラ・カステロ号から放たれた砲弾かな?」と思ったんだが、ページをめくればベッジの手にした拳銃からは硝煙が。アニメにおいては発砲の瞬間までが描かれ、明確にベッジの手元から、オーブンの顔よりも数段小さな弾丸が放たれ、着弾と共に謎の爆発を起こしている。

 アレは……なんなんだろう。ベッジお手製の拳銃型爆撃装置なのか? それとも2年間で進歩した、新世界の最新技術なんだろうか。

 そういや、シロシロの能力によって格納され、小型化した人やモノは、ベッジの身体から10cmくらい飛び出すまでは小さくなったままでいられるっぽい描写が多数ある。
 今回謎の爆発を起こした銃弾も、コレを利用したものだったりするんだろうか。一度小型化した砲弾を特殊な拳銃に詰め、発射と同時に元の砲弾に戻るというカラクリによって生まれた技なのかもしれない。
 オーブンに着弾するまで、銃弾サイズのままだった様にも見えるが……アレは、遠近法って事でひとつ。



>ファイアタンク海賊団

 本来、「シフォンを救いにいく」というのは、ベッジ達カポネ家だけの問題。普通なら「家族の問題に命懸けで付き合わされる部下達、可哀想だなぁ」と思ってしまうところかもしれない。

 が、今回のエピソードを見れば分かる様に、ヴィトやゴッティを始めとしたファイアタンク海賊団の部下達は、「ビッグ・マム海賊団と戦いシフォンを救う」というベッジの決断に大喜びし、命を賭すことに何の躊躇いも感じていない。

 彼らも、ただ「部下だから頭目の指示に従う」という物語上のコマとしてでなく、1人1人の血の通った人間として、それだけベッジを、そしてシフォンを慕っているのだ。
 名もないモブが大半を占めるさり気ないシーンではあるが、彼らが紛れもなくこの世界に「生きている」事を実感させてくれる名場面だと思います。



>オーブン

 上記の様に、一般的なものとは少し異なる形での「家族愛」を存分に魅せてくれるベッジらに比べ、オーブンの対応はといえば中々に非情なモノ。

 ……というか、原作での「法や秩序のため、情を捨てて家族を手にかける」というオーブンの描かれ方に比べ、アニメでは言い回しの違いか、ただ単純に「家族を何とも思ってないヤツ」に見えてしまった気がする。

 なんやろ、コレ。ずっとニヤニヤ半笑いなせいかな。追加セリフ的に、シフォンを始末するのを普通に楽しんでそうなせいかな。
 家族を手にかけるって行動自体は同じなんだから、と思うかもしれないけど、結構大事なトコなのよ。別にオーブンさんだって、シフォンを殺したくて殺そうとしてるワケじゃなかろうし。
 今回みたいな、全力で悪役オーラを出したオーブンさんは、個人的にはちょっと違うかなぁという印象でした。

 あと全然関係ないんだけど、ちょっとシリアスな雰囲気のシーンでオーブンさんの船を映すの、ヤメて。
 笑うから。自分の顔を模した船首が映ると笑うから。
 オーブンさん、結構自分のご尊顔、気に入ってらっしゃるんかな。でもキミ、アキネイターにはブサイク扱いされてたで。
(参考:アキネイターVSビッグ・マム一家



>荷台を蹴り上げるサンジ

 普通に考えて、「ふわふわしすぎて空を飛びそう」なほどのシフォンケーキを蹴り上げたら衝撃でどっかに飛んでってしまいそうな気もするが、まあサンジの事だし、形が崩れない程度の力加減に抑えているんだろう。
 同様に、荷台に乗るプリン達の安全も、特に問題はなさそう。

 でもアシカ! アシカは無理だろ!!
 宙に浮かべる事は出来ても、アシカの着地までは保証できないだろ!

 原作じゃ途中でロープが千切れて解放されてるっぽいんだけど、大丈夫だったんかなー、あのアシカ。着地の衝撃で、「ぐしゃっ」といっちゃってなきゃいいが。


 そしてサンジの活躍に、いつも通り血を噴いて倒れるプリン。
 それは良いけど、荷台の下にいるサンジの姿、上からじゃ見えてないよね。声だけで何となく察して、姿を想像して血ィ噴いてるのよね。
 なんという妄想力。もはや見聞色を越えたかもしれん。



>「あいつを越えたい!!」

 まあぶっちゃけ、カタクリ戦に関しては現時点で強制終了という事も可能なのよね。
 カタクリお兄ちゃん、余裕ぶってるけど、ブリュレを奪われた時点で鏡世界からの脱出は不可能だから。
 この現状、ルフィが追い込まれている様で、実際にはカタクリはもう能動的な手出しは不能な状況。ある意味じゃ、「鏡世界に閉じ込める」という形で決着した、と言っても問題ない状態ではあるのだ。

 つまりここから始まるルフィとカタクリの戦いは、ONE PIECEではかなり珍しい「物語の展開上、必須ではない戦い」となる。ルフィが「越えたい」という意志のもとに戦いを求む姿は、中々に新鮮なものがあった。
 クロコダイル戦の時も似たセリフを言ってはいたが、あくまで主目的は「アラバスタ奪還」だったからね。

 しかし「物語上必須ではない」というのは、あくまでも「WCI編」という短期的な目で見た時のお話。ルフィが目指す海賊王の椅子を奪うには、四皇も、海軍大将も元帥も、全てに打ち勝つくらいの気概は必要。
 そのためにも、「四皇の部下」に過ぎないカタクリに負けっぱなしでは、この先の戦闘は心許ない。ワノ国での打倒カイドウなど、夢のまた夢である。

 「倒すため」ではなく「越えるため」。その戦いは、今後のルフィの成長にとって、大きな糧となるんだろう。


【登場した技】 
・威国
使用者:ビッグ・マム
※アニメオリジナルシーン

 前話にて使用された際と同じシーン。
 ブリュレを背負ったままのルフィを目掛けて放たれたが、間一髪のところでルフィが鏡世界へと逃げ込んだ為、直撃には至らなかった。


【声の出演】
ルフィ・・・・・・田中真弓
ナミ・・・・・・・岡村明美
サンジ・・・・・・平田広明
チョッパー・・・・大谷育江

ジンベエ・・・・・宝亀克寿
レイリー・・・・・園部啓一
ベッジ・・・・・・龍田直樹
プリン・・・・・・桑島法子
キャロット・・・・伊藤かな恵
ブリュレ・・・・・三田ゆう子
シフォン・・・・・久川綾
オーブン・・・・・木村雅史
モンドール・・・・伊丸岡篤
ヴィト・・・・・・岸尾だいすけ
ペッツ・・・・・・鈴木真仁

クルー・・・・・・新井良平
兵士・・・・・・・荒井聡太
WCI31・・・・・・川原慶久 岡本寛志
         千葉俊哉
部下・・・・・・・戸松拳也 坂井易直
         宮園拓夢
ナレーション・・・大場真人