週刊少年ジャンプ2019年4・5号分の感想です。
 ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 


★もくじ
“花魁”小紫
小紫の人物像
光月日和の生存  



“花魁”小紫

 前回の時点では、シルエットのみの登場となっていた花魁、小紫が本格登場。
 シルエットでは周囲の人間達よりもひと回り背丈が高く、コレはONE PIECE特有の「妙にでっかい美女枠」の1人となるのかな、などと思っていたのだけれど、どうやらそういうワケではなかったらしい。

 彼女の身長を、あそこまで大きく見せていた要因とは……




 ゲタ。




takaigeta

 それもものっそい高いやつ。物理的に。こんなの。


 「靴の下に海苔巻きでもハサんでるの?」ってぐらいの上げ底ゲタ。
 マキノさんもビックリのシークレットブーツっぷり。ていうか、シークレットじゃない。隠れてない。90年代の女子高生でもこんなの履かない。


 これを普段から履いているのであれば、ちょっと花魁のファッションセンスを疑わせて貰わなければいけない事になるのだけれど、これはまあ多分花魁道中におけるしきたりの様なものなのかな。

 アレだけの民衆が集まって来る中だと、どうしても肝心の花魁の顔を拝むことが難しくなりそうだし。高いゲタを履き身長をカサ増しする事で、後方の人達にも見やすい様にしているのかもしれない。にしても、若干の不格好感は否めないけれど。

 流石にこんなゲタを履いていては歩行も難しいらしく、横にいる護衛の大男の肩に手を置いて歩いている。男の肩部分に布を挟み、直接手で触れる事のない様にしてるっぽいのも何となく「らしい」感じがする。


 容姿の方は、花魁らしくやや化粧の厚い感じ。同じ「絶世の美女」として生み出されたハンコックに比べても、まつ毛が長かったり口紅が濃く塗られていたりで、違うタイプの顔立ちっぽい。眉毛の角度はハンコックとしらほしの中間ぐらいだけれど、コレは化粧で上から描いた眉かな。

 まあ正直なところ、私は絵で描かれた人間キャラの「美女か否か」を判断できる感性をあまり持っていないので、他キャラに比べて特別容姿が優れているのかはよく分からない。ハンコックって美女なの?
 なのでその辺は、個々人の感性におまかせ。


 しかしハンコック、しらほしに続き、こう民衆からの高い評価を得ている美女キャラが次々に出てくると、アルビダ姉さんの立場がどんどんなくなっていくなぁ。
 悪魔の実に手を出してまで得た美貌なのに。本人、あんま変化に気づいてないけど。



小紫の人物像

■花魁の本性

 小紫はおそらく、海賊女帝ボア・ハンコック、海底の人魚姫しらほしと合わせ、ONE PIECE界における世界三大美女の様なポジションと認識していいんだろう。出身がワノ国であるため、他2人に比べ世界的な知名度はほとんどないのだろうけど。

 ハンコックは、想い人であるルフィ以外に対しては傲慢で身勝手な人物であり、妹であるソニアをして「姉様の性格は最悪よ」と言われる程の人物であった。対するしらほしは泣き虫でこそあるが、死に際の母との約束を守り、10年間たった1人で耐え凌ぐ強さを持っていた。

 ならば、彼女らに次いで新たに登場した小紫はどの様な人物であったのかと言うと……。


小紫「わちきには男など金を運ぶ犬……!!」
  「無くなれば価値はなし」
  「貧乏人は 嫌いでありんす♡」
ONE PIECE 第928話より引用

 男を騙して金を巻き上げる、絵に描いた様な悪女だった。


 世界屈指の美女3名のうち、2名が壮大な人格破綻者。流石である。これだからONE PIECEはやめられないぜ(錯乱)


 まあやってる事は最悪なのだけれど、コレ、騙されてる老人びん豪さん達もねぇ……。
 第三者の目からシンプルに見たら、女に貢ぐために家族を身売りに出すとかいう、とんでもない畜生だからねぇ……。あんまり同情する気にならないと言うか、逆にそこまで、小紫に対する嫌悪感は強くならないのよね。ある意味、バランスが取れている。

 人格には大いに難のあるハンコックが大人気キャラになった様に、おそらく小紫にも好感を持たせるような何らかの仕掛けを用意しているんだろう。



■びん豪達のその後

 全てを失ったびん豪達は「金を生まなくなった」という事で都から追放されるハメに。金を回し、都を発展させる事に貢献できる人物しか、都に住む権利はないという事なのだろうけれど……。コレ、例えば病気やケガなんかで働ける状態になくなった人達とかも、追放の対象になってしまうんだろうか。

 だとしたら、普段の生活も中々に生きた心地しないよな……。隔離された安全地帯とはいえ、大量の公害が発生している様な国なのだから、何らかの拍子に病を得てしまう様な可能性なんていくらでもあるだろうし。
 金を生む能力を失えばその瞬間、人としての暮らしを剥奪される……なんて、生きにくいにも程がありそうだ。よく笑って生活できてるな、都の人ら。あまりそういうネガティブな発想がないんだろうか。


■おトコ

 しかし禿のおトコ、目の前で人が叩き斬られて、なおかつ小紫のアレな人格を目の当たりにしてるにも関わらず、相変わらず楽しそーに笑ってますね……。
 よく理解していないのか、小紫の本性など承知の上なのか。

 ……やっぱ、「笑」以外の感情がマヒってる様にしか見えないなぁ。コレで腹の底では実は怖がってました、とかだったら、軽くホラーだよ。
 

■狂死郎

 びん豪の回想シーンでは、居眠り狂死郎が小紫と一緒にいるのが確認できる。
 オロチ将軍ですら、「今日こそ落としてみせる」と現状ではイマイチ小紫に相手にされてない感じだったのに、狂死郎は意外と関係性が深いんですかね。単に客として訪れてただけかもしれないけど。
 百獣海賊団の大看板に直接連絡を取れるっぽい立ち位置だったり、以外と重役なんだろうか。



光月日和の生存

■日和=小紫?

 の傷もある程度は癒えた様で、剣の特訓を行うモモの助と会話を行うシーンが描かれる。

 内容は20年前、モモの助がトキの能力で時間を渡る際に別れた、妹・日和のお話。
 こうやって話題にのぼった以上、日和の生存は確定的であると見て良さそうね。「名前は出したけど結局普通に死んでました」とかだったら、意味わかんないですし。

 小紫の登場やその人物像を描いた最後のページで、「日和の生存」に触れる……という演出的にも、小紫とは成長した日和の姿であるのでは?と思わせる見せ方。
 割と露骨ながら、少なくとも作者的には、読み手にそう考えてほしいと思っていそうな構成になっている。
 ……日和、おでん城崩壊の時点で6歳だったんだなぁ。モモと2歳しか変わらないのね。てっきり3歳くらいかと思ってた。


 「生きていれば26歳」という年齢的にも、小紫ならちょうど合致するかな。
 命を追われた大名の娘が秘密裏に生存し、身ひとつで花魁の座にまで上り詰めた……と考えると、物凄いドラマだ。

 遊女となったのは、オロチに近づくためかな。途方もなく時間のかかるやり方だが、「20年後に兄達が姿を現す」と分かっていたのなら、その20年後の戦いを支えるため、花魁としてオロチを討つ術を探っていた、とも考えられるし。


 また仮に小紫がそんな境遇を生きて来たのであれば、あの金への執着心にも納得がいく。
 第920話の回想を見るに、おでん城崩壊の時には錦えもん、カン十郎、雷ぞうの他にもう1人、時を渡らなかった侍の存在が確認できる。
 赤鞘九人男の死は1人たりとも確認されていないそうなので、同じく九人男の1人と思われる彼も存命しているハズ。たぶん、日和を無事に逃がす任務を請け負ったんだろう。

 侍は元より日和だって顔は割れているだろうし、しばらくは逃亡生活を余儀なくされた事だと思う。子供である日和は成長と共に見た目も変わって来るので、何年か経った頃に侍の元を離れ、禿として芸者になる道を歩む事になったのかな。

 侍との逃亡生活にせよ、子供1人だけで生きていくにせよ、金がなければどうにもならないのが現実。
 彼女が26歳になった今、光月家に対しどんな思いを持っているのか分からない(ハッキリ言って恨みを持っていても仕方がないと思う)が、もし日和と小紫が同一人物なのであれば、「金を得る為に何でもやる」という性格は、この辺りの境遇から生まれて来たものなのかもしれない。



■お玉と光月家

 モモの助は光月家の跡取りだが、どうやら玉はモモの助の名を聞いてもピンと来ていないらしい。

 まあ、8歳児である玉が20年前に消息を絶った人物の名を知らないのは、普通なら不自然な事ではない。が、玉の場合ちょっと事情が違って、彼女は以前、どうも光月家の復活を待ち望んでいるっぽいセリフを発している。

お玉「光月家が帰ってきたら覚えてろ!!!」
ONE PIECE90巻 第911話より

 916話では更にホールデムから「亡霊を追うんじゃねェ」とも言われており、玉が普段から光月家の帰りを待っているからこその発言なんだと思う。
 
 まあ例えそうであっても、玉が待っているのは「光月家」であり、生まれる前の人物であった跡取りの名など覚えていなかった……としても特に問題はないんだが、この会話にてモモの助は「せっしゃを誰とこころえる!」と、自分の立場をアピールしようとしている。

 立場上、光月の名を出さない様に自分の偉さを伝えようとしていた……という可能性もあるが、それなら最初から身分を隠して玉と接する様にするハズ。
 あえて自分の身分を主張したかったのであれば、モモの助は「せっしゃは九里が大名、光月家の跡取りだぞ!」と、自分の肩書を玉に伝えているんじゃないかと思う。
 で、何度伝えてもまったく動じない玉に対し、「もうよい」と諦めているんじゃないかと。


 もしモモが自分の立場を伝えているのだとしたら、その事実にまったくもって興味を示さない玉の態度は不自然。モモの助の生存は、他でもない光月家復活の兆しだと言うのに。

 更に日和の件。
 「妹がいるんでやんすか?」と、玉本人から振った話題だと言うのに、その妹が生きていると知った玉の反応は「ふーん 会えるといいでやんすね」と、露骨に興味がなさそうな返し。
 ふーん、て。キミ、そんな子だったっけ?

 これ、玉が意図的にすっとぼけてる様に見えてしまうんだよなぁ。
 目の前の少年が光月モモの助である事も、光月日和が生きている事も分かった上で、それを悟られない様に振る舞っているというか。

 あえて「日和=小紫」と思わせる様な構成にしたのも、モモに「生きていれば26のとし」と言わせたのも、読み手を誘導するミスリードなんじゃないかとも思える。


 ……しかし正直、小紫が日和とぜんぜん関係ないキャラだったら、「何のために出て来たんだろうこの人」ってなっちゃうのよね。初見の性悪感を払拭する様な見せ場や背景も、なかなか用意しにくくなりそうだし。

 更に今回、モモ達が時を渡る前の光月日和の年齢が「6歳」であった事が判明し、「お玉=日和」という考え方にはかなりの無理が出て来た。
 飛徹曰く「4年近く前」、玉が5歳の時点で、玉は編笠村にてエースと出会っているからだ。

 仮に日和がトキトキの能力で時間を渡っていたとしても、日和本人の年齢までが変化する事はない。20年前の時点で6歳であった日和の、5歳時点での姿に出会う事は、エース達の方がタイムスリップでもしていない限り不可能なのである。


 ……正味SF系の設定って、基本的には「現実にはあり得ない事」であるため、作品によって独自の設定が色々と存在している「言ったモン勝ち」な世界ではあるんだけどね。細かい設定がハッキリわからない時点では、「ありえない」と断言できるものでもないと言うか。

 ワンピースにおいて、この手のタイムパラドックス的な要素を扱ったエピソードとしては、アニメオリジナルのエイプスコンサート編が存在していた。
 アレは時間の流れが外部とは異なる「虹の霧」の中で、外部換算で50年間彷徨い続けたラパヌイの少年時代の姿と、霧から脱出し正常に50年の歳を過ごした姿、時間軸の異なる同一人物2人が同一時代に存在しているという現象が起きたりもしていたなぁ。
 トキトキの能力においても何らかの原因で、時を渡った日和と渡らなかった日和、別時代の2人が同時に爆誕し……いや、流石に暴論すぎるかな。


 「8歳の誕生日を迎えたばかり」のお玉の「4年近く前」が「5歳」って、未だに意味わかんないんですよね。お玉が5歳だったのはちょうど3年前までなんで、流石に「4年近く前」という表現は不自然というか。ここはコミックスでも変更なかったし。

 何よりもお玉、光月家と縁も所縁もない人物だとすると、劇中での立ち位置がかなりフワッとしてくるんだよね。
 敵でもなければ王族の類でもなく、重要な能力者であるためコーザやコニスの様な「民間人代表」の立ち位置にも収まれず……と、能力はともかく「玉個人」としてのポジションがいまいち掴めないというか。

 やっぱ日和本人ではないにせよ、光月家および小紫と関係のある子なのかな。
 頭、紫色だし。