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アニメ版 ONE PIECE
第870話
「神速の拳 新たなるギア4発動!」


【原作の対応話数】

もくじ
あらすじ
原作からの変更点
感想
登場した技
声の出演


【あらすじ】
 遂に発動されたルフィの新たなるギア4、“スネイクマン”。“バウンドマン”を凌駕する神速の拳を持つ姿へと変身したが、スネイクマンの持つ力はそれだけではなかった。躱された拳が角度を変え、速度を増しながら何度でも襲い掛かるというその特性を武器に、カタクリを翻弄するルフィ。だが、簡単に防戦一方となるカタクリではなかった。カタクリは全身をドーナツの様な円形の姿に変形させると、地面を転がりながらルフィの攻撃を掻い潜っていく。そして変身を解くと同時に、その遠心力を利用したフルパワーの攻撃、“斬・切・餅”を繰り出した。そのパワーと粘着力の前に、ルフィは成す術なく大穴の底へと叩き落されてしまう。

 しかし、それでもルフィは倒れない。穴から飛び出したルフィは、痛みや空腹、感じた事のすべてを吐き出しながら、カタクリに猛攻を仕掛ける。拳と拳のぶつかり合い、一瞬の隙を突き相手の懐へと飛び込む死力を尽くした戦いにも、終局の時が近づいていた。
 ルフィとカタクリ。2人は自身の持てる全ての力を振り絞り、最後の大技を繰り出す。“ゴムゴムの王蛇キングコブラ”と“斬・切・餅”。全霊を込めた両者の技が、互いの身体を捉えた。勝者は果たして、どちらとなるのか。


【原作からの追加点・変更点】
※セリフの変更点は細かい差異が多いため、気になった箇所のみ紹介


・スネイクマンへの変身の直前、ルスカイナでの修業時代の回想シーンが追加。
 ルフィが自ら開発した『ギア4“弾む男バウンドマン”』への変身や、“ゴムゴムの猿王銃コングガン”の威力をレイリーに披露している。

・レイリーがルフィの“弾む男”の力を称賛しつつも、「まだ足りないものがある」として模擬戦を行うシーンが追加。
 腹部に拳を叩き込む事でギア4状態のルフィを吹き飛ばし、その先の岩山を破壊する程の一撃を繰り出している。
 その後もルフィは“ゴムゴムの犀榴弾砲リノシュナイダー”や“ゴムゴムの猿王群鴉砲コングオルガン”による攻撃を繰り出すが、レイリーの見聞色の覇気の前に全て躱されてしまった。

・“スネイクマン”への変身時に、身体から発した蒸気の様なオーラを纏い、身体の各部位を覇気で覆っていく変身シーンが追加。
 また両足にオーラを纏った際、身体が少し浮き上がり、原作では変身と共に消失していた草履が脱げ落ちる描写が追加されている。

・スネイクマンへと変身したルフィの1打目の攻撃を回避した際、原作でのカタクリは「!?」と反応を見せるだけだったが、アニメでは「今更こんな単純な攻撃を」というモノローグが追加された。またこの際の回避時、カタクリの目が一瞬だけ赤く光っており、見聞色による回避である事が分かる。

・ルフィが“ゴムゴムのJET大蛇砲カルヴァリン”を繰り出した際の加速回数が、原作に比べ遥かに多くなっている。またこちらもガード時のカタクリに、見聞色の覇気を発動する際の目が赤く光る演出が追加された。

・“ゴムゴムのJET大蛇砲”を受けて吹き飛ばされたカタクリが、足を地面につけたまま倒れる事なく耐えているのが分かりやすく描写。

・スネイクマンによる攻撃の連打を逃れるため、カタクリが全身をドーナツ状のモチへと変形させ、タイヤの様に回転しながら移動するシーン追加。
 またその際、カタクリの「パワーでも速さでも、おれの方が上だ!」というセリフ追加。

・“斬・切・餅”の使用時、カタクリが地面を砕く程の勢いで踏み込みを行う描写が追加。また攻撃のヒット時、その衝撃が後方へと突き抜けていく演出が追加。

・斬・切・餅に捕らえられたまま振り回されたルフィが目を回す描写追加。

・斬・切・餅によって捕らえたルフィを地面へと叩き付ける際、カタクリの右腕の筋肉が膨張する描写追加。

・カカオ島へと向かうサンジとプリンのシーン追加。
 島の周りを包囲するビッグ・マム海賊団の姿を発見したサンジがラビヤンに急停止指示を出した際、落ちかけたプリンの手をサンジが掴む事で救い上げている。

・カカオ島に集まる幹部達にバレずに島に上陸する方法を、サンジとプリンが模索するシーン追加。島の中で明かりの少ない場所を発見し、海面すれすれを超特急で飛ぶ事でバレない内に上陸する運びとなった。
 またその際、サンジとプリンが振り落とされないよう、ラビヤンの上に這いつくばるサンジ達の上からニトロが覆いかぶさる状態となっている。

・ラビヤンの上に伏せた状態のプリンが、サンジの手を握ろうと手を伸ばすシーン追加。その瞬間、波の発生によって生じた揺れの影響で、プリンが咄嗟にサンジの手を掴んでしまう。
 心の中では「できればずっと このまま…」と喜ぶプリンだが、サンジは「すまねえ 夫婦って思われるの嫌だったよな」と手を離してしまった。その際、プリンは悪態をつきながらも、サンジに見えない角度で残念そうな表情を浮かべている。

・その後、サンジ達は警備の隙をつき、カカオ島への潜入を成功させている。

・斬・切・餅によりルフィを大穴の中へと叩き落したカタクリが、「お前のパンチがおれの見る未来を超えるというのなら おれはその上を行くまで」というセリフ追加。
 また原作ではすぐに穴から飛び出してきたルフィだが、アニメでは出てくるまでに時間差が存在し、カタクリの「聞こえているんだろう、麦わらァ!!」というセリフの後に崩れた地面の下から顔を出している。

・原作では単なる跳躍にも見えた大穴からの飛び出しが、アニメではギア4の特性により空中を跳んでいる事が明確になっている。

・原作第895話 12Pの、思った事を全て吐き出したルフィがカタクリと拳の応酬を繰り広げるシーンにて、ルフィは“ゴムゴムのJET大蛇砲”、カタクリには“ナグリ餅”と技名を宣言する様に変更。

・原作では名前が呼ばれていなかった“焼餅”の使用時、技名の宣言が追加。
 また原作第895話 13Pの、拳打の応酬の中でルフィとカタクリが互いの攻撃を受け相打ちとなるシーンの描写が変更。
 ルフィが撃ち出した拳が角度を変え、再び襲ってくるまでの隙をつき、カタクリがルフィの間合いへと走り込み、至近距離からの“焼餅”を繰り出した。しかしその直前、ルフィの“JET大蛇砲”がカタクリの正面を捉えた事で、互いの拳の直撃を与え合う相打ちの結果となった。
 その際、ルフィは普通に吹き飛ばされているが、カタクリは吹き飛びながらも残った右腕で地面を蹴り、倒れる事無く着地している。

・ルフィが“ゴムゴムの黒い蛇群ブラックマンバ”を使用する直前、見聞色の覇気によってルフィが放つ技を見通したカタクリが「面白い…来い!」と迎え撃とうとするセリフ追加。

・カタクリがルフィの“ゴムゴムの黒い蛇群”の隙間を掻い潜るシーンにて、ルフィの拳を数発受けながらも、頭部以外の全身をモチへと変える事で回避するシーン追加。

・最後の攻撃にて、カタクリが全身をドーナツ状に変形させる際、一度全身をモチとし地面と一体化する描写追加。

・“ゴムゴムの王蛇キング・コブラ”と“斬・切・餅”を撃ち合う直前、シャボンディ諸島にいるレイリーとシャクヤクの現在の様子が描かれるシーンが追加。
 ルフィの近況を気にするシャクヤクが、レイリーに「今の時代を作れるのは今を生きてる人間だけ」という口癖がある事を指摘している。
 またレイリーは酒を飲みながら、その瞳に若かりし頃の麦わら帽子を被ったロジャーの姿を映し、ルフィに対し「越えてみろ」と心の内で呟いている。  

・ルフィが“ゴムゴムの王蛇”を繰り出した際、伸ばした腕に黄金の大蛇の様なエフェクトを纏う演出が追加。また原作では攻撃を繰り出す瞬間のシーンで締めとなっていたが、アニメでは互いの技を互いが受けた瞬間が描かれている。



【感想】
■スネイクマン発動

 今回はルフィの新たなるギア4、スネイクマンのお披露目回。カタクリ戦もいよいよ大詰めだなぁといった感じで、長かった。本当に長かった。
 スネイクマンの発動演出も中々に凝った作りになっており、戦隊ヒーローの変身シーンそのものだったジェルマ66のレイドスーツに続き、今度は身体の各部位にオーラを纏いながら、徐々にスネイクマン状態へと変身していくという演出が使われていた。ヒーローはよく分からない身だけれど、デジモンの進化バンクみたいで少しテンションが上がる。気分はbrave heart。
 謎に身体が浮かび上がったりもしているが……アレはまあ、演出重視ってやつだろう。

 バウンドマン発動状態では割と一方的な試合展開だったドフラミンゴ戦に比べると、ここは流石のカタクリ、新形態であるスネイクマンを相手に一歩も引かず、その特性をすぐに見極め互角の戦いを演じていた。
 時間切れでの逃走期間を除けばほとんど圧倒といった形だったドフラミンゴ戦に比べ、カタクリ戦ではスネイクマンへの変身後も、割と押され気味な展開が多かった。その事から、バウンドマンに比べるとこの変身形態に「あまり強く感じない」という声もあるみたいだが、相手の強さを考えるとその評価を下すのも酷という話だろう。カタクリとドフラミンゴではハッキリ言って地の実力や持っている格が違いすぎるし、これはスネイクマンを相手に対等以上に渡り合ったカタクリの圧倒的な力を褒めてあげるべきだと思う。



■ギア4に「足りないもの」

 スネイクマン発動の直前、原作にはなかったルスカイナの修行シーンが再度挟まれる形に。
 ルフィ君、めっちゃ回想するね。まあ尺稼ぎの必要はどこかしらで出てくるし、原作で描かれていない要素の多い修業時代の描写は何かと都合が良いんだろう。

 修行の成果として披露した“バウンドマン”の変身に対し、「まだ足りないものがある」として実戦型の修練をつけるレイリー。
 この爺ちゃんがそらまあ強い。バウンドマンとなり武装を固めた筈のルフィを容易く殴り飛ばし、無数の拳を放つ“猿王群鴉砲”の攻撃をも見聞色でヒラヒラと躱してしまう始末。あなた、ほんとに未来見えてないんですよね? 齢80近い老人とは思えない身のこなし、恐ろしい。

 というか“猿王群鴉砲”って、ルスカイナ時点でもう編み出してた技なんですね。ドフラミンゴ戦で使用しなかったから、てっきりクラッカー戦での思い付きで編み出した技なのかと。単発系の攻撃が十分通用してたから、必要ないと踏んだのかな。ああいう連続パンチって余計な体力使うだろうし、何もレイリーみたいな合間を縫う様な動きをしなくても、背後や側面に回り込んで避ける事は難しくないだろうから、カウンターを喰らうリスクも大きそうだし。

 結局、レイリーの言う「足りないもの」の正体は明言されなかった。“スネイクマン”への変身直前の回想にて放り込んで来たセリフという事で、演出的に、これは“バウンドマン”には不足しており、“スネイクマン”ならば改善できる弱点を指しているんだろう。
 ドフラミンゴとの戦いにおいても“猿王銃”が通用しない相手への対抗手段として、レイリーは「別の方法を考えるべきだ」と言っていたが、アレは「身体への負担が大きすぎる」というギア4全般のリスクを考えての発現であり、少なくとも“スネイクマン”はこの問題点を解決してくれる変身形態とは言い難い。

 この回想内において、レイリーがルフィに対し仕掛けた教えは2つ。1つはギア4の硬化した皮膚ですら受け切れない、圧倒的なパワーを誇る攻撃。そして2つ目は、どれだけの破壊力を持つ攻撃も、強力な見聞色によって避けられてしまえば意味がないという事実。この2つの弱みを補う事が、レイリーのいう「足りないもの」の克服に繋がるんだろう。

 そのうち防御面に関しては、“タンクマン”という変身形態がカバーしてくれていた。“バウンドマン”の硬化された腕を容易く斬り裂いて見せたクラッカーの攻撃を受け切り、更にその「防御」をそのまま「攻撃」に変換するという、これまたレイリーの教えの1つに則った変身形態だった。
ルフィ「ただ闇雲に弾き飛ばす“ただの防御”じゃ戦いにムダがあるって
    レイリーが言ってたぞっ!」
   「一発残らず倍の力で撃ち返す“攻撃”にかえろって!!」
原作ONE PIECE 67巻 667話より
 劇中で使用されたのは「満腹バージョン」という変則的なものだったが、このタンクマンという形態も、基本的には2年間の修行によって会得したものだったんじゃないかな。ああいう状況だったから膨れた腹を利用しただけで、わざわざ飯をかっ喰らって身体を作らなくても、本来なら空気か何かを利用する事で変身可能な“ゴムゴムの風船”とギア4を掛け合わせた様な防御用の変身形態だったんじゃないかと思う。

 バウンドマンはパワー、タンクマンは防御。ならスネイクマンは何に特化しているかと言えば、それは勿論スピードだ。どんな見聞色を持つ実力者でも、避けられない程の速度を誇る攻撃を繰り出せば攻撃は当たる。この3つの変身形態の実現により、ルフィはレイリーによって示唆された「足りないもの」を全て補う事に成功している様に見える。

 ……が、本当にそれだけで良かったのか、と言えばかなり怪しい。単純なスピードを持つ攻撃だけでは、カタクリに通用していないからだ。スネイクマンへの変身直後、「さっきより速い」と言って撃ち出されたルフィの拳は、カタクリの見聞色の前に容易く避けられてしまっている。一瞬の事で分かりにくいが、アニメではこの瞬間にカタクリの目が赤く光る演出が加えられているため、これは目で攻撃を追っての回避ではなく、見聞色によるものである。
 「避けられない程の速度を誇る攻撃を繰り出せば攻撃は当たる。」? それは一般的な見聞色の使い手に対してのみ言える事。未来を見通す程の見聞色の持ち主に攻撃を当てるには、超スピード単体では何の解決にもなっていないのだ。

 カタクリの見聞色は数秒先の未来をも見通すため、本来であれば“JET大蛇砲”が角度を変えて襲ってくる事までを先読みし、回避する事も可能だったはず。しかし、それが出来なかった。カタクリは1発目の単純な超スピード攻撃を予測する事は出来ても、折れ曲がって帰って来た側面からの攻撃までは、見通す事が出来ていない。何故か。これはスネイクマンや大蛇砲の特性というよりは、ルフィが新たに会得した未来を見通す見聞色の力が加わった事によるものだと思う。 
 
 これには根拠があって、実はアニメにおいて、カタクリが“ゴムゴムの大蛇砲”を目にするのは初めてではない。アニメ第857話、メリエンダ直後の「反撃開始」のターンにおいて、ルフィはカタクリに対し“大蛇砲”を1度披露しているのだ。その際、カタクリは1度目の攻撃を回避するが、角度を変えて再び正面から迫って来る拳に対応できず、腹に直撃を受けてしまっている。

 つまりアニメ版においては、カタクリはすでにこの「回避した攻撃が再び襲ってくる」という現象に対面しているのだ。にもかかわらず今回、最初はそのトリックを見切れずに驚いた様な反応を見せている。いくら長い事戦っているとはいえ、あのカタクリが1度受けた技を忘れてしまうとは思えない。ならば、今回カタクリが不意を突かれたのは、単に“大蛇砲”の特性だけが原因ではないという事になる。
 あの時と決定的に異なっているのは、カタクリ自身のコンディションの問題だ。あの時、カタクリは自身の最も見られたくないシーンを見られた激情から、見聞色による未来視が使えない状況にあった。そのせいで、本来なら躱せたはずのルフィの連続攻撃を、モロに喰らい続ける結果となってしまっていた。

 しかし現在、カタクリの精神集中の状態は万全の筈。肉体的な疲労は出ているだろうが、ルフィが最後に出してきた「切り札」を前にして、今のカタクリが集中力を途切れさせるわけがない。本来ならこの攻撃も、何度蛇行して来ようが未来視によってその動きは手に取る様に読み切れる筈だった。
 だが、そうはならなかった。戦いの最終局面に差し掛かったこの一瞬、ルフィの攻撃がカタクリの見た未来を上回ったからだ。今や互いに未来を見通す者同士となった彼らの戦いにおいて、見聞色で予測した相手の動きをどの様に上回るかこそが、攻防の分かれ目となる。

 今回カタクリが見通したルフィの攻撃の中に、おそらく「拳が帰って来る」というものは無かった。ルフィが放つ超スピードの拳を、カタクリが避ける。そこまでが、本来定まっていた未来だった。だがそれは、ルフィも知っていた。その未来を見た上で、互いが見た未来の先を行く攻撃を繰り出した。だからこそカタクリは驚いた。そしてそれを可能にするのが、“JET大蛇砲”の持つ追撃の能力だったのだ。

 個人的には、スネイクマンへの変身自体は2年の修業期間のうちに可能となっていたんじゃないかと思う。ギア2もギア3も、ブルーノと戦う前にはすでに用意されていた戦術だった。カタクリ戦の最中に突発的に編み出したにしては、それを閃いた事を匂わせる描写が存在していなかった。
 しかしすでに使用可能だったにしては、これまでスネイクマンへの変身が披露される事はなかった。それはルフィ自身、スネイクマンという変身形態の性能が、未完成なものであると気づいていたから。超スピードだけでは、達人クラスの見聞色を上回る事は出来ない。そこに加わったのが、自身も見聞色を磨く事によって会得した、未来を見通すという力。
 これが加わった事により、スネイクマンは初めて実戦における隠し玉として輝けるだけの力を得た。レイリーに教えられた「足りないもの」を補える変身形態となった。カタクリと出会い、戦った事が、“スネイクマン”を真の完成へと導いたのだ。



■ルフィVSカタクリ

 スネイクマンにまつわる攻防については、上で死ぬほど書き連ねたので最早多くは語らず。上のギア4関係の小題、合計文字数3000文字超えですって奥さん。読むほうもたまったもんじゃないであろう。
 
 あまりに理屈っぽい話が続いたので、以降は純粋な感想っぽいスタイルで。
 聞いた話では、なんだか今回、作画がめちゃくちゃイイらしい。確かに迫力が凄い。エフェクトも凄い。けど正直、おれ自身がアニメーションやイラストの界隈にまったく詳しくないせいで、そっち系統の話でひと盛り上がりする事ができない。作画の良し悪しどころか、絵の上手い下手すら分からない。ごめん。
 ただまあ、「なんか凄い」ぐらいのざっくりとした感覚は分かる。確かに凄い。うん、凄い。凄い以外の言葉が出て来ないので、この話は終わる。

 迫力という意味で挙げたいのは、1度目の“斬・切・餅”を放った際のカタクリかな。「自分がドーナツ化して駆けまわる」というギャグの様な動きから、その遠心力をパワーに変えた全力のラリアット。そしてアニメで加わった地面を割る程の力強い踏み込みや、ルフィの身体を叩き付ける際の脅威的に膨張した筋肉。持てる力の全てを出し切って殺しにかかった様な一撃は、流石に鳥肌モノの迫力だった。
 まあわざわざドーナツ大回転からの空中で攻撃を繰り出しているのに、一回踏み込みのために地面に足を着いてしまうとせっかくの勢いが多少死んでしまうのでは、って気もするけれども、このド迫力演出の前には些細な事である。
 


■サンジ&プリン
 
 原作では割と「知らん内にカカオ島に着いてた」2人だが、アニメではそこまでの経緯が描かれる様に。
 あれだけの包囲が敷かれた島にどうやって潜り込んだのか謎だったけど、うまい具合に隙を突いていったのね。ラビヤン、優秀やなぁ……。単なるホーミーズとは思えないぐらいのポテンシャルだけど、投入されたソウル自体が強力なものなのかしら。

 他にも相変わらずのプリン劇場が開催されたりもしているけれど、次回には「最後のお願い」のくだりが描写される事を考えると、少し切ない。事故的とはいえ手を繋いでしまった事を喜ぶプリンに対し、「夫婦って思われるのイヤだったよな」などという妄言を吐いてしまう鈍感男がそこにはいた。
 「できればずっとこのまま…」などと言っているけれど、プリン自身もこの作戦が終わればサンジとはサヨナラという事になるのは分かっている。それ故に、あり得ない「永遠」を望んでしまう物悲しさ。犯罪的な鈍さを誇るサンジの反応も大概だが、そも、彼がその様な思い込みを持ってしまう原因を作ったのは他ならぬプリン自身というこの泥沼感。ままならぬ……まったくもってままならぬ。



■大蛇 VS 焼餅

 原作のワンシーンを元としたアニメオリジナル描写なのだが、これがまたえらくカッコいい。
 まずルフィが放った攻撃の1打目を、カタクリが回避する。この攻撃は当然角度を変え、再び迫って来るのだが、その2打目が襲ってくるよりも先にルフィの懐へと全力で走り込み、超至近距離からの焼餅を放っている。

 結果は互いの攻撃をダイレクトに喰らい合う相打ちという事になるのだが、この本来ならどう考えても遠距離から放つ射撃系の技であった“焼餅”を、ノーガードの接近技として使用していく咄嗟のアイデアが秀逸。角度を変えて何度でも襲い掛かる“大蛇砲”を受け切るのは困難と判断し、ならその技を放っている張本人を、超火力の攻撃によって叩き潰してしまえばいい…と言わんばかりの見事な攻撃だった。



■王蛇 VS 斬・切・餅

 もうなんか、凄い。
 ルフィが放った拳にオーラが纏わりつき、黄金の大蛇のエフェクトとなってカタクリに向かっていく演出。本当にONE PIECEか?と疑いたくなる様なド派手さ。おれはドラゴンボールを見てるんじゃないかと思わされる過剰なまでの金色っぷり。蛇拳爆発!!ルフィがやらねば誰がやる。

 まあなんやろ、派手さって全てを凌駕するんだなと思いました。どう見てもONE PIECEっぽくない上、冷静に考えると何が何やら分からん演出なのに、まあカッコいいしいっか、ってテンションになる感じ。帳消し力の鬼。

 ……ただ正直、レイリーとシャクヤクのシーンは蛇足だったかな。
 これが最後の攻撃だ!!っていう勢いのある瞬間に、まったく別の箇所で行われている何気ない会話を挟んでしまう事で、見ている側の緊張の糸が途切れてしまった感じがある。
 このシーンを入れるなら、次回の冒頭とかで良かったんじゃないかな。続行しているバトル終盤のど真ん中に入れるようなシーンじゃあなかった様な気がする。


【登場した技】 
ギア4 “弾む男バウンドマン
使用者:ルフィ
※アニメオリジナルシーン

 ルスカイナでの修業時代の回想シーンにて登場。
 修行の成果をレイリーに披露するために使用された他、その後のレイリーとの模擬戦闘においても、この形態のまま戦いを繰り広げている。


ゴムゴムの猿王銃コングガン
使用者:ルフィ
※アニメオリジナルシーン

 ルスカイナでの修業時代の回想シーンにて登場。
 ルフィが自ら編み出した“弾む男”へと変身し、レイリーに修行の成果を披露するべく使用。ルスカイナの岩山へと拳を叩き込み、粉々にする程の威力を見せつけた。


ゴムゴムの犀榴弾砲リノシュナイダー
使用者:ルフィ
※アニメオリジナルシーン

 回想シーン内の、レイリーとの模擬戦闘にて登場。
 宙を駆ける事でレイリーの攻撃を回避し、空中から反撃を行う形で使用された。しかしこれはレイリーに回避された事で空振りとなり、地面を大きく叩き割るだけに終わっている。


ゴムゴムの猿王群鴉砲コングオルガン
使用者:ルフィ
※アニメオリジナルシーン
 回想シーン内の、レイリーとの模擬戦闘にて登場。
 “ゴムゴムの犀榴弾砲”を回避したレイリーへの追撃として使用されたが、無数に撃ち出された拳は全てレイリーの“見聞色の覇気”によって回避されてしまった。


ギア4 スネイクマン
使用者:ルフィ

 鏡世界ミロワールドにおけるカタクリとの戦闘にて登場。
長きに渡って続いた死闘に終止符を打つべくして使用され、その特徴である拳の「加速」と「追跡」によってカタクリを苦しめた。  


ゴムゴムのJETジェット大蛇砲カルヴァリン
使用者:ルフィ

 “スネイクマン”へと変身したルフィが繰り出す高速の拳。一見して普通の攻撃に見えるが、一度避けられても腕が折れ曲がり、加速しながら敵を追尾し、何度でも襲い掛かるという技。
 鏡世界におけるカタクリとの戦闘にて登場。2度に渡って回避されるが、曲がる度に加速を加えた拳は風圧により地面を砕きながら直進し、カタクリの正面を捉えた。カタクリは武装色を纏った腕によってガードを行うが、その威力により地に足をついたまま後方へと吹き飛ばされている。

 更に斬・切・餅を受けた後、思った事を全て吐き出したルフィがカタクリと拳の応酬を繰り広げた際の攻撃も、アニメではこの“JET大蛇砲”となっている。
 両腕から拳の乱打を繰り出し、カタクリの“ナグリ餅”と互角に撃ち合い、互いに幾度もの攻撃を喰らわせている。


斬・切・餅ザンギリモチ
使用者:カタクリ

 モチモチの実の能力により肥大化させた右腕をトゲで覆い、更に武装色を纏う事によって放たれる強力なラリアット技。自らの身体をドーナツ状のモチへと変形させ、回転の遠心力を加えた状態で元の姿へと戻りながら放たれる。

 スネイクマンへと変身したルフィとの戦闘時に登場。
 ドーナツ状の身体へと変形する事でルフィの高速の拳を躱し続け、その流れから強力な一撃を叩き込んだ。
 さらに武装色の覇気で覆われた腕の表面にはモチの粘りが生きており、これによりルフィの身動きを封じたまま大きく振り回し、地面に大穴を空ける程の威力で叩き付けた。
 またアニメでは、ルフィに攻撃を喰らわせた際に衝撃波が後方へと突き抜けていく演出がなされている。

 更に決戦の最後を締める大技としても使用。トドメの一撃となり得る強烈な一撃を浴びせると同時に、ルフィの“ゴムゴムの王蛇”を身体に受けている。


ナグリ餅
使用者:カタクリ
※アニメオリジナル技

 武装色の覇気を纏い、モチモチの能力によって角張った形状へと変化させた両腕から、パンチの乱打を繰り出す技。
 ルフィの“ゴムゴムのJET大蛇砲”の連打と互角に撃ち合い、伸ばした腕による攻撃を互いに幾度となく喰らわせ合った。
 この攻撃シーン自体は名無しの攻撃技として原作にも存在していたが、アニメでオリジナルの名称がつけられた。


焼餅
使用者:カタクリ
※アニメオリジナルシーンを含む

 カタクリがルフィとの拳の応酬を繰り広げる中で登場。原作でも焼餅らしき技を繰り出していはいるが、名前が呼ばれたのはアニメのみとなっている。
 回避したルフィの拳が追撃を繰り出すまでの隙をつき、間合いへと走り込みながら使用。ルフィに至近距離からの一撃を喰らわせるが、同時に正面へと返って来たルフィの拳を受け、相打ちとなった。


ゴムゴムの黒い蛇群ブラックマンバ
使用者:ルフィ

 腕が分裂した様に見える程の速度で、角度を加えた“大蛇砲”の連打を無数に繰り出す技。
 カタクリとの戦闘にて登場。
 武装色のガードの上からカタクリに痛手を負わせる威力を見せたが、カタクリの見聞色の覇気とモチモチの能力による回避術により攻撃を掻い潜られ、足技のカウンターを受けてしまった。


ゴムゴムの王蛇キング・コブラ  
使用者:ルフィ

 スネイクマン状態で放った拳を、自身の周囲を大きく迂回させ、最大限の加速を伴い相手に叩き込む技。
 カタクリとの最終決戦にて登場。カタクリの“斬・切・餅”と同時に繰り出され、互いの死力を尽くした技同士を叩き込んだ。
 アニメでは技の使用時、腕に纏ったオーラが黄金の大蛇の様な姿へと変わる演出が追加されている。


【声の出演】
ルフィ・・・・・・田中真弓
サンジ・・・・・・平田広明

カタクリ・・・・・杉田智和
プリン・・・・・・沢城みゆき
レイリー・・・・・園部啓一
シャッキー・・・・浅野真澄
ニトロ・・・・・・粗忽屋東品川店(山口勝平)
ラビヤン・・・・・岡本寛志

ナレーション・・・大場真人