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アニメ版 ONE PIECE
第873話
「起死回生 最強の援軍ジェルマ!」 


【原作の対応話数】
89巻 第898話

もくじ
あらすじ
原作からの変更点
感想・妄想
登場した技
声の出演


【あらすじ】
 ジェルマ66という思わぬ援軍を得たサンジは、ルフィを抱えカカオ島脱出を目指す。だがブリュレからもたらされた一つの凶報が、彼らを狙うビッグ・マム海賊団を怒れる軍勢へと変貌させた。カタクリの敗北。あり得ない筈のその知らせに怒りを燃やすオーブンは、薙刀を構えルフィを始末しようと動く。だがその瞬間、彼らを狙うオーブンの身体を、イチジの光拳が貫いた。かつて憎んだ兄の手によって救われたサンジ。その後もヨンジが、ニジが、幾度となく襲い掛かるビッグ・マム海賊団の追撃から、サンジの逃亡を後押しするのだった。
 そして彼らの援護により町を抜けたサンジの前に、レイジュが姿を表す。更なる攻撃から彼を救い出したレイジュは、幼少期、東の海にて彼を送り出した時の事を思い返す。そして彼が見つけ出した掛け替えのない仲間であるルフィに目を向けると、その大事なものを絶対に手放さない様に、とサンジに伝え、あの時と同じ様に彼を海へと送り出すのだった。
 数多の危機を掻い潜り、カカオ島の脱出に成功したサンジ。帰るべきサニー号の姿は、目前に迫っていた。


【原作からの追加点・変更点】
※セリフの変更点は細かい差異が多いため、気になった箇所のみ紹介


・「(ヌストルテ達を)海に捨てておいた」とのイチジの言葉を電伝虫越しに聞いたモンドールとニワトリ伯爵が、驚愕の反応を見せる描写追加。

・ジェルマに倒されたヌストルテが海に浮かんでいるシーンにて、同時にバスカルテ、ドスマルシェらも海に浮いている事が分かるカット追加。
 また同シーンにて、原作では「C家12男 ヌストルテ」の紹介表記がされていたが、こちらはアニメでは削除。

・ニジがヌストルテの口調を真似てオーブンらを煽るシーン追加。

・サンジが“空中歩行”により、無数に放たれる銃弾を掻い潜りながらカカオ島脱出を目指すシーン追加。途中、ニューイチら10つ子の男子達が放つバズーカに狙われるが、これはイチジ、ニジ、ヨンジの混色ブラックバグ”によって着弾前に破壊している。
 またこの際、ニューイチ、ニュージ、ニューゴはそれぞれ1つずつバズーカを構えているが、ニューゴのみニューサンの肩の上に乗っかっており、代わりにニューサンが2つのバズーカを使用している。

・原作ではこの時点で登場していなかったジャッジの姿が描かれ、艦隊への砲撃指示を出しているシーン追加。ブラウニーの艦隊の一部を打ち破っている。

・シトロン、シナモンが、ジェルマからの打撃を受けたスナックらの艦隊への救援に向かうかをスムージーに問うセリフ追加。これに対し、スムージーは原作通り、麦わらの一味の船のみを追う事を指示している。

・ダイフクのスムージーに対する「麦わらの船を泳がしてどうする!? さっさと追い詰めろ!」というセリフ追加。

・ジェルマ66が現れた事で、ブルックが「ひょっとしてレイジュさん、パンツ見せ……」と言いかけてナミに蹴飛ばされるシーン追加。

・サンジからの電伝虫を受けた際、ナミがルフィの安否を尋ねるセリフ追加。

・カタクリが倒されたという事を知ったオーブンが、怒りから全身をマグマの様に燃え滾らせる描写追加。
 またオーブンが走り始めた時、彼が踏みしめた地面が真っ赤に燃える演出がなされている。

・サンジが左腕に銃弾を受けた際、一度地面に倒れ込む描写追加。だがそのまますぐに立ち上がり、再度ルフィを抱えて走り始めている。

・オーブンがサンジに対し薙刀を振るうシーンにて、原作では一太刀目が振るわれる瞬間にイチジの救援が入ったが、アニメではサンジが自ら回避。その後の二太刀目にて、原作通りイチジの“火花光拳”が繰り出される様に変更された。

・オーブンの攻撃時、原作では手にした薙刀の刃部分にのみ炎を纏っていたが、アニメでは全身から炎を噴き出しながら攻撃している。またその際、呑気に眠りこけるルフィに対し更なる怒りを燃やし、「許さねェ」と口にしている。

・ジェルマ66の4人が必殺技を放つ際、それぞれの技名がテロップとして画面に表示される演出追加。

・イチジが火花光拳スパーキングヴァルキリーを放つ際、サンジの後方から超スピードで飛び出し、サンジとオーブンの間に割り込む描写追加。

・イチジによってオーブンの攻撃から救われたサンジが、幼少期に兄弟からの暴行を受けた時のことや、先日イチジから「失敗作」と罵られた事を回想し、複雑な表情を浮かべるシーン追加。

・イチジからの攻撃を受けて倒れたオーブンに、ニューサンが慌てて寄り添うシーン追加。

・ヨンジが巻力断頭ウインチダントン”を放つ際、ヨンジのサングラスに0と1の文字列が表示される演出追加。
 また原作では背後からユーエンの首を掴んでいたが、アニメでは正面からに変更された他、ユーエンの身体を振り回す際にカカトのブラスターを使用し、その勢いを高める描写追加。

・サンジを送り出したヨンジが「目障りなんだよ、てめェは!」と笑みを浮かべるセリフ追加。

・ニジの起電光剣ヘンリーブレイザーを受けた敵兵達が、斬られるだけでなく電撃により感電する描写追加。

・サンジを抱えたニジが町を抜けた際、ニジの「生きてるか? 出来損ない!」というセリフ追加。

・ニジがサンジを空へと放り投げる直前、2人の会話追加。
ニジ「おれ達に迷惑しかかけねェな」
サンジ「助けろなんて頼んでねェよ」
ニジ「フッ……バーカ!」


・ 原作ではサンジと言葉を交わす事無く別れたレイジュだが、アニメではバズーカ砲の標的となったサンジを直接救い出すシーンが追加。
 サンジに抱えられたまま眠り続けるルフィに目をやり「離しちゃダメよ、絶対に!」と言い、幼少期と同じ様にサンジを送り出している。

・カカオ島からサンジが脱出した後、彼を送り出したレイジュがカカオ島へと舞い戻るシーン、イチジとオーブンが拳を交えるシーン、ニジが敵兵に電撃を浴びせるシーン、ヨンジが怪力により敵兵を投げ飛ばすシーンがそれぞれ追加。


【感想・妄想】

■最強の援軍ジェルマ


 「言うほど最強か?」という疑問は置いておいて、今回はもう30分通して丸々ジェルマ66の兄弟達が持って行ったお話。彼らと相対した時の、オーブンさんの「悪の怪人」っぷりが凄い。デカいし、半裸だし、マントだし。

 今回のジェルマによる救出劇に関して、最も気になる部分と言えばやはりコレだろう。
 ジェルマ66は、改心したのか?

 ジャッジに関しては、これは明確に「NO」と言えると思う。詳しくは次回に回すが、彼の中に少なからぬ葛藤や疑念こそ生まれど、自身の在り方や息子達、特にサンジに対する考え方を、完全に「改める」という段階まで進んでいたとは、とても思えない。

 なら、兄弟達は? イチジ、ニジ、ヨンジの3人は、サンジを「出来損ない」と嘲笑ったあの時から、変化が生まれているのか?
 彼らは本当に「ビッグ・マム海賊団に一泡吹かせたかった」だけなのか。
 それとも、サンジ救出という目的を明確に持っていたのか。

 これに関して、最近は「どっちも」が正解なんじゃないかと思う様になってきた。
 まず後者、サンジ救出だが、これは明確に彼らのメインミッションである。アニメでは少し先の話になるが、サンジ達が無事に逃走に成功した時、イチジは兄弟達に「任務完了だ」と告げている。つまり、彼らの目的は初めから「サンジを無事に逃がす事」だったのだ。
 そしてこれが「任務」である以上、このサンジ救出の指令はジャッジから発令されたものであると考えられる。茶会の一件だけでは「借り」を返した事にはなっていないと考えたのか、ルフィに対する「答え」を求めたからなのか、人の親としての最後の情だったのか、とにかくジャッジはサンジを救い出すため、艦隊を動かした。

 なら、イチジ達はどうか。彼らはジャッジの指示に共鳴し、心からサンジを救いたいと考えていたのか。
 個人的な印象で言えば、「ビッグ・マム海賊団に一泡吹かせたい」というのは、憎まれ口などではなく本心として存在していたと思う。13年ぶりの再会時、明らかにヨンジやニジよりも強くなってしまったサンジに対し、彼らはゼフを人質にとってまで、自分達の「階級」をサンジの身体に叩き込んでいた。彼らは意外と、他者との力量の上下関係をハッキリさせたがるタイプ、言ってしまえば負けず嫌いなのだ。

 そんな彼らにとって、茶会では言い様に騙され、レイドスーツを着て戦うもカタクリやビッグ・マムには到底敵わず燦燦たる結果に……という大敗を背負ったまま、むざむざと帰還するのは屈辱だったに違いない。
 だが、流石にビッグ・マム海賊団との全面戦争に持ち込み、勝利を収めるのが難しいのは彼らも分かっていたハズ。だからこそ、彼らはサンジを無事に逃がすという方法で、彼らの鼻っ柱を折ろうとした。少なくともこのカカオ島の戦線において、ビッグ・マム海賊団の勝利条件は「ルフィの討伐」。つまり彼を抱えるサンジを生きて逃がせば、ビッグ・マム海賊団は事実上の敗北を喫する事になる。だからこそ、イチジ達はサンジ救出を最優先に置いた戦闘を繰り広げたんじゃないかと思う。感情としては、頂上戦争にてエース処刑を食い止めたクロコダイルに近い感情かもしれない。
 ジャッジとイチジ達の間ではその目的こそ違えど、「サンジ救出」という任務それ自体には、特に反目する様な要素はなかったんじゃないだろうか。


 話を元に戻す。
 彼らはビッグ・マム海賊団に対し、一矢報いる事を望んでいた。それなら、サンジ救出という行動自体は、本当にただの「手段」でしかなかったのか。
 イチジ、ニジ、ヨンジの兄弟達の中で、WCI編を通じてサンジに対する感情に変化は無かったのか。
 彼らの改造によって失った「感情」に、変化は無かったのか。

 これに関して、原作ではかなり曖昧……というか、明確に「変わった」と言えるほどの描写はされなかった。多分、読者側の想像する余白を残したかったんじゃないかと思う。
 対するアニメでは、描写の追加、セリフの追加により、我々が受け取れる印象も少し変わっていた様に思う。
 特にニジとヨンジだ。彼らがサンジを救出し、送り出す際の追加セリフである「目障りなんだよ、てめェは!」「フッ……バーカ!」というセリフ。これらは文面だけで見ると小バカにした様な印象になるかもしれないが、実際にアニメで見た時のセリフや表情は本気の愚弄というより、少なからず情愛を持っているが故に出てくる憎まれ口といった雰囲気だった。ベクトルとしては、普段ゾロとサンジが繰り広げるそれに近いかもしれない。サンジがどう受け取るかはともかく、少なくとも、幼少期の様な見てるこっちが胸糞悪くなる様な嘲笑っぷりとは、明らかに質が違っていた様に想う。


 茶会以降、兄弟達のサンジを見る目が変わった。これ自体は事実なんじゃないかと思う。
 そも、彼らはなぜサンジの事を嫌い、暴力を振るったりしていたのか。それはサンジが「出来損ない」だったからに他ならない。
 トレーニングでは1人だけ落第点を叩き出し、王族の条理に反する妙な優しさを見せ、料理という名の奉仕の心までをも持ち合わせたサンジは、ジェルマ66にとって何の役にも立たない存在だった。彼らはジェルマの兵力として、ジャッジの悲願を果たすための「兵器」として生み出された。そんな彼らにとって、自分達と同じ血を継ぎながら、ジャッジの役に立たない「多数弱者」側の存在であるサンジなど、ただ苛立ちを覚えるだけの相手だった。

 しかし、この結婚式の茶会において、あり得ない出来事が起こる。サンジによって、彼らは命を救われてしまったのだ。
 ただサンジが自分達よりも強くなってしまっただけなら良い。兵士として必要な非情さ、王族としての誇りを持たないサンジなど、いくら強くても彼らにとっての「出来損ない」である事に変わりはないからだ。
 イチジ達が「強さ」を得たのも、「情」を奪われたのも、全てはジェルマ66のためだった。にも関わらず、彼らがジェルマのために失った「情」により、彼らは救われてしまった。ジェルマが否定したものによって、ジェルマは生き永らえたのだ。
 この矛盾が、彼らの改造によって制御された思考回路に、ひとつのバグを発生させたんじゃないだろうか。
 彼らはジャッジの命令に逆らう事ができない様に改造を受けているという。ヨンジの機械化された身体などを見るに、おそらく脳のどこかに特殊なプログラムを施されているんだろう。その回路に生じたバグ。それが、彼らの思考や価値観に、メスを入れる結果となった。これにより、彼らはプログラムで封じられていた兄弟の情を、僅かながら取り戻したんじゃないか。

 きっかけさえ掴めてしまえば、後は簡単だ。お茶会での一件により、彼らは王としての条理や非情さを、嫌が応にも見つめ直さざるを得なくなった。
 サンジはもはや、出来損ないなどではない。その事実を認める事は、彼らとサンジの間にあったひとつの溝を、少しずつでも埋めていく事に繋がる。だが人間、わだかまりが解けたからと言って、不仲だった相手と急にべたべたしろと言われても難しいもの。サンジを救い出した際の憎まれ口も、彼らなりのコミュニケーション手段だったんじゃないかと思う。アニメ派へのネタバレになってしまうかもしれないが、あのアイテムをサンジに持たせたのも、彼らが少なからずサンジを認めたからなんじゃないかと思う。

 そして彼らやレイジュに救い出された後、サンジが人知れず笑みを浮かべたのも、そんな彼らの思いを汲み取る事が出来たから、というのもひとつの要素としてあるんじゃないかと思う。
 これらの描写は、サンジとジェルマ66の間に生じていた亀裂が、少なからず修復される事に説得力を持たせる。そしてこの兄弟間での関係性の変化による、ジェルマに対する憎しみの緩和が、来るワノ国編でのワンシーンへと繋がって来るのかもしれない。



■海に捨てられたヌストルテ軍

 アニメじゃ結構長い事戦っていたヌストルテ、バスカルテ、ドスマルシェの3つ子だが、やはり原作同様にハエ扱いを受け、海へと放り捨てられてしまっていた。
 この際、原作では海に浮かんでいる事が確認できたのはヌストルテのみなのだが、アニメでは残る2人の姿も確認できる。海に浮かぶ事が出来るという事は、この3人はみな能力者ではないという事になる。

 ヌストルテはいい。原作からしてそういう描写だったし、アニメ855話で見せた戦闘手段も、被っている帽子の口部分から針や竜巻を繰り出すというものだったので、帽子側に何か細工があるんだろうと考えれば良い。
 しかし他の2人はどうやねん。袖口どころか口から思いっきり火炎放射をかましてたバスカルテに、投擲した剣を空中で自在に操るドスマルシェ。あれらの攻撃は、悪魔の実の能力によるものではないという事になってしまう。なら一体どうやって……。

 まあバスカルテは、100歩譲って可燃薬品や火炎放射器の様な道具に頼ったものだと解釈してもいい。しかしドスマルシェは……。糸か何かを操る事によるトリックだったのか……?
 なんか能力者ではないと考えると逆に凄い気がしてきた。だってそれこそ、気功か何かの産物でないと説明が……。
 それともまたクウイゴス案件か? Mr.3再び、ベラミー再びなのか?


■10つ子バズーカ部隊

 前回ペコムズにおもっくそブッ飛ばされた割には、結構ピンピンしているニューイチ達。頑丈なもんだ。
 彼ら、何気に豊富な武器を扱っているシーンが描かれていて、メインウェポンらしき鎌に加え、ジェルマ66に向けて撃ちまくってた拳銃、そして今回はバズーカを使ってサンジを狙い撃とうとしていた。
 10つ子(の内5人)のバズーカVS4つ子(の内3人)の混色バグの勝負は何気に熱い……か?

 構図としては、5人の男子それぞれが合計5丁のバズーカを構え、一斉に狙撃する形。……なのだが、よく見るとニューゴのみ号令役に回っており、身体の大きいニューサンが2丁のバズーカを構えさせられるという状態になっていた。しかもちゃっかり肩の上に乗っかってるし。
 ベスト弟ーティスト賞準入選の愛され弟は、何気に甘え上手だったのかもしれない。ニューサン、同い年だけど。


■怒れるオーブン

 鏡世界にて、カタクリがルフィに敗北した事をみなに伝えるブリュレ。何もそんなに大声で知らしめてやらんでも。カタクリにとっては名誉ある敗戦だろうけど、そんなに吹聴してほしいモンでもないでしょうよ。

 この報告を聞いた時のビッグ・マム海賊団の怒り心頭っぷりは凄まじいもので、どれだけカタクリが実力・人格共に信頼と好意を受けていたのかが分かる。この感じだと、たぶん彼の素の姿を知った上でも親しみを持って接してくれるんじゃないかなぁと思えますね。

 中でもオーブン兄さんのブチギレっぷりは凄まじく、ルフィに飛びかかるだけだった原作に比べ、体中を熱で燃え盛らせながら突っ込んでいくという恐ろしい演出が施されていた。オーブン兄さん、もうロギア系の領域だよ、それ。これも能力の覚醒の一種なんだろうか。どうも怒りでヒートアップする口らしい。
 石床を一瞬で溶かして溶岩と化してしまうシーンなど、もはやサカズキとぶつかっても良い勝負するんじゃないかって気すらしてくる。ぶっちゃけマグマグ、メラメラの下位互換などとも囁かれるネツネツの実だが、何だかんだで使い手の技量や工夫によってその辺はカバー出来てる様な気もする。熱海温泉なんかは、自然系じゃ中々できない使い方だろうしね。

 ちなみに、狙って使われたセリフなのかは微妙だが、「麦わらのルフィの骨も残すな!」というセリフはW7でルフィがフランキー一家に対して発した言葉に似ている。
 オーブンやビッグ・マム海賊団にとってのカタクリという存在は、ルフィ達にとってのウソップと同等の重みを持つ人物だという証とも言えるかもしれない。


■レイジュにやられた狙撃手

 くっそどうでも良いんですけど、なぜかただのモブにも関わらず、左腕に仲間の印をつけているやつがいます。
 いや、ただの腕章なんだけど。気になったから。それだけ。


■サンジとレイジュ

 今回のエピソードの中で、もっとも原作と異なる描かれ方をしたのはここだろう。
 原作ではサンジと言葉を交わす事なく別れたレイジュが、アニメでは直接彼を救い出す。そして13年前を彷彿とさせる構図で、彼の背を押し、送り出すのだ。
 
 直接の別れが描かれた事で、このシーンの解釈は大きく変わる。人知れず彼を救い出す姿に無償の愛を感じるのか、思いを直接口にする事に確かな繋がりを感じるのか、どっちを良いと取るかは人それぞれにあると思うが、メディアミックスならではの二重の味わいがあって良い変更点なんじゃないかと思います。ちなみに、個人的にはどちらかと言えば原作の方が好き。アニメ版も良いけどね。

 レイジュが「離してはダメ」と言った様に、今のサンジにはもうルフィ達という大事な仲間がいる。過去の辛かった経歴を弾き飛ばすぐらい、今が幸せなのだろうから彼の方は問題ないと思うが、正直むしろ大変なのはレイジュの方じゃないだろうか。
 茶会前、彼女は自分の家族に対しあまり良い感情を抱いていなかった。ジェルマに対しては「滅ぶべき」、死を前にしてヘラヘラと笑う弟達に対しては「人間とは思えない」と、普段の態度とは裏腹にかなり強い拒絶の意志を持っていた事が分かる。

 だが、レイジュはサンジとは違い、今のところ国を出て行く当てもなければ、彼女に寄り添ってくれる様な人物の存在も見当たらない。それどころか、ジャッジの命令に逆らえない様に改造まで受けている身なので、ジャッジが変わらない限りはこのまま一生をジャッジに捧げる他にないのだ。
 さらに厳しい事に、彼女は自分自身を「ジェルマに加担した悪党」であると認識していて、茶会の場であのまま命を絶つつもりだった。そこまでの覚悟が決まってしまっている上、サンジを送り出した事である種の未練の様なものも無くなってしまっている状態。死ぬ事に抵抗がないのだ。ソラの遺伝子が強いのか、サンジと同等の自己犠牲的……というか、それを通り越して自分を捨て鉢とすら見なしている精神を持ってしまっている様に思う。

 まあ彼女もジェルマの一員として手を汚している、というのはその通りなのだろうけれど、一連の彼女の行動を見てると、やはりレイジュにも何らかの救いはあって欲しいと思うところ。結局のところジャッジが変われば片のつく問題でもあるとは思うので、そこに望みをかける他にないのかな。


■次回予告
だがその時、スムージーの周到な作戦により、
逃げ場のない最大の危機に陥ってしまう。
アニメONE PIECE第874話 次回予告より

 わろた。



【登場した技】 
空中歩行スカイウォーク
使用者:サンジ
※技名が呼ばれたのはアニメのみ

 ジェルマ66により危機を救われたサンジが、ルフィを抱えカカオ島を脱出するために使用。


混色ブラックバグ
使用者:イチジ、ニジ、ヨンジ
※アニメオリジナルシーン

 ニューイチらがサンジに向けて放ったバズーカ砲を迎撃するために使用。弾を着弾前に撃ち落とし、サンジのカカオ島脱出を後押しした。


火花スパーキング光拳ヴァルキリー
使用者:イチジ

 自身の目を発光させる事で相手の視覚を奪い、生じた隙をついて掌から放つ光弾の乱射によって周囲の敵を貫く技。
 サンジとルフィに対し攻撃を繰り出そうとするオーブンを食い止めるために使用。周囲の敵兵もろともオーブンに痛手を与え、サンジを逃がす事に成功した。


巻力断頭ウインチダントン
使用者:ヨンジ

 機械化された腕や指を伸ばす事で敵の首を掴み上げ、そのままハンマー投げの様に大きく回転させて投げ飛ばす技。
 ユーエンとの戦闘にて登場。ユーエンの首を掴み、周囲の敵を巻き込みながら振り回す事で敵を一掃。ユーエンを撃破し、サンジの脱出を後押しした。


起電光剣ヘンリーブレイザー
使用者:ニジ

 「高速の剣」と称されるニジの剣技。電気を纏った剣と超スピードの移動術により、一瞬の内に敵を斬り裂くと共に電撃を浴びせる技。
 砲撃に狙われたサンジを抱えたまま空を飛び、彼を狙う敵兵達を瞬時に蹴散らした。


桃色毒矢ピンクホーネット

使用者:レイジュ

 自らの吐息を毒の矢に変えて連射する、レイジュの技。
 催涙ガス弾によりサンジから飛ぶ力を奪おうとするビッグ・マム海賊団に対して使用し、サンジの危機を未然に防いだ。


【声の出演】
ルフィ・・・・・・田中真弓
ナミ・・・・・・・岡村明美
サンジ・・・・・・平田広明
チョッパー・・・・大谷育江
ブルック・・・・・チョー
ジンベエ・・・・・宝亀克寿
キャロット・・・・伊藤かな恵

オーブン・・・・・木村雅史
ニワトリ伯爵・・・麦人
モンドール・・・・伊丸岡篤
ブリュレ・・・・・三田ゆう子
ダイフク・・・・・咲野俊介
スムージー・・・・勝生真沙子
シナモン・・・・・鈴木真仁
シトロン・・・・・今野宏美
ジャッジ・・・・・堀秀行
レイジュ・・・・・根谷美智子
イチジ・・・・・・杉山紀彰
ニジ・・・・・・・宮内敦士
ヨンジ・・・・・・津田健次郎
シブースト・・・・服巻浩司
ミュークル・・・・石橋桃
ブラウニー・・・・宮崎寛務
ユーエン・・・・・成瀬誠
ニューイチ・・・・新井良平
ニュージ・・・・・岡本寛志
ニューサン・・・・粕谷雄太
ニューゴ・・・・・千葉俊哉

スムージーの部下・・・関根有咲 れいみ
部下・・・・・・・・・ボルケーノ太田 深川和征
           五味洸一 坂井易直
           戸松拳也 城岡祐介
ナレーション・・・大場真人