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アニメ版 ONE PIECE
第876話
「仁義のおとこ ジンベエ決死の大海流」 


【原作の対応話数】
90巻 第901話

もくじ
あらすじ
原作からの変更点
感想・妄想
登場した技
声の出演



【あらすじ】
 クイーン・ママ・シャンテ号からの砲撃により、轟沈したかに思われたサニー号。だが残骸と化した船の正体は、サニー号ではなくタイヨウの海賊団が乗るスナッパーヘッド号だった。砲撃の瞬間、ワダツミがサニー号を口の中に匿い、間一髪で危機から救っていたのだ。

 サニー号の生存に気付いたオーブン達は、彼らを逃がすまいと更なる追撃を浴びせる。これに立ち向かったのは、アラディン率いるタイヨウの海賊団だった。彼らはジンベエとその仲間達を逃がすため、命を賭して盾となる。そんな同胞達を、仁義の男たるジンベエが放って逃げられる筈もなかった。

 ジンベエはルフィ達に、現状を脱するための帆船の操作手順を伝える。彼は“麦わらの一味”船員の1人として、タイヨウの海賊団と共にサニー号を逃がすためのしんがりを買って出たのだ。ジンベエの覚悟、そして「生きて戻る」という言葉を受け取ったルフィは、ワノ国での再会を誓い合うのだった。


【原作からの追加点・変更点】
※セリフの変更点は細かい差異が多いため、気になった箇所のみ紹介


・サニー号を沈めたと思い込んだダイフクの「あっけない最期だったな」というセリフ及び、モンドールの「よくやった兄弟達、麦わらの一味は殲滅した!」というセリフ追加。
 その他、その報告を聞いた各島の船員達の反応も追加されている。

・またブロワイエやモスカートと共にコンポートもシャンテ号に乗り込んでいる様子が加筆され、「ママに逆らう者はみんなこうなる運命さ」というセリフも追加されている。

・アマンドが瓦礫の山と化した自身の町で、麦わらの一味を仕留めたというモンドールからの報に無言のまま耳を傾ける描写追加。

・ケーキを食べたビッグ・マムの「幸せ」という恍惚のセリフの前に、「ペロリン」と口についたクリームを舐め取るセリフ追加。

・ワダツミが自身の口内にサニー号を匿う際、キャロットの「食べられる!」という悲鳴追加。

・オーブンの“熱海万来ねっかいぎょらい”を受けたワダツミの身体が、徐々に黄色く熱されて行く描写追加。

・ワダツミがサニー号を手放した後、サニー号目掛けて放たれる砲撃からの盾となり立ち塞がるシーン追加。

・サニー号を逃がすために立ちはだかったアラディンが、“海流一本背負い”により敵船を破壊するシーン追加。

・ルフィ達を逃がさんとするオーブンが、“熱海温泉”により攻撃を仕掛けるシーン追加。だがその際、オーブンに対しアラディンが“撃水”を放ち、攻撃を中断させている。

・自身の前に立ちはだかるアラディンに対する、オーブンの「ママの傘下に入っておいて 裏切りに継ぐ裏切り……お前らはもう 生きるに値しねェ!」というセリフ追加。

・上記セリフの後、オーブンが能力によりアラディンの身体を燃やし尽くそうとするも、アラディンが銛を振るい炎を払いのけるシーン追加。
 またアラディンの「死して本望。だがここは通さねェ!」というセリフ追加。

・原作に存在したアラディンがオーブンに対し魚人空手を叩き込むシーンにて、その時の技が“四千枚瓦正拳”である事が判明。

・サニー号の護衛に回ったタイヨウの海賊団に対し、ダイフクとスムージーが臨戦態勢を取る描写及び、ガレットが艦隊に向けて砲撃命令を下す描写が追加。

・ジンベエがサニー号を逃がすためのしんがりとなる事を告げた際、スムージーやダイフクがタイヨウの海賊団に対し斬撃を繰り出す描写追加。

・ルフィ達を追い詰めるべく海を進むビッグ・マムとペロスペローの乗るアメ細工に、「殿様アメガエル」という名称が追加。

・麦わらの一味の行く末を心配するシフォンの、「でも大丈夫 また会えるわよね ナミ!」というセリフ追加。

・オーブンとの戦闘時、アラディンが海中から上空へと跳び出し、下降と共に拳を振るうシーン追加。それに対し、オーブンも“熱風拳”で対抗している。

・上記シーンにより、オーブンの技を受け切れずにアラディンが吹き飛ばされてしまうシーン追加。
 だがその際、駆けつけたジンベエが肩を貸し、「わしは麦わらの一味じゃ。あの船長を生かすため ここに残ったまで」と言うシーン追加。

・魚人達の本気の遊泳により海流を変えた際、サニー号とビッグ・マム海賊団の艦隊の間に大渦が生まれる描写追加。

・トットランドから脱出するモルガンズ達の乗る飛行船を動かすカモメたちが、ニュース・クーである事が明確に。

・「麦わらも候補の一人だ」と言うモルガンズの口から、ロー、ホーキンス、ドレーク、アプー、ベッジ、ボニー、ウルージ、キッド、キラー、ティーチ、ルフィの異名と名前がそれぞれ紹介された。
 なお、同じ最悪の世代でありながら、ゾロの名だけは呼ばれなかった。(同じく船長でないキラーの名は呼ばれている。)


【感想・妄想】

■コンポート「ママに逆らう者は皆こうなる運命さ」

 いたの!?
 お前乗ってたの!?

 原作じゃ、ルフィ達を追う艦隊に加わっていたと思ったらいつの間にかホールケーキアイランドに帰還しているという謎行動を取っていたコンポート姉さん。アニメでは前回シャンテ号の準備完了をモンドールに報告していたのに加え、今回はそのシャンテ号に自ら乗り込み、サニー号を追い詰めていた事が判明した。

 この辺りの動きを見る限り、コンポートがわざわざサニー号の捜索から踵を返し、本島へと引き返したのはクイーン・ママ・シャンテ号を動かす準備のためだったっぽい。
 シャンテ号はおそらく、ビッグ・マム海賊団の中でも最高峰の主砲を持つ戦艦。これだけの兵器をビッグ・マムの許可無しで動かすには、上位きょうだい達の権限が必須なのかもしれない。

 当初は麦わらの一味の追撃にあたっていたコンポートだが、「シャトーの崩壊も奴らの作戦だった」事を知ったモンドールが、万全の体制を敷くためにシャンテ号出動の権限を持つコンポートに帰還を要請したって感じかな。

 原作本編ではベッジ達に「化け物」の1人とされながら、全くと言って良い程に出番の無かったコンポート。アニメではその分、僅かながら活躍が描かれて良かった……って、肝心の戦闘能力は全然発揮されてないじゃねーか!
 コンポート姉さんの本気が見れる日は来るのか。



■ガレキの上のアマンドさん

 ただ一言、哀愁が凄い。
 とてもじゃないけど、勝者側の将の1人とは思えない姿に涙すら浮かんでくる。
 そらまあ、自分の治める町は壊滅してますからね。しかもそれが敵の手によるものではなく、自身の母であり自国の女王であるビッグ・マムの仕業だってんだから、やるせなさも一層深いものがあるだろう

 大丈夫やろか、アマンドさん。シフォンやプラリネよろしく、このままトットランドから出てっちゃったりしないやろか。
 そういや、のちのビッグ・マム海賊団再登場時に彼女の姿が見えなかったけれど、まさか……ね。



■サニー号を口に隠すワダツミ

 VIVRE CARDによって明かされたデータによれば、まずサニー号の全長は3900cm、高さが5600cm。
 対するワダツミの身長は8000cmなので、高さだけで言えばサニー号はワダツミの70%程の大きさとなる。

 ワダツミは異常なまでに顔がデカく、約2頭身ぐらいしかないので、顔の大きさを大体4000cmとする。つまりこの概算の時点で、なんとサニー号はワダツミの顔面よりも大きいのだ。
 アニメや原作の描写ではとてもそうは見えないが、データとして明確な数字が出てしまっている以上、これは否定のしようがない。

 当たり前の話だが、自分の顔よりも大きな物体を口の中に入れるというのは異常な事だ。一般的な人間で言うところのドッジボールを一口で頬張る様なもので、ハッキリ言って不可能だ。

 だが、ワダツミはやってのけた。
 アゴが外れようが息が苦しかろうが、マストの先っちょが刺さって酷い口内炎ができようが関係ないとばかりに口をガバッと開け、頬張ったのだ。
 そして更に、オーブンの炎を受けながらもサニー号の盾となり、身を挺して彼らを守った。

 まさに命懸けの救出劇。こんな覚悟を持った行動が、常人に出来ようか。否、出来ない。ならば何故、ワダツミはここまでの行動に出れたのか。それは行く当てを失っていた自分を受け入れてくれたジンベエへの恩義に報いるために他ならない。

 彼はルフィ達に負けて魚人島を追い出された後、港町のお供え物を勘違いして勝手に食うわ、恩返しのつもりで海底遺跡を島に引き上げれば遺跡で町を潰してしまうわで大迷惑のオンパレードだった。そんなワダツミを町民達と和解させ、更にお供を許してくれた張本人こそが、ジンベエだった。
 元は敵だったワダツミを迎え入れた、ジンベエの仁義の心。それがあったからこそ、ワダツミは命を張ってでも戦うのだ。

 ……しかしこの時のワダツミ、どう見てもサニー号の10倍ぐらいのサイズはあるな。
 サニー号が小さいのか、ワダツミがデカいのか。



■アラディン VS オーブン

 原作での戦闘描写が少なかったアラディンさんが、前回に引き続き大活躍!
 将星を除くビッグ・マム海賊団の中ではトップクラスの力を誇るオーブンとやり合う事で、その強さは十分にアピール出来たんじゃないかと思う。

 「撃水によりオーブンを怯ませサニー号を守る」「オーブンの目からファイアーを軽く払いのける」と言った見せ場で実力の高さを見せつつ、直接の拳のブツかり合いでは流石に敵わず弾かれてしまう……と言った描写となっており、劇中での格を考えた時のパワーバランスを崩さない程度に活躍を描いているのが、個人的に好印象。

 無理に強く描きすぎちゃうと、原作との齟齬が生まれたり、「一方のキャラを持ち上げる為に片方を弱めに描いている」みたいな印象にも繋がりかねないからね。何事もやりすぎは良くない。

 また、原作でオーブンに対し繰り出していた魚人空手の拳に、「四千枚瓦正拳」の技名が追加。これは革命軍の百段ハックがバルトロメオに対して繰り出したものと同じ技となっている。
 魚人空手の「~枚瓦正拳」は、名前からしても「技の威力に応じて枚数部分が変化する」技なので、両者の拳の威力は同等ぐらいのものだったんだろう。
 五千枚瓦正拳を使いこなすジンベエには匹敵しないものの、魚人空手の使い手としてはトップクラスの腕前って感じかな。戦闘面ではイマイチ良い所がないハックさんだが、アラディンと同等の使い手なのかもしれないと考えれば地味に凄い。今度どっかで模擬試合でも見せてくれへんかな。

 しかしアレね。かつては四千枚瓦正拳や五千枚瓦正拳の使い手と同じ船に乗っていたのに、今や東の海の片田舎で「千枚瓦正拳を使える」だけで威張ってたクロオビさん、今考えるとちょっと哀しい人やね……。
 どう足掻いても敵わない格上の存在を知っちゃってるからこそ、一時期は拳を捨てて武器に頼ってたんやろか。



■ワノ国で待ってる

 タイヨウの海賊団と共に、サニー号のしんがりを買って出たジンベエ。
 これはかつての仲間を放って逃げられはしないという気持ちも強かったのだろうけど、同時にやはりルフィを自身の手で生還させたいという思いもあったんだと思う。

 ルフィとジンベエの出会いはインペルダウン。あの時、ジンベエは「エースを救いたい」という一心で、ルフィに脱獄を頼み込んだ。だが結果、エースは頂上戦争の舞台にて戦死。
 これは「エースがサカズキの挑発に乗ってしまった」事がきっかけではあるが、直接の死因はと言えば、「ルフィを狙うサカズキの拳から庇った」事だった。そして同シーン、サカズキに狙われたルフィに最も近い場所にいたのは、他ならぬジンベエだったのだ。

 無論、別にエースの死の原因がジンベエにあるワケではない。だがあの時、誰よりも歯がゆかったのはジンベエだろう。彼はエースを救うためだけに、命を捨てるつもりで脱獄を決行した。にも関わらず、最も重要な局面で、彼はサカズキの攻撃に反応する事さえ出来なかったのだ。

 「失ったものばかり数えるな」と、ジンベエは言った。しかし彼自身、この2年の間に何度でも悔やんだ事だろう。あの時、自分が応戦出来ていれば。あの時ルフィの盾となれたのが、エースではなく自分だったならばと。

 そして今。再びジンベエは動く。エースと同様に、自分が命を預けるに値すると惚れ込んだ男のために。
 あの時の後悔があったからこそ、ジンベエは命を懸け、ルフィのためのしんがりを務めるのだ。



■最悪の世代

 モルガンズさんが語る、「海賊王」の候補達。
 その最悪の世代の面々を喜々として挙げるモルガンズさんだが……キラーも入ってるのね。船長じゃないのに。

 まあ彼も列記とした最悪の世代なので、名前が挙がること自体は良いんだが、だったらゾロも入れてあげましょうよ。
 キラーは良くてゾロは駄目なのか。それともモルガンズさんが、「“海賊狩り”は船長を差し置いて海賊王を目指す男ではない」という事を理解しているのか。逆に「“殺戮武人”はいつキッドを踏み台にして覇を唱えてもおかしくない」と考えているのか。
 永遠の謎である。(適当)



【登場した技】 
熱海万来ねっかいぎょらい
使用者:オーブン

 “ネツネツの実”の能力を応用した技の1つ。海面に手をつき、沸騰させた海水を海中の敵目掛けて飛ばす事で、高熱の海水で敵を焼き尽くす技。
 サニー号を口内に隠し、ナワバリから逃げようとするワダツミに対して使用。ワダツミの腹部を焼き貫き、サニー号を手放させた。


海流一本背負い
使用者:アラディン
※アニメオリジナルシーン

 サニー号を逃がすため、タイヨウの海賊団の面々と共にビッグ・マム海賊団の前に立ち塞がったアラディンが使用。
 敵のパドルシップに海水の塊を投擲し、破壊した。
 

熱海温泉ねっかいじごく
使用者:オーブン
※アニメオリジナルシーン

 タイヨウの海賊団の護衛を得てナワバリから逃げ出そうとするサニー号に対し、オーブンが使用。
 しかし、途中でアラディンからの妨害を受け、攻撃は中断された。


撃水うちみず
使用者:アラディン
※アニメオリジナルシーン

 “熱海温泉”によってサニー号への攻撃を仕掛けるオーブンに対し、アラディンが使用。
 その攻撃を中断させた。


四千枚瓦正拳
使用者:アラディン
※アニメオリジナルシーン

 オーブンとの戦闘にて、アラディンが使用。オーブンが防御のために構えた腕に向け、拳を叩き込んだ。
 原作でも同様のシーンは存在したが、技名が宣言されたのはアニメのみ。


魔人斬マジギレン
使用者:ダイフク
※アニメオリジナルシーン

 サニー号を逃がすために立ちはだかったタイヨウの海賊団に対し、ダイフクが使用した。


殿様アメガエル
使用者:ペロスペロー
※アニメオリジナル技

 “ペロペロの実”の能力によりペロスペローが生み出した、王冠を被ったカエル型の動くアメ細工。
 ビッグ・マムとペロスペロー自身を乗せ、ナワバリから逃げようとする麦わらの一味やジェルマ66達を追い詰めるべく海を走った。
 原作にも登場したシーンだが、“殿様アメガエル”の名称が登場したのはアニメのみ。


ヒート風拳デナッシ 
使用者:オーブン
※アニメオリジナルシーン

 海から飛び出し、上空より襲い来るアラディンに対抗するためにオーブンが使用。互いの拳をぶつけ合い、アラディンの身体を弾き飛ばした。



【声の出演】
ルフィ・・・・・・田中真弓
ナミ・・・・・・・岡村明美
サンジ・・・・・・平田広明
チョッパー・・・・大谷育江
ブルック・・・・・チョー
ビッグ・マム・・・小山茉美
ジンベエ・・・・・宝亀克寿
ベッジ・・・・・・龍田直樹

キャロット・・・・伊藤かな恵
モルガンズ・・・・加瀬康之
ステューシー・・・金月真美
ペロスペロー・・・内田夕夜
モンドール・・・・伊丸岡篤
スムージー・・・・勝生真沙子
ダイフク・・・・・咲野俊介
オーブン・・・・・木村雅史
シフォン・・・・・久川綾
ガレット・・・・・前田愛
モスカート・・・・一条和矢
ババロア・・・・・竹内良太
マッシュ・・・・・関根有咲
コンスターチ・・・鶴田真希
ヴィト・・・・・・岸尾だいすけ
アラディン・・・・長嶝高士
プラリネ・・・・・橘U子
ワダツミ・・・・・宮田幸季

部下海賊・・・・・宮崎寛務 深川和征
魚人・・・・・・・荒井聡太 ボルケーノ太田
         戸松拳也 宮部裕磨
         中村光樹
部下・・・・・・・坂井易直 三野雄大
         小野将夢
ナレーション・・・大場真人