新元号が発表される中、特に変わりもなくONE PIECE本誌感想です。
 ぶっちゃけ今回、本編12ページとボリューム少なめなんですが、映画の方に作業時間を持ってかれてるのかな。


 週刊少年ジャンプ2019年18号分の感想です。
 ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 


★もくじ
“月の印”の情報漏洩
ローとしのぶ
トの康は何物?
「日和」と「小紫」
 



“月の印”の情報漏洩

 湯屋へと押し掛けて来たドレークやホーキンスは、足首に「逆さ三日月」の印を刻んだ者を探していたが、どうやら既に印と札に関する作戦は全て筒抜けとなってしまっているらしい。

 当初の目標兵力は5000人という事だったけれど、しのぶの話では「よく集まって500人」程度の現状だった。その上に印を持つ者が次々と捕らえられていると言うので、いよいよもって兵力に関してはかなり絶望的になって来た感じがする。
 ヒョウじいが20年前の気力を取り戻して、何とか頭数を搔き集めて来ることになるのかな。


 では何故、これらの情報が漏れてしまったのか……という所だが、これはもう素直に「光月側の人物に内通者が存在する」もしくは「札を手にした狂死郎が計画に気付いた」という線が強そう。
 ベポ達が喋ってしまったという可能性もなくはないけど、話の流れ的に、まずないだろう。


 小紫の殺害時(仮)に札を手にした狂死郎だが、彼がその事をオロチに伝えたのか否かは不明。
 ただ、計画に関する証拠となる札そのものを、今も狂死郎が所持している(オロチに渡していない)という事は、札の件について特にオロチには話していないのかもしれない。

 そも、狂死郎が敵味方どちら、また狂死郎が小紫生存のトリックに絡んでいるのではないか、というのはともかく、自分の遊郭出身の遊女が、反乱の日取りを表す札を懐に忍ばせていた……などという事実、伝えた所で自分の立場を悪くする方向にしか行かないだろうから、黙っておくのは普通の判断だと思える。
 まあ、狂死郎はクイーンに直接連絡を取りつけられる人物なので、オロチを飛ばして大看板クラスに事を掻い摘んで伝え、ホーキンスやドレークを派遣させたのかもしれないけど。


 そも、錦えもん曰く札に描いた内容を暗号にしたのは、万が一敵の手に渡った時に計画が露呈しないため。ならば狂死郎が札だけを手にしたところで、その意味を読み取る事は難しい筈。

 ……何だけど、921話では錦えもん自身がこの札について「ワノ国に住む者なら理解できる」と言ってるんだよなぁ。
 札が表す内容については、別に「光月家の関係者にしか分からない暗号」というワケではない。

 これは「月の印が持つ意味」さえ頭に入れている者なら、暗号が何を示すのか理解できる筈、という事だったのだろうけど、ハッキリ言って三日月の模様から「光月」の名前へと行き着くのがそう難しい事とは思えない。

 足首に刺青を入れた光月派の人間は20年も前からいるワケだし、ウソップ達が足首を確認して札を渡していた様に、その刺青は人目につく様に刻まれていてこそ意味のあるもの
 1人2人なら気にも留められないだろうが、同じ場所に同じ模様を刻んだ者が何百人もいれば、すでに怪しまれていたっておかしくはない。
 その状況であの札が敵の手に渡ってしまえば、そこから光月家の復活や反乱に話が繋がるのは時間の問題だという気もする。

 
 ……と、刺青と札を使った伝達方法自体が中々のリスクを持っていそうな感じだが、光月側からの内通者がいるのだとすれば話はもっと早くなる。

 これに関しては、「ジャック達がゾウへと辿り着けた」事からも元々可能性があった。今回計画が露呈した事で、更に疑惑が高まったと言った感じ。

 何らかの理由で百獣海賊団側に寝返った内通者は、百獣海賊団に雷ぞうのビブルカードを渡し、それを元にジャックはゾウへと向かった。しかし結果、ジャック達がどれだけ探しても雷ぞうは見つからなかったため、内通者が渡したビブルカードが偽なのではないかと疑われ始める。焦った内通者は、札や刺青の情報を追加で流す事で、再び信用を得ようとした……みたいな感じかな。


 内通者がいるとして、怪しい人物がいるとすればやはりカン十郎と菊あたりかな。
 特に菊は、錦えもん達と別行動でワノ国に残っていた事を考えると、百獣海賊団と繋がりを持つタイミングは十分にあったと思える。
 微妙にわざとらしい錦えもんへのアタックっぷりも、演技だったと思えばしっくり来るんだよなぁ……(個人の感想です)


 「ジャックがゾウに辿り着いた手段」と、「印と札の情報漏洩の原因」が別のものなら、正直ハートの海賊団も怪しいっちゃ怪しいのよね。

 ハートの海賊団には、ゾウ時点ではルフィとの同盟に反対していたイッカク、クリオネ、ウニという人物がいた事が、83巻のSBSで触れられている。
 納得のいかない同盟が更に巨大化し、そのまま四皇との戦いにもつれ込む……という状況になった今、ハートに見切りをつけて百獣海賊団に取り入ろうとしても、何もおかしな事はないと思う。

 ……ただこれ、あくまでも没ネーム内で語られていたワンシーンなので、そもそもこの「同盟に反対する船員」という設定自体が、本編には生きていない可能性もあるのよね。
 そんなに大事なシーンになるなら没にならないだろうし、同盟内の不和がクローズアップされる可能性は低いのかな。




ローとしのぶ

 ドレークやホーキンスから逃げ延び、えびす町へと戻ったサンジ達……だが、湯屋での覗き事件のおかげで早速ナミさんにボコボコにされるサンジ君であった。
 もはやドラム島のウソップを越えたな……。混浴なんだし、正面から入ってればここまで怒られなかったかもしれんのにね。


 一方で同じくえびす町内では、ローとしのぶが激突。
 しのぶは作戦の流出原因を、囚われたベポ達が口を割った事にあると考えているらしい。

 けど普通に考えたらそうなりますわねぇ。
 ローとしては「ありえない」と考えている様だけれど、ハッキリ言って身内の贔屓目は多分に入っているだろうし、読者側からしても正直ベポ達の人物像はそこまで見えていないんで、絶対に喋らないのか?と言われれば、よく分からない。
 ゾウでのジャック戦で傷だらけになりながら戦ってはいたけれど、アレは「そもそも喋るべき雷ぞうの情報を持っていなかっただけ」とも考えられるし。
 まあ、メタ的な読み方をするなら、ローが違うと言うなら多分違うんでしょうけど。


 囚われたベポ達を信じ、救い出そうとするトラ男くん。冷酷キャラ路線へのイメチェン週間、あえなく失敗です。おめでとうございます。
 もはや何話か前に言っていた「ウチはドライなんだ」発言は見る影もない仲間想いっぷり。まあローにとっちゃ、あの3人はロシナンテの死後に初めてできた幼馴染みたいなモノなんで、その分入れ込み方も違うんだろうけど。


 そんなローに食って掛かるしのぶの気持ちも、これまた理解できる。
 ハッキリ言うとこの同盟、利害の一致から手を組んでいるだけなんで、向いている意思の矛先自体は結構ズレがあるんですよね。

 侍・ミンクの目的は「ワノ国を取り戻す事」。もちろん、モモの助をはじめ「カイドウを倒しておでんの仇を討ちたい」という思いは強く持ってはいるが、カイドウやオロチを倒すことは基本的にはワノ国を取り戻すための手段に近いと思う。

 一方で、ルフィやローの目的は、これは完全に「カイドウの撃破」1本。だからと言って「遊びでやってる」ワケではないのも当然だが、しのぶ達の様に20年間も耐え忍んだ末の決起の時……という重みに比べれば、軽いと思われても仕方のないところはあるかもしれない。

 ギャグ要因的な側面の強かったしのぶだけに、忍の世界を生き抜いてきた経験から来る非情さや、決戦に対する思いの強さが見られたのはぐっと来るものがあったかな。




トの康は何物?

 これまでも素性のよく分からない人物であったトの康が、今回で一気に重要キャラっぽい雰囲気になってきた。
 
 トの康と言えば、極貧生活の只中にあるえびす町の住民であるにも関わらず、ゾロのわさび寿司の代金を立て替え、町まで案内してくれた人物。
 本人によれば、ゾロを助けたのはそこに金の匂いを感じたかららしいが、何か裏の思惑を感じないでもない。


 しのぶやカン十郎とは顔見知り……なのか、単に情報通なだけなのかは分からないが、彼らの名を一発で言い当てて見せた。にも関わらず、当の2人はトの康の姿を見ても、彼が何物なのか分かっていない様子。

 以前は鎌ぞう=傳ジローなのかと思っていたが、その鎌ぞうが思った以上にアッサリとやられてしまったため、トの康の正体が実は傳ジローである可能性もある。
 シルエットとは余りにもかけ離れた姿になっているが、逆にそれなら、カン十郎達がその正体に気付けなかったのも無理はない、という事にもなる。

 しかし、「始まるのかい?“決戦”が…!!!」というセリフからは「トの康は光月家寄りの人間」といった印象を受けるが、これが実際にはフェイクという事も考えられそう。
 内通者が存在する可能性もある以上、光月家側の人間に近づいて情報を引き出そうとする人物がいたって、おかしくはないからね。


 そも、トの康には拭い切れない疑惑もある。
 ゾロが持つ秋水を盗んだ牛鬼丸は、日和の話では「住処不明」かつ「おいはぎ橋を渡ろうとする者から武器を奪う」という僧兵らしい。

 しかし、ゾロが刀を盗まれたのは、橋の上ではなくえびす町。
 普段のナワバリとはまったく違う場所にわざわざ出向いてきているのだから、これは「ゾロが秋水を持っていること」および「ゾロがえびす町にいること」を知った上での行動だと考えなければ不自然だと思う。

 なら、一体どこからその情報を得たのか。
 これまでもゾロは、都で奉行を斬ったり、宿で狂死郎一家に手を出したりと色々やらかしているが、少なくとも「彼が今えびす町にいる事」を知っている人物は、仲間達を除けばトの康を始めとするえびす町の人々しかいなかった。
 牛鬼丸がゾロと秋水に目をつけてえびす町を訪れたのなら、その情報の出所はトの康ぐらいしか考えられない。

 牛鬼丸の行動自体が意味深なので、「牛鬼丸と繋がっている=敵」という事にはならないが、少なくとも今すぐに信用していい味方、とはちょっと思いにくいかな……?


 トの康の正体は傳ジローよりも、都の金持ちから盗んだ金を貧乏人に振りまくという丑三つ小僧の方がそれらしい気はする。
 狂死郎も含め、なんだかワノ国編は単純に「光月 VS 百獣・オロチ」の構図に収まるストーリーではなくなりそうな雰囲気ね。




「日和」と「小紫」

 名前だけは以前から出ていた人斬り鎌ぞうだが、重要人物なのかと見せかけて意外とアッサリと倒れてしまった。
 再登場はあるのかな……?
 あまりにもシルエットが似通っていた傳ジローとは、無関係の別人って事で良いのかしら。

 鎌ぞうとゾロの戦いにしつこく横槍を入れていた牛鬼丸も、空腹や鎌ぞうとの戦いで負った傷から倒れてしまったゾロにトドメを刺すことなく、意味深な笑みを浮かべて立ち去った。
 彼の立ち位置はどこなんだろう……?

 和道一文字や三代鬼徹を奪う事もなく、鎌ぞうの持っていた鎌だけを持ち去った辺り、この時点では「ゾロを始末する」という意志は持っていない様に見える。少なくとも、オロチに与する人物ではないのかな、という感じ。
 鎌ぞうの鎌は奪っているのだから、「自分が倒した者の武器しか奪わない」みたいなプライドとも違うだろうし。

 どうも前回の口ぶりだと、ゾロが「自らの刀を黒刀へと成らせる」ことに期待している感じもあるんですよね。
 光月側でもオロチ側でもなく、ワノ国の「刀」に関する人間……天狗山飛徹あたりと関係のある人物なのかしら。 



 彼らとの戦いによってゾロが負った傷は思った以上に深かった様で、彼が助けたトコを連れた女に治療を施してもらう事に。
 ガマの油で治そうとしてるらしいが……それ、ウソップが売ってたヤツでしょ? ホントに効くんだろうか、そんなモン。

 トコはトコで、こんな時でもやっぱり笑い上戸のまま。
 サンジ達には大ウケした「おトコだけど男じゃないよ」というお得意のギャグを放り込むも、ゾロの琴線にはまったく触れなかったらしい。

 あ……そうよね、やっぱ別に面白くないよねコレ。
 なんかサンジ達はアホみたいに笑ってたから「私のツボがおかしいんか?」とか思ってたけど、ようやくマトモな反応が見れて嬉しかった。



 さて、以前モモの助の口から「生きている筈」と語られていた妹・光月日和だが、このトコを連れて逃げていた女こそが光月日和であるという事が明かされた。

 ついでに容姿のそっくり具合……そしてトコを連れて逃げているという点からも、「日和=小紫」という図式もついに確定なのか?
 いやいや似ているだけの別人なのか?


 ……と本来ならひと盛り上がりするべきなのかもしれないが、本編の最終ページから更にぺらっと1枚めくったところには、「ワノ国動乱地図」なるページが存在する。
 これは他方に展開しているワノ国編の物語を整理すべく、「今ワノ国のどの場所に誰がいるのか」を詳しくまとめたもの……なのだが、その中に描かれている「鈴後」の土地には……。


・ゾロ
・おトコ
小紫


 ……以上3名の名が画像付きで書かれているのでありました。
 先走っちゃってる!!


 ぶっちゃけ下手すりゃ完全なネタバレで大問題になりかねないヤツな気もするが、まあどの道バレバレだったし、作者的にもそこまで隠す意図がなさそうなので大丈夫なんだろう。

 ともかく、これにて日和の生存および小紫=日和というのが確定。
 しかし改めてみると、「小紫」としての彼女と「日和」としての彼女は、内面的なところだけを見るとほぼ別人に思える。

 これは単純に「小紫としての悪女的な振る舞いは、遊郭で生き残るための芝居である」という事なのかもしれないが、ケガをしたゾロの腕を引っ張ってしまうなど、素の人格はちょっと天然っぽさが混じっている。
 こういうの、演技で隠せるもんなのかな……? 似た様な立場にあったビビなんて、ウェンズデー時代も天然っぷりは全然隠せてなかったしな。

 この世界にはキャベンディッシュの様な二重人格者も確認されているので、日和もそのパターンだったりしないだろうか。
 光月家のために力になりたいという思いと、現代に取り残され辛い20年を送る羽目になった事からくる兄への複雑な感情。それらが分断され、悪辣な部分が前面に押し出されて構築された人格こそが小紫であった……みたいな。
 


 というかぶっちゃけ、小紫のあの性格を「ただの演技」で切り捨てちゃうのは惜しいんですよね。

 国のために身を犠牲にして尽力する良い子ちゃんキャラ、正味そんなに面白くないですし、個人的に。
 むしろ「日和としての性格」の方が演技で、モモの助を探しているのも「自分を置き去りにして20年の時を飛んだ兄への復讐」みたいな目的だったりしたら、めっちゃ面白そうなんだけど。


 あと日和さん、協力を仰ぐにしても人は選んだ方がいいと思うの。
 バレたら一大事だから。ちょっと助けてくれただけの外国人に、サラッとお願いして良い事じゃないから。

 現代日本に生きてたら外人の募金詐欺とかに引っかかってそうな日和さんの明日に期待しましょう(謎)。