■第7章 “母と兄”■
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町を襲うロボットを退け、本来の目的であった「海賊の増加原因」の調査に取り掛かろうとするルフィ。
だがアイザックと会って以来様子のおかしいジャンヌは、「すぐ戻るから」と言い残し、1人どこかへと走り去ってしまう。
調査を行おうにも、あのルフィが1人でまともな調査など出来るハズもない。
困ったルフィは、ひとまずジャンヌがよく行きそうな場所をあたり、彼女の姿を探す事に。
ジャンヌが行きそうな場所……。
彼女と初めて出会った海岸やソーギョク町を除けば、思い当たるのは1つしかない。
(「ONE PIECE WORLD SEEKER」より)
彼女の母が眠る墓場。
その場所に、やはり彼女はいた。
島の事や、兄の事。母の墓の前で、それらについて考えたかったというジャンヌ。
もし母だったら、どうしていただろう。
母が殺されなければ、島も昔のままでいられたのか。
そう、ジャンヌは呟いた。
ジャンヌの母は、海賊に殺されたのだと言う。
12年前、島を襲った海賊達。
彼らは皆、この島に眠るというダイナ岩を手に入れるため、この島を訪れ荒らし回ったのだ。
……ダイナ岩!?
ダイナ岩と言えば、劇場版「FILM Z」に登場したあの鉱物じゃないか!!
海軍基地よりゼファーが盗み出した、酸素と反応する事で大爆発を起こすというあの岩……。かつてゼファーが、エンドポイントを破壊し新世界を崩壊させるために使用したあのアイテムが、この島に眠っているというのか。
あの古代兵器にも匹敵するという破壊力を持つ鉱物は、全て海軍本部によって厳重な保管がされていたハズ。
成程……という事は、そもそもこの島が海軍によって管理される様になったのも、ダイナ岩の産出地であった事が理由となっているのかもしれない。
ダイナ岩の採掘方法は、島のリーダーだけが受け継ぐ秘密なのだと言う。
島のリーダーだったジャンヌの母は、その採掘方法を知っていた。しかし彼女は、その秘密を次代のリーダーへと引き継ぐ事なく、命を奪われてしまった。
これにより、ダイナ岩を採掘する術は、永遠に失われてしまったのだ。
しかし、ダイナ岩は古代兵器にも匹敵する代物。採掘手段が失われた事を知ってか知らずか、今も数多の海賊が、ダイナ岩を求めて島を訪れる。
そんな海賊達から島を守る為、この島はジャンヌの母に代わり、海軍達が統治する事となった。
かつては「ジュエルアイランド」と呼ばれ、鉱石の採掘で賑わっていたこの島。海軍が統治する様になった今では監獄も作られ、「ジェイルアイランド」の名で呼ばれる様になる始末だったのだ。
ふむ……ダイナ岩の採掘手段は島のリーダーだけが知るとな。
確かに、あの酸素と反応するだけで島一つを消し飛ばしてしまう程の効能を持つ岩を、普通の手段で採掘するのは難しいハズ。一子相伝の特別な方法を用いなければ、まともに採掘を行う事はできないんだろう。
しかしFILM Zにおいて、ゼファーは海軍から、紛れもなくあのダイナ岩を手に入れた。海軍本部は、あのダイナ岩を海賊達からエンドポイントを守る為の手段として所有していたのだ。
つまり、海軍達がこの島を統治する様になった12年前よりも昔から、この島と海軍には繋がりがあったという事になる。
12年前のジャンヌの母の死により、ダイナ岩を新たに掘り起こす事は不可能となった。ならば、劇場版にてゼファーが使用していたダイナ岩は、それ以前に採掘されたものという事になる。
そしてそれは、恐らくジャンヌの母よりももっと大昔のリーダーによって採掘され、海軍本部へと横流しされたものだったのだ。
だがゼファーによって、ダイナ岩は奪われてしまった。
岩を狙う海賊だけでなく海軍もまた、海賊と戦うための手段として、この失われたダイナ岩の補充を行いたいハズ。この島が海軍の統治下にある今、海軍は多少の無茶をしてでも、ダイナ岩を手に入れたいんじゃないだろうか。
「島に当時の姿に戻って欲しい」と願っていたジャンヌは、兄であるアイザックが、島の統治者として戻って来た事が嬉しかったのだと言う。
当時の島を知る兄なら、島を元の姿に戻してくれるのではないかと。
だが、現実は残酷だった。
アイザックは島を元通りにするどころか、自ら新たな監獄を作る決定をした。
監獄を作ることで島には仕事が増え、人も増え、商売も盛んになった。
だが、それによって豊かになったのは、ほんの一握りの者たちだけだったのだ。
海軍の無茶な統治に反発する者が現れ、島は“海軍派”と“反海軍派”に分かれ、争いを始めた。心を痛めたジャンヌはアイザックに会いにいくも、兄はまるで取り合ってはくれなかったのだと言う。
私たちはもう、家族ではないのかと嘆くジャンヌ。
だがルフィは、その言葉を否定する。
家族は、ずっと家族。
兄と会う事はなかなか出来ないルフィだが、それでも彼は、兄達の事を「家族じゃない」と思った事など、なかったのだ。
「私の兄さんは そんな風に思ってくれてるかな……」
不安げに呟くジャンヌ。
ルフィは、「お前はどう思ってんだ?」と尋ねる。ジャンヌ自身は、アイザックの事を、どう考えているのか。
答えは決まっていた。
ジャンヌにとって、アイザックは今も家族。掛け替えのない、大切な兄だったのだ。
「だったら信じてやれ!」
そう、ルフィは彼女を励ます。家族であるジャンヌが信じてやれずに、誰がアイザックの事を信じれやれるのかと。
ルフィの言葉に、ジャンヌの意志は固まった。
兄を信じる。彼女はそう決断するのだった。
(「ONE PIECE WORLD SEEKER」より)
だがその頃、当のアイザックは、閉ざされた部屋より何者かとの通信を行っていた。
電伝虫を通じて彼に「報告」を伝える者。
その者によれば、じきにこの島に、ジェルマ66が到着するのだと言う。
ジェルマ66は、アイザックの依頼により派遣されたらしい。
更に聞けば、その行動はアイザックの独断。
彼は海軍に感知されないよう、ジェルマ66を呼び寄せたのだ。
そして報告によれば、同時にCP-0もまた、この島に向かっているという。
これはアイザックの手によるものではなかった。世界政府からの特命だったのだ。
その報を聞いたアイザックは、世界政府もまた“あれ”を欲しがっているのだと推定するのだった。
アイザック、やはり裏で何か動いていたのね。
しかしどうも、穏やかな方向ではなさそう。彼を信じるというジャンヌだが、その思いは裏切られてしまうのか……?
そして何より、ジェルマ66とCP-0の登場!
これは中々にテンションの上がる瞬間。ジャンヌやアイザックも良いキャラではあるんだけど、やっぱりキャラゲーとしては、原作キャラが絡んで来た時が一番「おっ」ってなるよね。
まずジェルマ66は、金で動く雇われ戦争屋。
同時に(WCI編までは)世界政府加盟国の1つでもあるので、海軍であるアイザックの依頼を受ける事そのものについては何の問題もない。
ただ言えるのは、彼らは基本的に非人道的な手段を用いて依頼人を勝利に導くため、彼らがアイザックの指示によりやって来てしまった事でジェイルアイランドに良い結果が訪れるという事は、まあ難しいだろう。
そしてCP-0。
世界政府の指示によって島を訪れるという彼らだが、政府の欲する“あれ”というのは……やはりダイナ岩なのかな?
上でも書いたように、軍事力としては最高ランクの破壊力を持つ代物だからな……政府が欲しがるのも無理はない。
アイザックの口ぶりからして、ダイナ岩の採掘場は彼が管理しているんだろうか。
しかし……まさかゲーム版の物語にダイナ岩なんてブツが絡んで来るとは。
ぶっちゃけもう忘れ去ってた人も多いんじゃないの。FILM Zの公開、いうてもう6年以上前の事ですからね。
やっぱこういう、原作やその他メディアに登場していた要素が入って来ると、オリジナルストーリーにも「原作との繋がり」が見えて来てグッと面白くなってきますね。