週刊少年ジャンプ2019年20号分の感想です。
 ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 


★もくじ
光月日和の20年
ルフィ&ヒョウじい VS ギフターズ
触れずに倒す武装色  



光月日和の20年

■日和の素顔

 ゾロが助けた女の正体は、モモの助の妹である光月日和だった。


 ……というところから始まった今週号なんですが、いやもう、正直ね?

 小紫としての性格と別人過ぎて笑いが出てくる。


 トコの事を「私の素顔を知る」と称している辺り、こっちの天然っぽい性格の方が素なんでしょうね。
 小紫としての悪女顔は、演技による産物だったと。


 ……できるのか? そんな芝居。

 こっちの日和としての性格が「素」なら、そこまで器用に自分の性格を偽れる人間には見えないなぁ……。
 そんな事できるなら、イヌネコが生存してると知った時に表情を保つぐらい、余裕でしょ。ようやく出会えた味方らしき人物を前に、気が緩んでいる状態なんだろうか。


 父母を失い、生きる気力さえ失くしていたという日和さん。彼女が過ごした20年という歳月は、決して楽なものではなかったと思う。
 片やモモの助は、家臣達と共に時を渡り、何も苦しむ事なく20年の時を一瞬で越えてしまった。しかも自分だけが残されたのも「血を絶やさないため」という、単純に言ってしまえば「親の都合」でしかない理由。

 この状況……正直、モモの助を恨む気持ちぐらい、どこかに芽生えてないと不自然なレベルじゃねぇかなあ。
 一切の恨みを持たずに20年過ごして来たのなら、人間出来すぎてて怖いよ、逆に。

 いや、恨みの矛先としては間違ってるのも分かるんですけど、カイドウなんて強大すぎて、憎んでどうにかなる相手じゃないですし。
 どうにもならない状況で出てくる「恨み」って、まずは身近な存在に向くものな気がするし。


 その辺を考えると日和さん、現時点では光月家にとって味方となる人物とは断言できないのでは? っていう印象が、今回でより強くなったのでした。
 良い子すぎて、逆にね。

 トコに全てを打ち明けているのも、何かの時にトコを利用する目的があるのかもしれない。
 そも、「オロチを笑えば殺される」という状況において、ゲラのトコを宴席に連れて来ていること自体がまずおかしい。
 アレは自身の死を偽装して遊郭を脱するため、あえてトコを同席させたと見るのが自然であり、そういう意味では日和はすでにトコを利用しているとも取れるし。

 20年間の生活の中で、すっかり心を歪めてしまった日和。彼女は恨みのままに、兄モモの助に牙を剥く――が、自身が利用し踏みにじろうとした筈のトコの言葉により、日和は本来の優しさを思い出し、踏みとどまる……みたいな流れ、いかにもありそうじゃない?

 まあ、「いかにもありそう」がそのまま実現しないのがONEPIECEなんですけど、割と。

 
 
■日和のお札

 ……あれ、日和、まだお札持ってるの?

 宴席の場において、狂死郎が手にした札。あれは恐らく、小紫を斬った際に彼女の懐から滑り落ちたもの……だと思うのだけど、それで行くと日和は札を2枚所持していたって事になるのかしら。
 狂死郎が今も札を持っているのは、前回で確認済みだし。

 まあ別に、花の都では配られまくってる札なのだし、複数枚所持していたっておかしくはない……のだけれど、あえて複数持っていた理由とか、描かれるのかしら。
 1枚目の札が狂死郎の手に渡ったのが日和の意図によるものなら、狂死郎と自身の分で2枚持っていたのも分かるんだけど。

 そも、外で1人になること自体が稀っぽい花魁様が、どのタイミングで札を入手できたのかも気になるところ。
 正味自分は完全に「日和悪女説」寄りの視点になってるモンで、札や刺青の秘密がバレたのも日和の仕業なんでは?っていう気持ちになっている。



■赤鞘九人男

 今までハッキリとは言われていなかったと思うのだけれど、今回でイヌアラシとネコマムシが赤鞘九人男に数えられる事が確定。
 傳ジローについてはまだ謎だが、日和曰く河松はマジもんの河童らしい。
 悪魔の実とかでもなく、「妖怪」だそうな。

 920話のイヌアラシの回想内で、迫害を受ける少年イヌアラシ&ネコマムシの横に、彼らと同じぐらいの背丈で笠を被った人物がちらっと描かれてるのだけど、やっぱりこれが河松だったのかしら。
 ミンク族同様、ワノ国においても「異形」の存在であったために迫害を受けていたと。

 背丈からしてイヌアラシ、ネコマムシと同じく「シャンクス達と同じ見習い世代」だったのだとしたら、20年経った今でも現役の年齢ではあるかな。
 毒魚だけを食らって生きている状態なんで、フルに発揮できるかは分からんけど。


 ……あ、そういえばしれっと「菊の丞」とかいう名前が登場してますね。
 以前から匂わされていた事だけれど、これで菊が実際は男性であるというのはほぼ確定で良いんだろうか。

 ただまあ、菊に関しては正直あまりキャラクターとしての掘り下げがされていない状態なんで、性別がどっちだとしてもそこまで驚きはないかな……?
 今になって「実は男でした」をやっても、そんなに面白くなる筋道が浮かばないんですが、どう演出していくんだろう。




ルフィ&ヒョウじい VS ギフターズ

■マジロマン、アルパカマン

 以前ルフィにツバ吐きまくってたアルパカマン、まさかの戦闘員化。
 ツバを吐きかけて攻撃しているが、これは……攻撃になるのか……? アーロン一味のチュウが使う「水鉄砲」みたいなもんなんだろうか。

 ついでに「アルパカ剣法」とかいう謎の剣術も披露していらっしゃる。お前は金魚剣術のギャロか。
 クイーンにも全然期待されてないみたいだったし、所詮は前座という感じなんだろう。クイーンさん、前は「おれが出ればすぐに終わる」みたいに言ってたダイフゴーの言葉を否定してなかったけど、ルフィの実力はきちんと理解しているのね。


■海楼石の銃弾

 結果の方は燦燦たる有様だったマジロマンだが、彼は海楼石の銃弾というレアアイテムを使用してきていた。

 海楼石の銃弾と言えば、映画FILM Zで黒腕のゼファーが使用していた産物。
 最近発売されたゲーム、ワールドシーカーなんかではモブ敵が皆して所持しているというスーパーインフレ状態になっていたが、原作本編では初登場かな。
 一応、ベッジがシーザーへの脅しのために「持っている」と嘘をついたことはあったけど。

 海楼石を釘の様に小さく加工できるのはワノ国だけという事だったが、銃弾に関してもワノ国でしか製造できないとの事。
 ……という事は、ゼファーが使用していた海楼石の銃弾も、元はワノ国で作られたものという事になる。

 彼の腕に装着された、海楼石で出来た兵器バトルスマッシャーは軍の科学者によって作られたものなのでワノ国とは無関係だろうが、銃弾の方が海軍時代から使っているものなのであれば、海軍がワノ国の加工職人と繋がりがあるのはほぼ確実なのでは……?

 政府と取引をしていたドフラミンゴを経由して流されていた可能性もなくはないが、カイドウがわざわざ海軍の戦力を増強する様な取引を良しとするとも思えない。
 ワノ国以外での海楼石の所持者が政府関係者に集中しているのもそうだが、やはり世界政府は元々ワノ国との取引関係にあった、もしくはワノ国出身の加工職人が、軍の内部にいるという可能性が高いんじゃないだろうか。
 



触れずに倒す武装色

 おお……カタクリ戦で得た「未来を見る見聞色」がきちんと生かされている……。
 ぶっちゃけ大した伏線もないままその場で会得した能力だったので、カタクリ戦が終わったらこのまま放っとかれるのではと危惧してたんですが、杞憂だったみたいですね。

 そしてヒョウじい、意外にも機敏ですね。ルフィの指示があるとはいえ、それを実行して回避しきれるとは。
 昔取った杵柄というか、ヒョウ五郎時代の実力は死に切ってはいないらしい。と言っても、普段の労働では体力面で限界を迎えていたんで、「動く事はできても持続力に欠ける」と言った感じなのかな。

 しかもこのヒョウじい、なんと覇気使い。
 かつてレイリーや戦桃丸が見せた「触れずに攻撃を繰り出す覇気」をルフィが会得する事に繋がる、超重要人物なのでした。

 
 「良い刀は斬りたい時に鉄をも斬り 斬りたくない時は紙すら斬れぬ」
 「昔…“豪剣”でならしたてまえ」

 今回のヒョウじいの台詞、これはもう明らかにダズ戦でのゾロの回想に登場した、コウシロウの教えを踏襲したセリフになっている。

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(「ONE PIECE」 21巻 194話より)

 「世の中にはね 何も斬らない事ができる剣士がいるんだ」

 あの時、コウシロウが言った「何も斬らない剣士」が特定の人物を指すなら、若かりし頃の花のヒョウ五郎こそがその人物だったのかも……?と思ったら、めちゃくちゃテンションが上がった。
 21巻の発売日、2001年末ですってよ。17年越しの伏線回収ですよ。こういうのが来るからONEPIECEはやめられない。

 
 ただまあ、一応言っておくとコウシロウがワノ国出身か否かは、まだハッキリとはしていない。
 が、可能性は高い様に思う。

 VIVRE CARDの出身地情報は信憑性が薄いので置いておくにしても、92巻のSBSでは「何十年か前に、ワノ国の船が“東の海”に到達した」「その時の子孫が、皆さんの知るとある人物」と記載されている。

 まずこの「とある人物」というのが指すのは、恐らくくいなの事だと思う。コウシロウは重要そうな登場こそ何度かしているものの、地味に劇中では名前すら呼ばれた事がなく、マイナーキャラの1人といった感じだろう。
 「必要のない情報は覚えなくていい」というスタンスを取っている尾田さんが、コウシロウに対して「皆さんの知る」という言葉を使うかと言えば、微妙なところだと思う。

 そしてワノ国の船が東の海に到達したのは「何十年か前」との事だが、コウシロウの年齢が51歳である事を考えれば、25年~30年ぐらい前に20代でワノ国を発っていれば十分に計算が合う。
 「子孫」と言うと2~3代以上は離れた子の事を指すイメージが強いが、広義の意味としては文字通り子供や孫のことも「子孫」と呼ぶようなので、問題はない。


 もっと言うと、このヒョウじいこと花のヒョウ五郎は、コウシロウの師匠だった人物なんじゃないだろうか。(または憧れの剣士?)
 あまりにも類似している「剣」の教えの内容もそうだが、ゾロがモモの助に教えた「スナッチ」という掛け声。
 あれが「たまたま似ているだけ」の言葉ではなく、九里の方言に由来する掛け声なのであれば、ゾロがそれを知っているのはコウシロウから教えて貰ったからである可能性が高いと思う。

 ヒョウ五郎は皆に慕われる人物であったようだが、あくまでも彼はヤクザ。
 九里大名の跡継ぎであるモモの助が使うには相応しくない粗暴な言葉でも、ヤクザが好んで使う分には不自然もない。

 「スナッチ」は元々ヒョウ五郎が使っていた言葉で、それを弟子であるコウシロウが真似、数十年の時を経た遠い海で、ゾロへと伝わって行ったんじゃないだろうか。