週刊少年ジャンプ2019年21号分の感想です。
 ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 


★もくじ
トラ男、えびす町を発つ
“小紫”の被害者
トの康の人物像
兎丼の囚人達  




トラ男、えびす町を発つ

 捕らわれたベポ達の件をめぐり、ローはしのぶと口論になった。
 結局、彼は単独で町を出て行ってしまったらしい。
 「仮に自分がベポ達の立場だったら」の話をするナミとウソップが、なんとなく初期っぽいノリ。
 弱小トリオ、最近集結しないものねあんまり。

 
 ベポ達を救いに行ったのなら、向かう先は彼らが捕まる羅刹町

 一緒に捕らわれた侍達は手錠をかけられていない様だし、仮にベポ達だけに海楼石の錠が付けられていたとしても、
 オペオペの能力なら海楼石の錠を切断できるっぽいのはパンクハザードにて描写済み。
 彼らが囚われた牢は「見世物小屋」として衆目に晒されているため、
 ローのシャンブルズの能力があれば、救出自体はそう難しくなさそう。
 
 ただ936話におけるサンジの見立てでは、
 ベポ達を捕らえたこと自体がローを引きずり出すための策であるかもしれないという事だった。
 それが事実なら、状況はあんまり良くないかもしれんね。


 そもそもベポ達は出番こそイマイチ薄いが、
 2年前の時点でレイリーの覇王色を受け切る事ができる程度には実力者であった。
 多少手加減した覇気だったのかもしれないが、レイリー自身が「今のを難なく持ちこたえるとは」と称賛の言葉を送っている辺り、
 半端な実力で意識を保っていられるレベルのものではなかったんだろう。シャチは若干危うかったけど。

 あれから2年が経ち、更に実力を伸ばしていると思われる彼らがあそこまでボロボロになるまでやられている事を考えると、真打ち達では少し役者が不足していそう。
 下手すりゃ飛び六胞クラスが相手だった可能性もあるんじゃないかな。
 ゾウでのジャック一派との戦いでは不覚を取った彼らだが、アレは毒ガス兵器「KORO」の影響が強かったんだろうし。

 ローの能力なら救出自体は容易とは言っても、
 以前の様に海楼石の釘なんかをブチ込まれて能力が使えなくなってしまえばアウトだし、
 その状態で飛び六胞との戦いにでもなれば、流石に勝ち目は薄い。
 仲間の事で平静さを失っている今のローに、敵方が用意してくる策をどの程度までサバけるんだろう。


 そもそも、「ベポ達を捕らえる事でローを誘い出す」という作戦を立てるには、
 最低限「ハートの海賊団の構成員の顔を知っている」人物が必要となってくる。

 ローの能力や組織構成を知る敵と言えば、同じ最悪の世代であるホーキンスやドレークが挙がるが、
 彼らはベポ達が捕らわれた時点では湯屋の総当たり調査を行っていたし、
 ローがしのぶと口論をしていた頃には「もう悠長に湯屋を回っている場合でもない」と話していた。
 この辺を見るに、彼ら2人がベポ達の捕縛に関わっていたとは思いにくい。

 となれば、ハートの海賊団の事を知る残り1人の人物として、
 未だワノ国において姿を現さないアプー辺りがこの作戦には絡んでるんじゃないだろうか。
 あらゆる意味で何を考えてるのか読めない男だが、性格的にもローにとって相性が良いとは言えそうもない相手なので、仮にブツかる事になるならちょっと楽しみかもしれない。




“小紫”の被害者

■ブン業、凡ゴウ、びん豪

 小紫にダマされて金を毟り取られた3人組、都落ちするの巻。
 まあ元々、「ホレた女に貢ぐために家族を売り飛ばす」という外道ではあったんですけど、
 今回の補足により「小紫にダマされた男達は、元々が極悪人だった」という事が明白に。

 これはメタ的に考えると、読者に小紫=光月日和への悪感情を持たせない為の措置であると考えられ、
 あの悪女っぽさ全開だった小紫としての立ち振る舞いが、演技であったという事を決定づける描写だと思われる。

 うーん、個人的には「日和」よりも「小紫」の方が好きだったんで、ちょっと残念かも。


 また同時に、「いくら世を忍び生きるためとは言え、わざわざ悪女を装う必要はないのでは?」という事に関しても、
 「都に蔓延る悪人を社会的に抹殺する為の振る舞いだった」という事で納得の行くものになった。

 まあ、「あの天然っぷり大爆発の日和に、悪女の演技なんか出来るのか?」という根本的な疑問は残るんだが……。
 その辺は、後から日和の人物像が分かって来れば、解決するんだろうか。


 しかし「相手が悪人だと知って篭絡する」のは、
 遊女という立場では地味に難しい気もする。
 遊女という職業上、客に対し自分から接触する事が難しいと思われるからだ。

 悪人を崩壊させるにしても、その為にはまず相手の側から小紫を指名し、会いに来て貰う状況を作らなくてはならない。
 特定の相手を狙って接触していたワケではなく、遊女として普通に働く内に
 たまたま悪党が訪れた時だけ多額の金を巻き上げていたんだろうか。
 しかしそれでは効率が悪すぎるし、大した世直しにもならない気がする。


 考えられるのは第三者との共謀だろうか。
 びん豪が小紫にダマされた際の回想を見るに、遊郭に勤める者達(恐らく狂死郎の部下や遊女)は、
 小紫が彼らをダマし金を巻き上げている事を知っていた。
 それを考えるに、小紫はターゲットとなる人物をあらかじめ指定し、
 周りの者を使う事で彼らが遊郭を訪れる様に仕向けていたんじゃないだろうか。
 
 小紫の協力者……と言えば、
 彼女の偽装殺人に手を貸した可能性が高く、かつ遊郭の所有者でもある狂死郎が考えられる。

 ただ彼は回想内にて、
 びん豪に対し「最近小紫につきまとっていたジジイ」という言い回しをしており、
 小紫がびん豪をダマしていた事にはノータッチだった。

 これは「あくまでもびん豪自らが勝手にやった事」という建前を貫く為の芝居なのかもしれないが、
 直前に遊郭の者たちが大手を振るってびん豪を嘲笑ってしまっている以上、大して意味がない。
 この件に関しては、
 狂死郎は本当に事情を知らなかった(関心すら持ってなかった)のかもしれない。




■小紫は本当に善人?

 さて、びん豪達の裏の顔が発覚した事で、悪女から一転
 「悪人を懲らしめる義賊」の様な存在となった小紫。

 だが、小紫の行動は、本当に一点の曇りもない「善」だったのか。
 その部分に関しては、個人的には、かなり疑問が残る。

 というのも、彼女がびん豪に金を貢がせた事で、更なる不幸に身を落とした者がいると思われるからだ。

 まず明確に言えるのが、びん豪達の家族
 彼らはびん豪が小紫に貢ぐ為の金を得る手段として、売り飛ばされてしまった。

 トコなんかは身売りにあっても楽しそーにしてるが、アレはどう考えても特殊事例。
 ワノ国において身を売られた者の行き着く選択肢がどういうモノなのかは分からないが、
 最悪奴隷の様に扱われている可能性もある。

 仮に売り飛ばされたのが妻だけであるなら、
 「もしかしたら夫の悪事に加担していたかもしれない」と推測する事もできるが、
 「妻を売った」ではなく「家族を売った」と表現していた以上、子供もいたんだろう。
 売られた子供の立場からすれば、小紫を一生恨んだっておかしくはないと思う。

 
 さらに言えば、他の資金調達源だってアヤシイ。
 びん豪達は金を得る為に自身の財産をすべて売り払ったが、
 そも、彼らが金を得ようと思った時にまず考えるのは、
 火事を起こす事で自身の懐を潤わせるという本来の稼ぎ方だろう。

 金を得ようと思った彼らは、まずこの放火活動の頻度を上げ、それによる収益を増やす。
 それでも金が足りない、となって初めて、家族や持ち物を売りさばく、というのが自然な流れじゃないだろうか。


 実際に描かれていないので単なる推測だが、
 悪人を懲らしめるための小紫の“策”は、更なる放火被害を増やしてしまった可能性さえある。

 勿論、これによってびん豪達が失脚した以上、長い目で見れば被害者の総数は少なくなった筈である。
 が、「小紫に貢ぐ金の為に売り飛ばされたり、死んだ者がいる」可能性が残ってしまう以上、どうにもモヤモヤが残ってしまうのが正直な感想だ。


 この点に関しては、
 小紫が以前発した「我が正しきと思わば 一歩も譲る必要はなし」という言葉から、
 その心情を推察する事はできる。

 少なくとも「小紫」という人格は、
 普遍的な善悪よりも「自身の思う正義」に忠実な人物であったと思われる。
 その性格や思想を前提におけば、
 びん豪達から金を巻き上げた際の小紫の行動は、簡単に説明がつく。

 つまり「小紫」にとって、
 悪人の妻子がその身を売られる事や、一時的に放火の被害者が増える可能性を考慮するよりも、
 「悪人を滅ぼす」という事こそが最も優先すべき正義だったのだ。

 そう考えれば、
 (倫理的なモノは置いておいても)一本スジの通った考え方であるし、個人的にも好感が持てる人物像だとも思う。


 ……ただ、この時の「小紫」の姿と、ゾロに見せた様な「日和」としての性格が、どうにも結びつかないんだよな……。

 今回のエピソードを読むと、
 彼女本来の人物像というのは「日和」の方で、小紫の性格は演技だった、と取れる。
 が、それだけでは微妙に、この「小紫の行動」と「日和の性格」のムジュンに、説明がつかない様な気もしてしまう。


 個人的な考えとしては、
 「日和」と「小紫」のどちらかが演技でどちらかが芝居というよりは、
 どちらの側面も併せ持つのが彼女本来の姿なんじゃないかな、と思う。

 逆に言えば、今まで描かれた2つの顔は、どちらも彼女の素顔ではない。
 考えてみれば13年間にも渡って本来の姿を押し殺して来た女が、
 ついさっき出会った得体の知れない侍を相手に、
 ありのままの姿を曝け出しているという方が不自然とも言える。

 元々持っている性質を両極端に割り振った人格こそが「日和」であり「小紫」。 
 素直だがどこか抜けている「日和」の性格に、
 影の差す部分や芯の強さを持つ「小紫」の要素を、少し垂らした様なもの。
 それこそが、光月日和の本来の姿なんじゃないだろうか。
 
 まあ、これは予想というより、
「そうあってくれると個人的に好みな展開」という所も強いのだけれど。
 
 


トの康の人物像

 う、うさん臭い~~!

 小紫とは真逆の意味で、
「トの康さんめっちゃ良い人!仏様!」ってやってるのがフリにしか見えない!


 というか、光月の家臣達に馴れ馴れしい態度取っておきながら、
 本人は丸っきり素性を名乗る気がないのが怪しすぎる。

 ただ……「トコの父親」という設定が盛り込まれた以上、悪人側の存在になるとも中々思えず。
 トリックスター的と言うか、味方に対しても飄々とした態度でいなしながら、裏で作戦をサポートする様な立ち回りになるんだろうか。
 
 
 前にもちょっと書いたのだけど、
 ゾロから秋水を奪った牛鬼丸のえびす町出現には、トの康が関わっていると考えるとしっくり来るんですよね。

 おいはぎ橋をナワバリとする牛鬼丸が、なぜえびす町を訪れ、ゾロの刀を奪ったのか。
 それはゾロを町まで連れて来たトの康が、事前に牛鬼丸に情報を流していたからであると。

 2人が協力関係にあるのかまでは分からないが、
 トの康が牛鬼丸を利用する事で、ゾロをおいはぎ橋へと誘導した可能性は高いんじゃないかと思う。

 小紫と共に都から逃げて来たトコが彼の娘であるという事実により、その動機もハッキリした。
 何らかの手段で、小紫が鈴後へ向かって逃げることを知ったトの康は、
 策を弄してゾロを向かわせる事でトコの護衛役となる様に仕向けたのだ。


 問題は、「なぜトの康が小紫の逃走経路を知れたのか」というところだが、
 少なくとも「トの康が都を出入りしていた」可能性はある。
 トの康の正体が丑三つ小僧だった場合だ。

 町人達の言う「仏」の様な人格が本物なのであれば、
 丑三つ小僧のイメージ像にもピッタリと一致すると思う。


 シナリオとしてはこうだ。
 「丑三つ小僧」として都へ入ったトの康は、
 盗みを働くと同時に遊郭の様子も窺っていた

 狂死郎の遊郭さえも盗みの対象だったのかもしれないし、
 そうでなくとも、あの遊郭は売りに出された我が子が働く場所。
 多少のリスクを負ってでも様子を見に行きたいと思っても、不自然ではないだろう。

 オロチお庭番衆によれば、オロチの宴席の少し前、都に丑三つ小僧が現れたという事だった。
 そのタイミングで、彼は小紫と狂死郎の会話を聞きつけた。
 宴席における、彼らの偽装殺人に関する作戦の話である。

 小紫が何らかの能力者でもない限り、
 彼女が生き永らえたのには狂死郎の協力がなければ成り立たない。
 2人は宴席の前に密会し、
 偽装殺人の方法から逃走の経路までを、事前に打ち合わせていたんじゃないか。

 そしてトの康は、
 その作戦の中でトコが命を狙われる危険性が高い事も理解した。
 しかし、彼自身にはオロチの手先と戦える戦闘能力は無かったのかもしれない。
 困ったトの康は、
 ゾロをおいはぎ橋へと誘導する事で、トコの命を守るための護衛兵を作り出したのだ。

 仮にトの康自身が光月家の関係者であるのなら、
 そもそも小紫の逃走作戦に、トの康が関わっていたという事も考えうる。
 が、あの作戦はトコが追われる身となってしまう事を前提としなければ成立せず、
 実の父親である彼が、それを許可するとは思えない。
 そんな奴は例え「義賊」であっても「仏」とは言わない。


 ……しかし彼が丑三つ小僧だったとして、決戦にはどうやって絡んで来るんだろう。
 カン十郎達がまったく思い当たっていない辺り、実は光月とは全くの無関係なんだろうか。
 町人の「あの人は昔からみんなに愛されてた」という言葉からすると、
 20年前から姿や性格は変わっていない様な気もするが……分からん。
 
 


兎丼の囚人達

■流桜

 ワノ国における“覇気”の呼び名らしい。
 なるほど、菊が以前、ルフィのいう「ハキ」の意味を分かっていなさそうだったのは、呼び名が違っているからなのね。

 レイリー達がやっていた様な「触れずに倒す」覇気の使い方を会得するには、
 「不必要な場所の覇気を拳に流す」と。

 まだイマイチ意味は見えて来ないが…
 覇気を使うと、ルフィの拳からヒジ辺りまでにかけて、武装色による体色の変化が起こる。
 この変化を最小限に抑え、攻撃を加える際に必要な拳の表面部分にのみ覇気を“流す”事で、何らかの違いが生まれる……とか、そういう感じ?
 あ、でもそれだと、刀身全体が黒くなる「黒刀化」とムジュンするな。

 ともかく、今回でマジロマンを始めとするギフターズ達をボカスカ倒しているので、次の処刑シーンではババヌキやダイフゴーと戦う事になるのかな。
 まあ、海楼石の錠も外れた今となっては、彼ら相手でも余裕だろうけど。
 やっぱ、覇気のコツを完全に掴むのはクイーンとの戦いかな。



■カリブー

 あ、お前いたのか。

 キッドの脱獄以降姿が見えなかったんで、てっきり彼に連れていかれたのかと思ったが……そんな事はなかったらしい。
 で、雷ぞうの手に入れた鍵はルフィの錠ではなく、カリブーの錠を開けるものだったと。
 
 共闘するにしては死ぬほど信用できないけど、
 利害の一致がある限りは大丈夫……なのか? 本当か?
 実際強さはともかく能力はかなり便利なので、
 味方についている間は役に立ってくれそうなのは事実だろう。

 ただなー。
 普通の相手なら「大人しくルフィと協力した方が生存率も上がる」と思えるんだが、カイドウだからなー。
 あいつ使えると分かれば赤鞘九人男さえも味方に入れようとするから、
 ルフィをひっとらえて差し出せば、スコッチの工場をツブした罪もチャラにしてくれそうなんだよなー。

 ……まあ、ミートパイのババーを助けた時の様な良心が、再びカリブーに芽生えてくれる事を祈ろう。



■ヒョウ五郎

 前回は全盛期の強さの一端を見せつけ、今回は光月の復活を知り、協力を約束したヒョウ五郎。
 主な役割としては、
「ルフィの覇気向上の指導」および「囚人達の先導・統率」といった感じになるのかな。
 うん、めちゃくちゃ重要なポジションになってきた。

 元々兵力不足の懸念が出ていた上に、同志達が次々に捕縛されている現状。
 兎丼を開放する事で、
 反オロチの意志を燃やす戦力を大量に獲得できると言うなら、渡りに船ってものだ。


 しかも都合の良い事に、
「兎丼の牢獄をブッ壊す」ことにかけては最高級の効果を発揮しそうなファイナルウェポンが、絶賛兎丼に接近中。
 吉か凶か……というか存在自体が凶みたいなモンなんだが、
 上手く使えれば兵力を確保するのに役立たせる事もできる……か?

 とりあえず、
 この「記憶喪失中のリンリンに対しどう立ち回るか」で、クイーンさんの人気は大きく変わる様な気もします。
 一矢報いるだけでも、評価爆上がり間違いなし。