週刊少年ジャンプ2019年24号分の感想です。
 ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 


★もくじ
おでんと康イエ
「皆に詫びたい事」
「オロチのバカに言いたき事」
SMILEの副作用  




おでんと康イエ

 えびす町の太鼓持ち・トの康……もとい、霜月ヤスイエがかつて大名を務めた白舞の地は、ワノ国にあって唯一、正規の「港」を有する郷であった。

 錦えもんが決戦の集合場所として指定した、“刃武港”ってのがコレの事なのかな。
 まあ正規の港はオロチ配下の警備が厳重そうだし、刃武港は別の非正規な港なのかもしれないけど。

 鎖国国家とはいえ、外海との繋がりを一切絶とうとしていたワケではないのね。
 その辺は現実の鎖国時代と同じ感じっぽい。

 白舞の港には良き客・悪き客と多様な人々が訪れていた様なので、一部の決められた者のみが入港を認められていた、という事でもなさそう?
 入国審査的なものを受ければ、国に入ること自体は可能なんだろうか。


 おでんは鎖国国家であるワノ国を「窮屈」と称しているので、如何に港を有していたとは言え、ワノ国からの「出国」というのは簡単な事ではないんだろう。
 が、92巻SBS曰く、過去に「ワノ国から東の海へと向かった船」が存在していた事が確認されている。アレはワノ国からきちんと許可を得て出航した船だったんだろうか。
 
 その船には「劇中に登場した人物の祖先」が乗っていたとの事だったので、多くの人がコウシロウ、またはその親や祖父母などの事だとイメージしていると思う。

 くいなやコウシロウ、そしてゾロが住んでいた村の名前は「シモツキ村」、そして今回明かされた、白舞大名の名前は「霜月しもつき 康イエ」。偶然とは思えない一致である。

 おそらくシモツキ村は、この白舞から旅立っていった者たちが築いた村なんだろう。
 そして康イエか、あるいはその先代辺りに大恩のあった彼らは、作り上げた村に「霜月」の名を与えたと。

 よく見ると、回想シーン内で康イエの「鉄壁の軍隊でなければならぬ」という言葉に雄叫びを上げる兵の中には、コウシロウが営む一心道場のシンボルによく似た模様を衣服につけた侍がいる。

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 おそらくこのマークも、元は白舞にて使われていたものを、コウシロウが自身の道場のシンボルとして掲げたのだろう。


 ワノ国の民衆は、康イエのことを「スキヤキの跡継ぎ」として期待していたらしい。
 って事は、おでんは光月スキヤキにとって1人息子だったって事ね。他にも男子がいるなら、康イエや勘当されたおでんよりも先に、その子の名が挙がるハズだし。


 しかし康イエの考えでは、おでんの勘当すらも「スキヤキの愛の鞭」だったと。

 錦えもんは光月おでんに関し「暴力事件を繰り返した事で追放された」と説明していたが、これは跡継ぎに相応しくないと諦められたのではなく、一人前の指導者として成長を促すためだったという事かな。

 事実、都を追放されたおでんは、将軍家が匙を投げた土地であった九里を纏め上げ、当のスキヤキから大名の地位を貰っているワケだしね。スキヤキの思惑は的中したと言えるだろう。


 ……しかしおでんさん、髪型スゲェっすね。
 920話でもシルエットが出ていたけど、頭の平べったいアレは……髪なのか笠なのか。
 髪だとしたらどうなってんだろうコレ。リーゼントっぽくもあり、ストⅡのガイルみたいでもある。そして後ろはウェーブがかった長髪。なるほど確かに型破りだ。

 そしてよく見たらおでん食ってる。
 たぶん、好物はおでんなんだろうな。スムージーが好物のスムージー姐さんと一緒だね。ぜひ一度東の海へと赴いて、岩蔵さんの屋台に行ってみて貰いたかった。




「皆に詫びたい事」

■丑三つ小僧の正体

 大金持ちから盗んだ金を貧乏人にバラ撒いていた英雄・丑三つ小僧として捕らえられてしまった康イエ。

 だが彼曰く、それは注目を浴びる為の嘘であると。
 丑三つ小僧を騙ることで注目を集め、民衆やオロチ、同志達に伝えるべき事を伝えようとしたってことね。


 ……しかしこれはどうなんだろう。
 「丑三つ小僧であるというのはウソ」というのがウソである可能性も考えられないだろうか。

 元よりこの康イエが最期に語った言葉の中には、多くのウソが隠されている。
 「判じ絵を作ったのは自分だ」というのもウソだし、「月の印はただの流行り模様だ」というのもウソだ。
 オロチ側を混乱させる為、康イエは言葉にウソを盛り込んでいる。なら、「自分は丑三つ小僧ではない」というのも、ウソである可能性は大いにある。

 そも、冷静に考えるとわざわざ「自分が丑三つ小僧だ」などというウソをつく理由も薄い。
 生き残った大名・霜月康イエの処刑というだけで民衆の注目度は十分に高まっていたし、わざわざ一時的とはいえ「民衆にとっての英雄」に成りすましたと言うのも、康イエらしくない。

 康イエは「自身が丑三つ小僧である」という事実をウソにする事で、英雄としての死を拒んだんじゃないかな。

 自分はあくまでも、国を救えず死に損なった不出来者。
 光月家大名として、そして一介の市民に過ぎない身となった「トの康」としての死を選んだ。


 ……と、いうのが個人的な考えなのだけど、よく考えたらトの康が丑三つ小僧だとすると、ゾロと旅をしていたハズのタイミングでえびす町に金が届けられている事の説明が付かなくなるのよね。
 瞬間移動能力者でもあるまいし。

 仮に「本物の丑三つ小僧」がいるとしたら、誰だろうね。
 日和トコにその様な身体能力があるとも思えないし、狂死郎が仮に善玉だとしても、こそこそと盗みに入るタイプには見えない。
 そも、彼らが出席していたオロチ主催の宴の直前、丑三つ小僧は都に現れているので、こちらもムジュンが生じる。

 赤鞘最後の1人である傳ジローも考えられるが……シルエット的には忍ではなく侍っぽいし、盗みのイメージはないなぁ。

 ……やっぱ、康イエさんが丑三つ小僧って事で良いんじゃないだろうか。他に思い当たらないし。
 金を「盗み出す担当」と「届ける担当」で、複数人体勢の盗っ人だったとすれば辻褄も合いそうだけど、どうなんだろう。
 


■判じ絵の札

 康イエは死の間際、都に出回った「判じ絵」を作り配ったのは自分であると語った。

 当然これはウソなのであるが、この言葉により捕縛された同志達を「オロチの勘違い」として救い、同時にオロチに対する部下達からの信頼を損なわせる事にも繋がったワケだ。

 オロチがこのまますんなりと同志達を開放するかはともかく、これで部下達への「オロチ様は臆病者」という印象は強く植え付けられた。
 今後オロチが何を言っても、逆らうとまでは行かなくとも、本気で取り合おうとしてくれる部下は激減する事だろう。
 康イエの命を賭した行動は、決戦に対しかなりの追い風を巻き起こしたと言える。


 しかしこの「新たな集合地」、錦えもんには伝達済みなんだろうか。
 光絵を見た際、錦えもんは「康イエ殿……!!?」と驚愕の表情を浮かべていた。少なくとも、康イエが死のうとしていた事を、彼は知らなかった様である。

 そもそも「なぜ判じ絵の事がバレたのか」という理由が分かっていない以上、一度集合地を切り替えたところで、再び情報が流出するのは時間の問題の様な気もする。
 それもあっての「オロチの言葉に信憑性を失わせる」方法に出たんだろうが、危険が残っていないワケではない。
 このまま討入りがすんなり行くのかと言えば、微妙な気もする。
 



「オロチのバカに言いたき事」


 「オロチのバカ」
 「愚か者」
 「従者の苦労お察し致す」
 「欲深きドロ」
 「害虫」
 「姑息な計略」
 「臆病者」
 「器の小さき男」



 ヒドいやヤスさん……。



 いや分かる! 分かるよ!
 オロチのせいで国がメチャクチャになってんだから、言いたくなる気持ちも分かるさ。

 それにしても……。


 たった1話の中にここまで悪口が盛り込まれた男、そうそうおらんぞ。


 20年分、募りに募った思いが溢れ出たんでしょうね。
 あるいはボロクソに罵る事で、オロチの部下からの信頼を更に下げようとしたか。

 
 そして康イエさん、今自分に出来る事のすべてを成し、見事なる死を迎えられた。

 少し前までのONEPIECEなら「そうは言っても生きてるでしょ」と思えたのだが、今回は……死んだかな。
 ちょっとトコが可哀想すぎるけど、まあハッキリ言って、変に生き永らえるよりも死んだ方が人気になるタイプだろう、ヤスさんは。


 しかし彼曰く、オロチはかつて、おでんに大恩ある存在だったそうな。
 にも関わらず、彼は光月を裏切り、カイドウと組んでワノ国を支配したと。
 錦えもんからおでんの死について聞かされたルフィ達はかなり強い怒りを見せていたので、相当に手酷い裏切り行為があったんだろう。

 今のところ、オロチの人物像こそ見えど、その経歴や人間関係なんかは割とフワッとしてるのよね。
 おでんの死後、「残る4人の大名に問うた」という言葉からして、20年前までオロチは大名の座にすらついてなかったみたいだし。




SMILEの副作用

 康イエが死んだ瞬間を目の当たりにしても尚、笑顔を絶やそうとしないえびす町の人々。
 それは彼の娘であるトコも同じだった。

 あまりにも場に似つかわしくない態度に怒りを見せるゾロ。
 だが日和によれば、彼らはそもそも「表情を変える」という事ができないと。

 彼らはカイドウとオロチにより、「笑顔」以外の表情を奪われていた。
 SMILEという果実によって。


 はぇ~。
 あまりにも不気味だった彼らの「笑顔」、SMILEの影響によるものだったのか。
 SMILEの製造現場はワノ国ではなくパンクハザードやドレスローザである為、製作過程で発生した毒ガスや汚染水による影響というのは考えにくい。
 という事は、この「笑顔以外の表情を浮かべられない」という呪縛はSMILEを食した事による影響だという事になる。確かに百獣海賊団の雑兵達にも、彼ら同様「ダメージを受けても尚笑っている」メンツがいて、似た印象はあったけど。同一の症状だったのね。

 これはえびす町の人々が、SMILEの人体実験に利用されたという事になるのかな。
 ロー曰く、SMILEには「人造ゆえのリスク」が存在するとの事だったが、この「表情を奪われる」というのがその1つだったと。

 しかしホールデムなどを始め、SMILE能力者だからと言って皆が皆、感情にバグを起こしているワケではない。
 むしろ81巻あたりを見ると、常に狂ったように笑っているのは「プレジャーズ」というSMILE能力を持たない軍団の者たちばかりの様だ。

 つまりSMILEという果実を食べる事で起こる影響は、「成功し能力を得る」か、「失敗して表情を奪われる」かの二者択一という事なのかな。
 当初製作されたSMILEは失敗作がほとんどだった為、えびす町の人々を実験台に使う事で、作られる果実の成功率を上げて行ったんだろう。

 その過程で百獣海賊団の雑兵達も実験台にされたのか、たまたま食べた実が失敗作だった者達なのかは分からないが、「能力を得られず表情だけを奪われてしまった」集団がプレジャーズという事ね。
 pleasure=楽しみ、愉快、喜び という言葉から名前が付けられているのも、そこに繋がるのね。


 ……プレジャーズ、地味に可哀想すぎませんか
 能力発現しないから海賊団内での地位も上がらないし、感情だけはしっかりバグるし。雑魚敵ながら同情したくなって来たぞ。


 SMILEの生成にはベガパンクの発見した「血統因子」が関わっているそうだが、ジャッジの研究の成果であるジェルマ66のクローン兵達にも、血統因子の操作は関係していた。
 そして彼らも、「苦しい」「悲しい」と言った感情を失わされており、どこか似ている。
 SMILEの失敗作は、血統因子の操作が間違った方向に作用してしまう事で、食べた者の表情を狂わせているのかな。