先日発売されたVIVRE CARDの感想を書いていたところ、とある項目が非常に長ったらしくなってしまったので、別の記事として分割しました。

ロブ・ルッチを始めとする元CP9メンバーと、武装色の覇気についてのお話。 


「“闇の正義”の執行人!CP9!!」感想



■【CP9メンバー】覇気

今回のセット一番の、問題児的な情報。
というかVIVRE CARD全般を見ても例を見ないぐらい、今までの常識をひっくり返しにかかっている記述かもしれない。


なんと2年前のCP9メンバー、ネロとスパンダムを除く7人全員が、武装色と見聞色の覇気使いだというのだ。


これが「2年後現在」を示す記述なら分かる。
特にカクに関しては、CP-0加入後現在の情報で書かれたカードになっているので、覇気が使えるという記載になっているのは当然の話だ。


しかし他のメンバーは、基本的には「元CP9」という2年前の所で情報が止まっている。
原作に再登場しているワケでもないし、全員がCP-0に加入しているのかさえ不明な状態なのだから、判明済みの2年前時点で情報を止めておくのは普通の事だ。


それが覇気の項目に関しても同様ならば、CP9メンバーは全員、2年前のエニエスロビー編の時点で覇気の使用が可能だったという事になってしまうのだ。


他のメンバーはまだ、「覇気の項目だけは2年後準拠になっている」という見方をする事もできる(それはそれで珍妙な記載方法だが)。
しかし、わざわざ2年前と新世界編、それぞれのカードを用意し、双方に「武装・見聞」の覇気を記載してあるルッチに関しては言い逃れのしようがない。



確かに、CP9は幼少から血の滲む様な特訓を積んで来た集団なのだから、覇気ぐらい扱えたって不思議はない。
しかし、2年前のCP9が覇気使いであるとすると、おかしな事が起こる。
ルフィに対する打撃攻撃が、通用しない前提で話が進んでいる事だ。


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(ONEPIECE 40巻 第385話より)



これは第385話にてルフィとブルーノが戦った際の一コマだが、ここでブルーノはハッキリと、「ゴム人間に打撃は無効」であると独白している。
もしこの時、ブルーノが武装色の覇気を扱えたならば、そんな発言が出る筈もない。覇気を纏った指銃で貫いてしまえば良いだけだからだ。



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(ONEPIECE 43巻 第418話より)


問題のルッチに関しても、「指銃」に覇気を纏わせる行動を取っていない。
ルフィに対し「指銃 黄蓮」を繰り出した時、仮にルッチが覇気を使えたのであれば、ルフィは無数の指銃によって大ダメージを負っていた事だろう。

しかし、そうはなっていない。
「ムニニッ!!」というゴムの弾力によって打撃が無効化された擬音を発しながら、そのまま後方に吹き飛ばされているだけだ。


「指銃 斑」などを受けた場合には、ルフィはダメージを受けているが、アレは獣人形態から繰り出された、鋭利な爪によるダメージであって、覇気によるものではない。

「六王銃」に関しては打撃攻撃によってルフィにダメージを与えている様にも見えるが、これもルフィが「空島の“衝撃貝”みてェだ」と言っている通り、衝撃波を発して体内よりダメージを与えて行く類の技。
構造としては、八衝拳や魚人空手に近い奥義だろう。
これにはもしかすると覇気が絡んでいる可能性もなくはないが、決定づける事ができる代物ではない。


総合的に見ると、CP9時代のルッチやブルーノが、覇気を使える事によって生じる矛盾の方が大きくなってしまう。
それどころか、あのルフィとルッチの激戦は、ルッチの側が手を抜いていたのではないかという疑惑さえ出て来てしまう記述だとも思える。




無理やりにでも解釈してみる。
第1に、まずルッチ達CP9は、2年前の時点で覇気を会得していた。
しかしそれは、能力者の実体を捉え、能力による防御を無効化できる段階には至っていなかったのだとすればどうか。



覇気の成長には、様々なベクトルがあるのだと思う。
例えば見聞色の達人として挙げられるエネルとカタクリだが、彼らの持つ見聞色の成長方向は、細かく見ると異なっている。


カタクリが「数秒先の未来を予知する」という「狭範囲の気配をより深く読み取る」能力に長けているのに対し、エネルや神官たちが使う心綱は、アッパーヤード全域という広範囲に散った多くの気配を同時にサーチする事を可能としている。
いわば「範囲特化型」とも言える見聞色の達人だった。


それは武装色に関しても同じ事。
全身を硬化し、筋力の膨張までを可能にしていたヴェルゴ、ただ純粋に「硬度や威力」に特化したカタクリ、そして敵に対し「触れずに弾く」という特殊な武装を実現したレイリーや戦桃丸。
ひとえに武装色の達人と言っても、恐らくその行き着く先にある能力は、それぞれに異なっている場合もあるのだ。


これらレベル毎の段階分けの様なものが、武装色の最終到達点だけでなく、入門クラスの時点から存在していたのだとすれば、どうか。

武装色の覇気と言えば、一般的には「肉体や武器を硬化し、攻撃の威力を増す」「悪魔の実の能力者の実体を捉え、攻撃が通る様にする」といった能力がある。

しかしCP9は、この2つの能力のうち一方、「肉体の硬化」のみを会得していたのだ。


この様に中途半端な会得の仕方をした背景には、彼らが操る「六式」という体術の存在がある。
この「肉体を硬化する」という武装色の一部分を切り取った能力は、六式の体術をマスターする過程で、自動的に身につく物なのではないだろうか。


CP9には、見習いメンバーとしてネロという「四式使い」の諜報部員がいる。
今回のVIVRE CARDによれば、彼はルッチ達「六式使い」とは異なり、覇気を使用する事ができない。


そしてネロが使えない体術は、指を銃弾と見立て、敵を射抜く「指銃」と、全身を鉄の塊の様な硬度に変貌させる「鉄塊」の2つ。
どちらも「肉体の硬化」を必要としそうな体術なのだ。


ネロがこの2つの体術を会得できなかった背景には、単に体術のレベルが劣っているだけでなく、武装色の覇気が操れないという原因があったのかもしれない。
逆に考えて、「指銃と鉄塊を操れないから、覇気も会得できていない」という見方でもいい。

六式使いはこの「指銃」と「鉄塊」を鍛え上げて行く内、知らず知らずの間に「武装色硬化」の技術を会得しているのだ。


しかしこの方法で会得した覇気は、「肉体の硬化」のみを目的としている為、本来の覇気に比べれば中途半端な習得状態となっている。

その為、彼らの持つ覇気は、対能力者への対抗策とはならなかった。むしろ知らぬ間に身に着いていた能力である故、彼ら自身、自らの身体に根付いた覇気の資質を自覚していなかったのかもしれない。




そうなれば、疑問も残る。
何故彼らは、武装色の能力を中途半端な形で放置していたのか。


彼らが仮に覇気の存在を知らなかったとしても、彼らに体術を教えた教官達はそうも行かないだろう。
政府の重要な戦力を育成する人間達が、覇気の存在も知らない情弱さんでは困る。

教官達は覇気の存在を知りながら、それをマスターさせぬまま、ルッチ達をCP9というチームへと送り込んだのだ。


だがこれは、意図的に「会得させなかった」のではなく「出来なかった」。
苦肉の策だったんじゃないだろうか。


CP9というチームは、何も海賊や海軍の様に、ただ力任せに戦っていれば良いという集団ではない。
「殺し屋」と表現される事も多いが、根本的な仕事としては「諜報部員」なのだ。


殺しの許可こそ得ているものの、殺しを行わずにカタのつく案件なら、それに越した事はない。
事実、ジャブラ達が引き受けていた「革命軍支部長暗殺」の任務では、フクロウの諜報部員としての能力が欠けていた(お喋りすぎた)為に、余計な人死にを出してスパンダムに叱られたりもしていた。


CP9は任務の為、あらゆる職業の人間に成りすまし、潜入捜査を行う必要がある。
例えばガレーラカンパニーへの潜入を行うとなれば、ルッチやカクには一流船大工としての技術が、カリファにはあらゆる状況に対応できる敏腕秘書としての素質が不可欠だった。


しかし、任務を言い渡されてから、一朝一夕で必要な技術を学んでいたのでは、間に合わない。
元々その職業への知識や技術をある程度得ておいた上で、任務の決定後、その技術を更に底上げするぐらいでなければ、ガレーラへの潜入は難しいだろう。


そう考えると、CP9としての訓練には、戦闘の修行ばかりを積んでいるだけでは不足であると思われる。
ガレーラカンパニーへの潜入を開始した時、カリファは20歳、カクに至っては18歳という年齢だった。この若さにして、彼らは六式の体術だけでなく、万の職業に対応できるだけの能力を学んでおかなければいけなかったのだ。
そりゃもう、覇気と六式の完璧な両立なんて苦行じみた特訓、積んでいる時間なんかあるワケがない。


「政府の主要戦力のひとつであるCP9が、中途半端な覇気しか使えない状態で良いのか」と思われるかもしれないが、基本的には別に構わない。

彼らが請け負う任務は、基本的には偉大なる航路の前半クラスを相手取ったものであると思われる。そのレベルが相手なら、たとえ覇気が使えずとも、六式だけで大概は決着をつけられてしまうのだ。


新世界レベルの強敵が相手ならば、それはCP-0に任せるべき案件。
よって政府の高官達は、CP9に覇気と六式の同時体得は必須ではないと考えた。
それよりも、若い段階から実戦経験を積ませ、諜報部員として十分な能力を持った人員を、より多く現場に確保したかったのだろう。


こうして、「覇気自体は使えるのに、能力者の実体を捉える事はできない」という中途半端な覇気使いは誕生したのだ。

完璧ではなくとも資質自体は芽生えていたのだから、後はより強さを欲した時に修行を積めば、覇気のマスター自体はそう遠くはなかったのだろう。
そして2年後、ルッチ達は武装色の覇気を完璧なものとし、CP-0として返り咲いたのだ。






長々と書いて来たので、最後に一節、こちらの文章をお読みください。


VIVRE CARD スターターセットVol.2より、ロブ・ルッチ(CP-0 Ver.)の解説文。

新たに“覇気”も習得し、より獰猛さに磨きをかけた非情の男」





元から使えたのか使えなかったのかハッキリしろや!!


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