ちょっと遅れましたが週刊少年ジャンプ2019年34号分の感想です。

ルフィがでっかいバナナ食ってる横で、アフロのガイコツが『BANANA』って書かれたシャツを着てるのがなんだかシュール。

ついでに今週は、ゾロとミホークの決戦を描いた『カヴァーコミックプロジェクト』の第1弾も掲載されています。そちらも必見。


以下、ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 


★もくじ
6戦士大暴れ
奇病『ミイラ』
ルフィ大演説
ロロノア・ゾロ、海に散る  



6戦士大暴れ

クイーン、リンリンのいなくなった兎丼にて、ルフィ、チョッパー、雷ぞう、菊、そしてヒョウ五郎河松の6人が大立ち回り!

大看板を欠いた兎丼の現戦力だけでは、この猛者達と真っ向からやり合えるハズもなく、看守長ババヌキは心をへし折った囚人達を差し向ける事でルフィを止めようとした……というのが前回の内容。


今回は僅かずつながら、6名それぞれの戦いが見れるワケですが、個人的には久しぶりとなる麦わら一味内の連携技が見れたのが嬉しかった所かな。

『ゴムゴムのヘビースタンプ』というもので、ルフィの『ゴムゴムのスタンプ』とチョッパーの『ヘビーゴング』を同時に繰り出す技。
チョッパーとフランキーが繰り出す『フラッパーゴング』に近い技になってますね。

出来れば「必殺ルフィッチョ……」とか言って欲しかった気もするけど、このシリアスムードの侍達の前でネタっぽさの強い名称を繰り出すのは壮絶に空気が読めてない気もするので、言わんくて良かった気もする。


『麦わらの一味』としては度々繰り出している連携技だけど、そこにルフィが加わる例は地味に珍しいかも。

ルフィ、ゾロ、サンジ、ロビン、フランキーがそれぞれの技を一斉に繰り出す『6億B・JACK POT』を除くと、サンジ・ゾロに次いでチョッパーが3人目かな。
一味以外だと、ギャルディーノの作ったロウを使用する『ゴムゴムのトンカチ』『チャンピオン回転弾』とかもあるけど。



他4名の侍達に関しては、それぞれの戦闘描写は1~2コマずつ程度ながら、プレジャーズやギフターズを圧倒し、その強さの一端を見る事はできる。

ただまあ、正直言ってザコ揃いの相手なので、力量を正確に測れる程ではないかな。
出来ればソリティア辺りとも戦わせて、「真打ち相手に無双できる」くらいの強さはあるのか、とかが見たかった気もする。
この辺はページの都合だろうけど、仮にも副看守長なのにマトモな出番さえないまま兎丼を制圧されてしまったソリティアさんはちょっと哀れだな。



またこの戦いの中で、雷ぞうはすでに奪い取って来ていた手錠の鍵をキッド達に渡す。
鍵を渡されたキッドは、何も言わず意味深な表情のまま、その戦いを見守る……のだが、この後、彼はどう動くんだろう。


仮にも敵であるルフィに借りを作るのは御免被りたいところかもしれないが、今はそんなプライドより、キラーの身に起きた悲劇の解明や、他の仲間達の居場所を探す事の方が先決のハズ。

その辺も考えると、ここは一旦素直に鍵を受け取り、諸々の状況を解決した後で、「ルフィ達への借りを返す」「キラーを変わり果てた姿にした奴らへの報復」を兼ねて、対カイドウの戦線に加わる……って感じになるのかな。


ただキッドらを救うにあたって、鍵を奪ってきたのもキッドに渡したのも雷ぞうであって、ルフィはほとんど関与してないんですよね。(水中から引き上げるぐらいの事はしたけど)
なのでキッドが借りを返すとして、その相手はルフィではなく赤鞘の侍達になるのかもしれない。
まあ、侍達とルフィは同盟中なので、実質的には同じ事なんだけど。




奇病『ミイラ』

止めようもない猛者達に対処する為、ダイフゴーが取り出したのは『疫災エキサイト弾』なるウィルス兵器。
『弾を撃ち込まれる』『感染者に接触する』事を条件に感染し、出血や焼ける様な痛みなどの症状が発生してしまう。


やがて感染者を干からびさせてしまう病原体、その名も奇病『ミイラ』。
うーん、そのまんま!
クイーンさん、実力も人格も優れてるし、科学技術もすさまじいものを持ってるのに、ネーミングセンスだけがイマイチだった。


そう、このミイラという奇病、なんとクイーンさんが独自に作り出した傑作なのだと言う。
病原体を「作り出す」……って、並大抵の技術ではない様な……。

シーザーが作って闇社会で売りさばこうとしてた『シノクニ』と良い勝負じゃないですかね。制圧能力はあちらの方が上だけれど、カラを叩き割れば簡単に救出できるシノクニより、殺傷能力ではミイラの方が勝っている気がする。

オロチ様はベガパンクを欲しがってたけど、SMILE製作で縁のあるシーザーを引っ張って来て、クイーンと組ませればベガパンクに近い技術力を実現する事も不可能ではない気もする。


病原体であって毒ではないからなのか、ヨロイオコゼ並に強力な猛毒なのか、とにかく毒に抗体を持つルフィにさえ大きなダメージを与えている『ミイラ』。

逆にこのタイミングで存在を知り、サンプルを得られたのはラッキーかもしれない。決戦の時に使用されても対策が取れるし、可能ならチョッパーに解毒薬を用意しておいて貰う事もできるかもしれないし。

逆にコレが討入りの時に初登場していたらヤバかったな……。
5000人規模の兵力を期待する混戦なのだから、病原体の感染効率も一気に速まりそうだし。
1発で兵力の半数近くを失ってもおかしくないレベルだった気がする。


またチョッパーは、「ウィルスを兵器として利用する」事に怒りも見せていましたね。敵の戦い方に「医者として」の見解や感情を見せる辺りは、スリラーバーク編を連想する。
医術だけでどこまでやれるのか微妙な所だけれど、ワノ国の環境汚染なども含め、チョッパーの「医者としての戦い」が描かれるフラグだったりするのかしら。




ルフィ大演説

恐怖や絶望を植え付けられ、敵の言いなりに動くしかなくなった囚人達。
そんな彼らの目を覚まさせるべく、ルフィ、動く。


そこから約6ページに渡る、ルフィ捨て身の大演説。
ミイラに感染した囚人達にあえて直接触れ、その身を焼かれながらもひたすら喋る。仲間や敵ではない、「無派閥の第三者」に属する人々に対するセリフとしては、トップクラスの長尺なんじゃないだろか。


そしてその言葉に、行動に、心を動かされた囚人達。
ルフィはまたも、その場にいる者達の心を掴んだのであります。マリンフォードでミホークが痛感した、この海で最も恐るべき力。それが、かなり明確で分かりやすい形で発揮されている。
どこぞのエンタメ会社の社長さんより余程説得力が……いや止めようこの話は。


また今回、ルフィは明確に「ワノ国を守る」という意志を口にしています。

「四皇の一角を落とす」という目的から始まったローとの海賊同盟は、モモの助や錦えもん達との出会いによって「戦う力を持たないモモの助に代わり、両親の仇を討つ」為の戦いという意味を含む様になった。

そしてワノ国上陸の後、お玉から一飯の恩を受けた事をきっかけに、「ワノ国を毎日腹いっぱい食える国にする」……つまり「ワノ国を救う」為の戦いにもなって来た。
それら3つの目的が、「カイドウを倒す」という行動により一気に果たせる構造となったわけです。


ルフィが冒険の中で、村や国を救う事は幾度もありました。
しかしそれは、常に「自分が気に入った誰かを救ったり、その願いを叶える為」の戦い。国という大きな括りの概念を守る事は、目的ではなく手段である事がほとんどだった。

その「誰か」……言ってしまえばヒロイン役の様な存在が、ワノ国編ではお玉であり、モモの助という事になるわけですね。



それはそれとして、ルフィが今回の様に、大衆に対して大演説を繰り広げるというのは中々に珍しい。

魚人島での「敵か味方か? ‥‥‥そんな事お前らが勝手に決めろ」に代表される様に、ルフィは基本的に、他人の行動は他人に委ねるため、大衆を言葉によって先導・説得する事は少なかった様に思う。
ルフィ自身が自由に動き、戦う。そしてその姿を見た大衆が、自らの意志でルフィを味方と定め、応援し、あるいは自らも戦おうとする。それが基本的な流れだった。


しかし兎丼でのルフィは、まずは言葉を尽くして囚人達の心を掴んだ。そして最後には、未来視の能力により自分の力を見せる。病原体という『絶望的な力』に、あえて身1つで挑んだのも同じだろう。
おれはこんな力なんかに屈しない。お前らはどうだ。勝ち目のない敵と諦めるのか、おれと組んで抗ってみるか。


20年間の内に心を折られ、抗う気力さえ失った侍達。それでも、彼らの心には罪悪感もあったハズ。
彼らの多くは、元々光月おでんを慕い、仕えた者達だ。それが今では、ワノ国再興の為に戦おうとする赤鞘の侍達を、保身の為に邪魔しようとしている。
仕方のない事と言い聞かせながらも、彼らの中には、自分を情けなく感じる者も多かっただろう。本当は戦いたい。でも、あまりに強大な相手を前に、恐怖がそれを拒絶する。


そんな侍達に、ルフィはもう1度戦うチャンスを与えた。カイドウに立ち向かう強い意志、そして力を見せつける。こんなにも頼れる男が、自分達の共通の敵に対し、少しも怯むことなく戦おうとしている。
極めつけの「あと頼む」だ。今まで戦いを阻害しようとしていた自分達に、この男は信頼を持ってくれている。
これらの要素の複合は、折れてしまった侍達の意志を蘇らせ、心を掴むには十分すぎるものだったのだ。


これだけの人心掌握を、ルフィは計算ではなく天然でやれてしまう。
紛れもない、覇者の資質だと言える。



今話のルフィはとにかく格好いい。
その裏で、結局何1つ良い所を見せられないまま、復活した侍達によってボコボコにされて散って行ったダイフゴーさんは中々に哀れですね……。

登場とほぼ同時に、ルフィに蹴飛ばされる。その後も何の根拠があってか妙な自信を持ち、イキリ散らかした挙句にこの有様……。
サソリのSMILEを得た姿は割とカッコいい部類なんですけどね。胸にウサギの顔が出てくる能力者とかに比べりゃ、随分マシだったろうに。




ロロノア・ゾロ、海に散る

ジャンプ本誌にて、『カヴァーコミックプロジェクト』なる企画が始動したようです。

これはONEPIECEの本編にて実際に描かれたエピソードを、内容はそのままに尾田栄一郎さん以外の作画によって描き下ろすという企画。
音楽で「カバー曲」なんて概念がありますが、その漫画版ですね。


その第1弾として掲載されたのが、バラティエでのゾロとミホークとの戦いを描いた、『ロロノア・ゾロ、海に散る』。
これは第51話のサブタイトルですが、実際に掲載された読み切りには52話の内容も含まれてますね。
作画を担当したのは、『Dr.STONE』を連載中のBoichiさん。



色々と賛否両論ある企画の様だが、個人的な感想だけで言うのであればかなり楽しめた。
正直なところDr.STONE自体が未読の漫画というのもあり、絵の違和感は否めなかったが、後半になるにつれコマ割りを本家から大きく変えていき、内容は同じなのにまったく違う漫画を読んでいるかの様な新鮮味を感じさせてくれる。


特に個性が出ていると感じたのが、ミホークが短剣をゾロの胸に突き立てるシーン。
見比べて見ると分かるのだが、このコマはカメラワークや構図そのものは原作と同じであるにも関わらず、剣を突き刺すミホークの姿勢が微妙に違う。

原作版では短剣を持つ右腕が伸び切っているのに対し、Boichiさんの方ではヒジが若干曲がっており、地面に着けた足がゾロの方に傾いた姿勢となっている。

つまり振り抜いた右腕の力だけで剣を刺している原作に対し、こちらは右足の踏み込みによって勢いを付け、上半身全体の力を使ってゾロの身体を貫くような剣の使い方をしているという事だ。

どちらが良いかは好みの問題だろうが、こういう細かいところでも、作画によって動きに違いが出てくるところが面白い。


個人的なお気に入りは、やはりゾロが自らの名を名乗るシーン。

ここは原作では、『三千世界』を繰り出す為の構えを取った真正面からのカメラで描かれるのだが、Boichiさんの方では和道一文字の切っ先を中心とした、斜め横からの視点で描かれている。

次のページに描かれる、ミホークが『黒刀 夜』を抜くシーンと合わせ、双方とも見開きページで描かれる為、迫力もかなり強い。この「強者」と認め合う2人が、これから渾身の一撃を繰り出し合うのだというワクワク感を、より感じられる構図になっていると思った。



逆に違和感が強かったのは、キャラクターの表情
やはり尾田さんのキャラクターは独特な画風を持つ事もあり、再現するのが難しかったのか、かなり原作と異なる解釈の表情で描かれている事がある。

個人的に引っかかりを覚えたのが「死んだ方がマシだ」のコマで、これはゾロが胸に短剣を突き立てられたまま発したセリフなのだが、原作では汗を流しながらも口角が上がり、笑みを浮かべたまま発されるセリフなのだ。

ONEPIECEに置いて「死」と「笑顔」というのは非常に重要な繋がりを持ち、ローグタウンでのロジャーやルフィ、過去回想でのベルメールやヒルルクなど、死を覚悟した瞬間に笑顔を浮かべるキャラクターは非常に多い。

ここでゾロが笑みを浮かべるという事は、ゾロが死を覚悟し、それでも貫き通すべき意地を見せる。それを感じ取ったからこそ、ミホークもその心力の強さを理解し、『強き者』として認めたという流れがあると思う。
こちらの読み切り版では、ゾロの表情がシリアス一辺倒なものになってしまっていたので、その意味でちょっと弱かったかな。


他にも、全体的に凄みのないルフィの表情、斬りつける際に両足が横並びになってしまっている『三千世界』など、気になるところはいくつかあるが、まあそれは置いておく。

ともかく、慣れ親しんだいつものONEPIECEとはまた違う読み味を見せてくれる、という意味で、中々に楽しめる企画だった。

各作家さんとの画風・コマ割りの相性等もありそうなので、「誰がどのエピソードを描くのか」という所まで含めて、第2弾以降も期待かな。
と言っても、私ONEPIECE以外の漫画あんまり知らないんで、予想とか立てようがないんですけど。



あ、ちなみに今回の読み切り、本筋からブレるのでクリークさんの出番はほとんどありません。
単なるガヤ要因のモブみたいになってるクリークさんは地味に笑える。ミホークとの会話、テキトーに流されたし。合掌。