見てきました。
映画『スタンピード』。公開初日に。

1回見ただけなんで細部の事とかまで書けないけど、折角なんで大まかな感想でも。


本編の内容に触れる事にはなるので、
以下、『スタンピード』未見の人はネタバレ注意。







普段基本的に「映画を見る」という習慣がなく、映画館に足を運ぶのは3年ぶりの事だった。
3年前に見た映画は『FILM GOLD』。もう私にとっては、数年ごとに放映される『ONEPIECE』映画専用の施設と化している。


特に前置きも必要ないと思うので、見終わった瞬間の端的な感想。


物凄かった。

物凄く楽しかった。

そして物凄く疲れた。



疲れすぎて帰りの電車を間違えた。
上がった精神テンションが、体力を上回って襲って来る。

そのぐらい、『熱』の籠った映画でした。
尾田栄一郎がそんなに関わっていないのにも関わらず「コレ」が作れるのだから、ONEPIECEは安泰だ。



ハッキリ言うとこの映画、ストーリーらしいストーリーは、そこまで多く語られない。

重視されたのはバトル。
兎にも角にもバトル。ひたすらバトル。

そしてそのバトルや演出のデキが最強なので、バトル好きにはたまらない完成度になっている。


物凄く強いヤツがいっぱい集まって、最強決めるぞーってドンパチしてたら、飛び抜けて強い閻魔みたいなヤツが1人現れちゃって、全部ブチのめして最強になったるーって暴れ出すもんだから、強いヤツらがみんなで何くそーってそいつと戦う。


それだけのシンプルなお話に、最強の熱量と最強に魅力的なキャラクター達を叩きつけたらあら不思議、無敵の映画が完成していましたとさ。




冒頭から、万博を訪れているモブキャラ達に混じって、『ONEPIECE』に登場して来たキャラクター達をうじゃうじゃと配置。オタクのテンションにしょっぱなから火を着けてくる。
「何でこの人がここにいるの!?」というか、「そもそもどうやって来たの!?」ってなるヤツも混じってたりするが、うるせぇ細かい事はいいんだよ!
特に劇場版にしか登場してないあの人とかあの人とかも、そこそこの大きさで登場したりする。セリフこそないものの、中々のサプライズ登場。



とにかく登場キャラクターの物量が凄まじく、セリフつきでキチンと登場するキャラクター達には、ほとんどに何らかの活躍やバトルが描かれる。
まあ、コメディリリーフになっているメンツも若干名いるけど。
基本的には、勢いや熱量を重視したタイプの映画。それでいて、「ただ人気キャラを集めただけ」に終わらないバランス感覚の絶妙さが凄い。



序盤には最悪の世代同士のガチガチの殴り合い、中盤には彼らとの共闘、終盤にはルフィを中心に集った様々な勢力の共闘と、いわゆる「ドリームマッチ」の豊富さが、個人的な『お祭り映画』としての第一の良さ。
特に万全の状態のキラーがゾロと交戦した時なんかは、一瞬のシーンながら涙が出そうになったよ。原作のアレが今……ああだからさ……。

その他にも、ローグタウンではザコ扱いを受け、歯牙にもかけられなかったサンジがスモーカーと渡り合ったり、相手が相手ながらバスティーユさんが敵を屠っているシーンが描かれたり、あの戦桃丸を相手に膝をつかせるまさかのキャラが現れたりと、ワクワク感でいっぱいだった。



掛け合いやセリフ、シーンには原作のオマージュも多いのだが、それらも「ただ原作から引っ張って来ただけ」ではなく、原作のシーンを知っているからこそより楽しめる物も多く存在する。

例えばゾロが三刀流の奥義を繰り出すシーンなんかは、「あーあのシーンの焼き直しかなー」と思わせておいて、その後詰めに出して来るキャラクターにあの人をチョイスする事で、見ているこちらを驚かせると同時に未だ埋まり切っていないゾロとの格の差を感じさせる。

ローがとある「策」を持ちかけるシーンでは、その「策」を授けた人物が意外なアイツ……とか、色々ある。


とにかくONEPIECEが好きな人なら9分9厘楽しめる。
逆に言うと、「ONEPIECEはあまり詳しくないけど1本の映画として見たい」人にはあまり向かないかも。キャラクターを知っていてこその所はあるし、ドラマ性としては弱い面もある。




原作キャラクター同士のバトルも描かれながら、本作の要となるボスキャラクターは、あくまでもダグラス・バレット。
『鬼の跡目』と呼ばれるロジャーの元仲間だが、コイツがまた強い。

原作キャラも強い。最悪の世代は勿論強い。
万博内のバトルでその事を印象付けておいて、やっと登場したバレットが、更に規格外の強さを見せつける。
彼の生い立ちや人となりが分からない段階でも、「圧倒的に強い」というただそれだけで、もう魅力的なキャラに映ってしまうレベルで、強い。
ドラゴンボール顔負けのスピード感で繰り広げられる、最悪の世代との肉弾戦は必見。



そして、そんな最強の男を倒すために集まった勇士達。
本音を言うと、せっかくのお祭り映画にしては「いつものメンツ」感のある共闘メンバーだな、という感じはある。
しかしそれでも、流石の人気キャラ達。戦闘が始まっちゃえば、画になることなること。
最後の一斉攻撃のカッコ良さったらない。隣の席の人は小さく悲鳴上げてた。

ギア4のクールタイムどこ行っちゃったの、とか、
ハンコックどんだけ跳ぶねん、とか、
火炎竜王ってそういう技だっけ?とか、
ホワイト・ブローってまた小技で行くなー、とか、

色々とツッコミたくなる要素もあるにはあるんだけど、
そんな細かいところが弾け飛ぶぐらい、凄まじい迫力と盛り上げ方で、この熱戦を描き切ってくれた。



陣営を跨いだ共闘、そして彼らの力を借り、全霊の力でバレットとブツかるルフィも当然見所なのだが、この映画の影の主人公はやはりウソップ。
PV時点で「なんか死んでる!?」みたいな感じになってた時は正直、笑ってしまったのだが、まさかここまで彼の存在がピックアップされ、活躍するとは……。

物語の途中で、自身の非力さに涙する姿が描かれた時は、うーん、良いシーンっちゃシーンだけど、この映画にクヨクヨしたノリは似合わないかもなー、なんて思っていた。
やられた。あのシーンがあったからこそ、ラストバトルへと繋がったウソップの一打が輝く。
援護が花道。そんなウソップの『強さ』が、これだけの豪華メンバーを集めた劇場版で描かれたのは、良い意味で裏を掻かれたし、個人的にも最高にテンションの上がる瞬間だった。




ストーリーはあって無いようなもの、とも言ったが、そんな中でもロジャーが遺した宝という存在はかなり衝撃的なブツ。

具体的には言わないが、尾田栄一郎が「ONEPIECEを終わらせる気か!?」と言った意味が分かった。確かに、こんなものが誰かの手に渡ったら、ONEPIECEは一気に終わりに近づいてしまう。

見所はやっぱり、この宝を手にしたルフィの行動。
宝の正体が判明した時、「これルフィが今手に入れたらこうするだろうなー」と思った行動を、寸分の狂いもなく再現してくれた。

「ルフィらしさ」というものは読者それぞれに異なっている傾向があるので一概には言えないが、もしルフィが「こうする」人でなければ、シャボンディ諸島でのあのシーンは存在していなかった。「冒険の過程」を重視するルフィにとって、今回の「宝」は退屈なものでしかないのだ。



そしてラストのアレ
「スタンピードにアンが登場する」と聞いた時点で、なんとなく「あるのかな」と想像はしていた。
しかし、アンが初登場した舞台アトラクション『Phantom』にて、ルフィに助けられた礼として「あの人のビジョンと再会させてあげる」というアンの提案を、ルフィは断っているのだ。
その件があるので、映画版であの人のビジョンと再会してしまう、というのは、Phantomの物語が台無しになる感じがしてしまってもいた。

だからこそ、今回の「確かに登場はするものの、ハッキリとその姿が描かれる事はない」という落としどころは、かなり上手い形だったんじゃないかなと思う。
再登場による興奮値で言えば最高レベルのキャラクターであり、こういう形・こういう作品でなければ成し得ない事なので、「やらない」というのは流石に勿体ない話だし。

というかやっぱこの映画、演出が良いんだよな全体的に……。ファン心をくすぐり倒して来る手法がずるすぎる。
ラストも良いんだけど、そこに至るまでの伏線として、サボがスモーカーに対して放った技が『陽炎』だったり、その周辺でのセリフ回しだったりがもう……あの人を彷彿とさせて来て……。




総評としては、とにかく楽しかったの一言に尽きる。
個人的には、「面白い」より「楽しい」って気持ちが適している作品かな。何も深い事考えずに楽しむのが一番なタイプの作品なので。


少し残念だったところをあえて挙げるなら、尾田さんの描いたキービジュアルにも載っていたルッチの出番が、思ったよりも少なかった事かな。
先程も言った様に、共闘メンバーは原作時点からルフィに近しい、あるいは共闘経験のある者ばかりなので、この中にルッチが入ってくれれば、お祭り感も高まったんだが。
まあ、ルッチの立ち位置からして、この中にブチ込むのは少し難しかったんだとは思うけど。

あとまあ、全体的には駆け足だったかな。
あれだけのキャラや展開を納めなきゃいけないんだから、そうなるのも仕方ないんだけど。
ただ、無駄なシーンを極限まで削ぎ落しているからこそのスピード感や、熱量の維持を可能にしている側面があるので、そこは良い方向に作用していたと思う。



ちなみに、個人的なMVPはフェスタさんです。
あの狂気、良いわぁ……。戦闘面ではあんま強くないところも良いわ。



やー楽しかった。
楽しすぎて、通常版を買うつもりだったパンフレット、CD付きの方買っちゃった。
サントラ聞く趣味、あんまないのに。

あとは配布本やらパンフやらmagazineやら、堪能させてもらいます。


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……ところで、ラストで何故かモデラートさんまでヒナに捕まっちゃってたけど、彼なんか悪い事したっけ……?
MCとして万博に関わったのがアウトなら、アンさんもダメなんじゃ……?
過去の余罪がなんかあったんかな、やっぱ。