週刊少年ジャンプ2020年8号分の感想です。
ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 






■シャンクスの涙

バギーの看病を理由に、ラフテルへは同行しなかったシャンクスくん。
『ひとつなぎの大秘宝』を目の当たりにしたロジャー達が大笑いしていたのに対し、帰還したロジャーに質問をした後、シャンクスはなぜか涙を流した、と。

おでん視点での回想のため理由までは書かれていないけれど、現在のシャンクスが五老星と直接コンタクトを取れる事と関係あるんでしょうか。
まさか今更ロジャーの寿命に関することでも、ラフテルに上陸しなかった事を悔やんでるわけでもないだろうし。

シャンクスがした「質問」というのはラフテルやひとつなぎの大秘宝、そして世界の歴史に関する事でしょう。これらの秘密をロジャー達が解き明かした事で、元々生まれが世界政府側の人間であったシャンクスは、大好きなロジャー達とは相反する立場に立たなければならなくなってしまう……という様なことなのかな。

しかし「シャンクスはゴッドバレーで拾われた天竜人の子なのか?」と言えば、出身地の問題が出てくるため微妙なところ。
シャンクスは西の海を故郷と呼んでいるし、「肌にしみた水」と言っている以上、幼少期のそれなりの期間を西で過ごしている筈だし。
ゴッドバレーがどこの海に属するのかは分かっていなかったと思うけれど、当時は普通に偉大なる航路の最終地点を目指していたであろうロジャーが、わざわざ西の海に居合わせたというのも考えにくい。

案外、シャンクスの生まれ自体は今回の涙とは無関係なのかもしれない。
ロジャー自身は海を制し海賊王となったものの、レイリーが言うように「急ぎすぎた」旅であり、ロジャーの寿命ではどうあっても全てを見届けることはできない。それを知った事による無念の涙という見方も出来るかな。

頂上戦争後の第590話で、ルフィに対し心内で語った「泣いたっていいんだ 乗り越えろ」というセリフ。
あれは自分自身も今回の様な哀しみを経験し、それを乗り越えたからこその言葉だったんでしょう。
乗り越えた先に辿り着いたのが、ロジャーとは真逆の世界政府との繋がりというのも皮肉なものだけれど……これはこれで、最終的にロジャーの想いを遂げる結果に結びつくと考えてのことなのかな。



■『ひとつなぎの大秘宝』の由来

ワンピース、そもそもジョイボーイの時代からそう呼ばれていたものでもなければ、ロジャーが命名したものですらなかったのね。

名付けたのは世間。宝を見つけられては困る世界政府側が、わざわざ名を付けて注目を浴びさせる様なことをするとも思えないし、これは民衆の中で自然発生していった通称なんだろう。世経みたいな新聞屋が活字を躍らせたのかもしれない。

ワンピースとはラフテルにある財宝そのものと言うよりは、「ロジャーが手に入れた全ての物」を示すらしい。
ロジャーが手に入れたものと言えば「富・名声・力」とされているが、ラフテルにある「財宝」、海賊王という「名声」、そして古代兵器に纏わる情報という「力」を得られるので、あながち間違ってはいない気がする。
まあ、世間の人々が古代兵器の詳細など知る筈もないし、ただの偶然なんだろうけど。



■2人の王

魚人島を訪れたロジャー達の傍で海王類達が話していた「2人の王」の生誕。
「ぼく達の王」というのは人魚姫(しらほし)のことで、「遠い海で生まれる」もう1人の王の方はジョイボーイっぽい。
おでん曰く、ジョイボーイはいつかまた現れる存在らしいので、これは人名ではなく通称の様なものなのかな。「ジョイボーイの再来」みたいなニュアンスなのかもしれないけど。

この会話は26年前のものだと思われるので、「いち十コ」+「いち十5コ」=25年後のことを示しているとすると1年分の差異があるけれど、まあ誤差の範囲だし、しらほしは6歳の頃にはすでにポセイドンとしての力に目覚めているので問題はないでしょう。

それよりも気になるのはジョイボーイの方で、魚人島編では「ルフィの思いに導かれたしらほし姫の願いを、海王類が聞き受ける」という、いかにもルフィこそが人魚姫を導く王である様な描かれ方をしていた。
けれどそれにしては、海王類は自分達の言葉を理解したルフィをロジャーと重ねるばかりで、ルフィがジョイボーイであると気付いた様子がなかったのには違和感がある。
遠い海での王の生まれを10年も前から予知していた彼らが、あんなに近くにいて尚ジョイボーイとしての資質に気が付かないものなんだろうか。

実際のところ、ルフィにはあまりこう言った「生まれる前からのしがらみ」に縛られて生きるイメージはないので、新生ジョイボーイの正体には別の人物があてがわれる様な気がする。
もしくは、ルフィは確かにジョイボーイだったのだが、ルフィ自身がその宿命を蹴り、自分の意志に忠実に動くというのもソレっぽいかな。

何にしても、過去のジョイボーイやロジャー、おでん等が待ち望む男がルフィであっても、彼らの思い描いたシナリオを忠実になぞってくれる気はまったくしない。
自由でナンボの人間様ですし。誰かが望むからこう動く、のではなく、ルフィが望んだからこそこう動いた、の方が、よほどONEPIECEらしいという感じがする。

ラフテルへと辿り着いたルフィが、歴史の全てを知った時、ルフィ自身の意志や行動はロジャーと、ジョイボーイと重なるんだろうか。それとも全く異なる結論を導き出すんだろうか。

FullSizeRender
(ONEPIECE 52巻 第507話より)


ところで2人の王の出会いは、海王類達だけではなく何故かクジラ達も喜んでいるらしい。
海王類はポセイドンの従者の様なものだから分かるのだけれど、クジラ(=アイランドクジラ?)もそうなんだろうか。
クロッカスの話では「西の海にのみ生息する」種だったはずのアイランドクジラが、ルフィ達の魚人島出発の際には新世界にまで遠出して来ていたのも、2人の王の誕生を祝っての事だったのかも?



■ロジャー海賊団の解散

ウォーターセブンでルフィとウソップが決闘を行ったのは、ウソップがルフィからメリー号を手に入れるためだった。
海賊船というのは、基本的には船長の持ち物となる。だからこそ、船長であるルフィからメリー号を奪い取るため、ウソップは命をかけて決闘に臨んだ。

なので海賊団の解散時も、当然最後の1人になるまで船長が残り、船の終わりを看取るものと思っていた。しかしロジャー海賊団の解散時に真っ先に船を降りたのは、船長であるロジャー。これはかなり意外だった。

ロジャーは解散から1年ほどは生き永らえたが、名医であるクロッカスの見立てでは、既に末期の命だった。
シャンクスがロジャーに対し、「時には泣いて欲しかった」とも感じていたぐらいだし、ロジャー自身、仲間の前でもあまり弱さは見せようとしないタイプだったんじゃないかと思う。
加えて、ガープがダダンに語った人物像によれば、ロジャーは「愛する者を失う事を極端に嫌っていた」らしい。失いたくないからこそ、敵に仲間を追わせない様に「敵を逃がさない」と。

そういう人物だからこそ、自分が日に日に弱り、死んで行く姿を、仲間にも見せたくなかったんじゃないかと思う。自分の死を目の当たりにする事が、仲間達をどれだけ悲しませるかを分かっていた。船長でありながら真っ先に船を降りたのは、そういう思いもあったのかな。


ロジャーを1番に降ろした後、2番目に船を降りたのはおでん。
この時点でクロッカスさんは船に乗ったままなので、双子岬には寄っていない様子。世界一周とは言っても、ラフテルを越えて双子岬へと戻ってくるのではなく、改めて偉大なる航路を逆走して行かなきゃならないのかな。中々難儀な旅だ。

ワノ国に近い場所という事は、ロジャーが船を降りたのもおそらくは新世界だと思う。
海軍によれば、ロジャーは南の海・バテリラにて父親を思わせる行動を取っているとの事なので、海賊団解散ののちにバテリラまで1人旅をし、ルージュとの間に子を成す事になるのかな。
わざわざそんな長距離を旅した理由が分からないが、すでにルージュとは顔見知りで、最期に彼女に会うために旅をしたんだろうか。


解散と言えば、ロジャーが船を降りる瞬間に至って尚、オーロ・ジャクソン号に積まれた謎のタマゴの様なものはそのままになっている。
ラフテル到着どころか、結局解散のその時になっても変化はなし。中から何かが生まれた形跡もなし。
これはいよいよ、この大タマゴはタマゴなんかではなく、ただの飾りなんじゃないかなって気がしてきた。
そもそも、ロジャーがなんでこんなタマゴを持っていたのかも謎だし。

まあ何か意味のあるものなのだとすれば、ジョイボーイと人魚姫が現れるその時になって初めて、何かが生まれて来るものなのかもしれない。
レイリーがタマゴをどこかに隠したか、あるいはシャンクスを経由して、五老星側に渡っている可能性もなくはないか。
パンゲア城内にあったあの冷凍施設なんか、タマゴを安置する場所としては適しているかも?



■おでんの帰還

光月おでんがワノ国を発ち、白ひげ海賊団に加わったのが30年前。そしてロジャー海賊団解散後、おでんがワノ国へと帰還したのが25年前。
この25年前の時点で、すでにワノ国はカイドウの手に落ちていた様で。と言っても、今のように直接本人が滞在しているワケではなさそうだけど。

故郷を地獄に変えられ、家族を傷つけられ、怒り狂ったおでんはオロチに殴り込みを。
しかしここでオロチが死なないのは分かり切った事としても、おでんの処刑までにはまだ5年もの時間差がある。
すぐにオロチ・カイドウ軍との全面戦争にはもつれ込まず、5年間は共存期間があったと言うことだ。

康イエが死の間際に話していた、オロチがおでんに受けたという「大恩」。金を借りていただけというのでは微妙だし、おでんがここでオロチの命を取らず、見逃してやった事こそが大恩だったのではないかと思う。にも関わらず、オロチは5年後にそれを踏みにじり、おでんを罠にハメたと。
今更オロチにかける情けもないだろうし、おでんが殺人を躊躇うようなタイプだとも思いにくいが、オロチ側の策や、上手く言い逃れる術でもあったのかな?


おでん処刑までの期間は残り5年だが、来週辺りには回想の最終盤に差し掛かるだろうか。
元々この回想は、ロジャーの人生の一部を描くと同時に「おでんがどうやって死んだか」を見せるためのものなので、メインとなって来るのはこの辺りから。

この5年間をおでんがどう過ごすのかに加え、カイドウに一太刀浴びせたという戦い、そしてその壮絶な最期に至るまで、かなり濃厚な回になるんじゃないかと思うので、期待したいところです。