■扉絵連載
ベッジとヴィトがキスキス菌の残党に取り押さえられている中、海軍に敗北したはずのゴッティが必死におかみさんを助けに行きます。
近日発売の海賊無双4のCM内にて、登場シーンがモブキャラに置き換えられておりゲーム不参戦が決定したゴッティくん、面目躍如の時です。走れゴッティ!!!
……と、ゴッティくんが頑張っている横に何やら見知った男がいるな……これ、ギャッツか? ルーシーVSドフラミンゴを劇的に演出した、あの名実況者。
海賊やらキス魔事件やら、ゴッティの疾走による爆風やらで大騒ぎのドレスローザを悠然と闊歩しています。流石の肝の座り方だ。いや、単に鈍いだけなのかもしれない。
剣闘士風の鎧マントに身を包んでいた実況時とは違い、今日はオフの日なのかワイシャツ1枚というラフな格好をしています。
だが兜はそのままだった。それ、普段着なの?
■九里城のトキ、モモの助、日和
前回のナレーションを見るに、あのおでん軍VS百獣海賊団の戦いから彼らの処刑が決定するまで、少なくとも5日間以上は経過しているらしい。
トキやモモの助がおでんの投獄を知った様子がないので、花の都では見世物のようにされていても九里にまで情報が届いてないのか。トキの方はおでんを送り出した時点でどんな結果も覚悟の上なのだろうし、モモの助も何かを悟ったように泣いているけど。
モモの助の食事を毒見している家臣だが、この人はたぶん、41年前にスキヤキからの絶縁状をおでんに届けていた家臣ですかね。アレから21年が経ち、ヒゲにも相当白髪が増えているけど。

(ONE PIECE 95巻 第961話より)
当時は当然、スキヤキの家臣として花の都にいたハズだけれど、オロチが将軍に就いたのを機に九里城のおでんの下に身を寄せたみたい。
しかし最低でも21年以上も光月家に仕えてるって事はかなりの重鎮だろうに、毒見なんて仕事を未だ直々にやってるのね。
重鎮だからこそ「光月のためなら喜んで死ねる」という覚悟を持っているとも取れるけれど、それだけ光月家直属の家臣が減ってしまっているという事でもあるのかな。元々、おでんは家臣を多く持つのを嫌うタイプでもあるし。
■釜茹での刑
「熱湯で煮込んだぐらいであのおでんを殺せるのか?」という疑問が付き纏っていた処刑方法だが、単なる釜茹でではなく煮えたぎる油で一瞬にして命を奪うというやり方だった。
えぐい。一般人たるこっちは揚げ物しててちょっと油ハネただけでも大騒ぎだというのに。
というか処刑の執行という仕事とはいえ、普通に職務を全うしようとしただけなのに足を滑らせて事故死したオロチの部下が可哀想すぎる。
ってか、死に方がむごい。子供に見せられない映像と化している。アニメ化した時絶対に規制入るでしょこれ。
ONEPIECEは割と、エースやニューゲートの様な例外を除き「おそらく死んだんだろうな」という人物(モブ含む)に関しても死の瞬間そのものは画面に映さない(or生死を曖昧にする)傾向にあるイメージが強かった。
撃たれた瞬間は銃の方を映していたり、斬られた瞬間は遠目のカメラになったり、爆死の際は爆風だけを描いていたり。
シャボンディのオークション会場で舌噛んで死んだラキューバなんかは、実は普通に生き残ってたり。
でもこれ、もうそういうレベルじゃないよね。
どう足掻いても死んでるよね。肉、完全に焼け落ちてるもん。これで生きてたらブルック2号になっちゃうもん。
ペドロや康イエの様な名前付きキャラの死亡(したと思われる)シーンの増加は、「新世界での戦いの過酷さ」を描くために必要な要素だと思われるが、モブの事故死にはそう深い意味も感じない。
どちらかと言うと、作者の考え方の変動や読者の年齢層の上昇に伴って、ちょっとキツめの描写を入れるのも許容するようになって来てるのかな。ワノ国なんか特に、心理的に抉ってくるようなシーンや設定、多くなってるし。
■おでんの覚悟
処刑が決まったおでんがカイドウに願い出た「チャンス」。
それはカイドウの定めた「1時間」の間、9人の家臣全員を担いだまま油の中で耐え切ることだった。
お、おでん様……!!
豪傑。常人なら一瞬で命を落とす処刑を、これだけの枷を抱えたまま耐え切ろうとしてる。凄まじすぎる。
ネコマムシ達が言う様に、普通なら立場が逆なんですよ。家臣が主を守るのが普通。おでんは「おれは生きねばならない」と言っているのだから、その目的を果たすため、家臣に死を命じる。それだって主従のひとつの在り方であり、間違ったものではないんですよ。
でもおでんは、それをしない。
目的が何にせよ、家臣を踏み越えてそれを果たそうという思考がない。家臣が傷付くのなら、己が全ての痛みを負う。
この姿を見せられたら、光月の復活を待っていた武士達や残った赤鞘が、20年を経てもおでんへの忠義を失っていないのも納得する他ない。
組織のトップでありながら、仲間を守るために自分が痛みを受ける。仲間を傷つけさせないため、己が逃げず立ちはだかる。
それってまんまロジャーじゃないですか。ニューゲート最期の船長命令もそうだった。
豪傑達の気質は似るものなのか。一緒に旅をするうちに似ていったのか。
シャンクスは「時には逃げて欲しかった」とロジャーについて語っていたけれど、錦えもん達にとっても、この「主に身を挺して救われてしまった」ことは感謝と同時に、悔いとしても残りそうだなぁ。それを背負って生きているからこそ戦う意思に繋がる、とも言えるけど。
以前錦えもんが語った話では、おでんは「花の都にて罪人として亡くなった」との事だった。この釜茹での処刑によって、おでん本人は息絶えてしまうんだろう。
しかし多くの民衆が見守る中、この1時間の拷問を耐え切り家臣を救った上で死んで行くのであれば、それは「伝説の1時間」と語り継がれるに相応しい、見事な生き様である。
「おれは生きねばならない」と挑戦した拷問なのだが、残念ながらね、神視点で見る我々読者は、「この後おでんが生き残ることはない」という事実を知った上でこの瞬間を見守るわけですよ。
この回想は「おでんの死」に向かって走り出した物語なわけですから。つれぇわ。
おでんはワノ国を開国し、20年後の未来を待とうとした。共に世界の全てを知ったロジャーはもういない。ロジャーの意思は自分が繋ぎ、自分が全てを見届けねばならない。
それを果たせない事を我々は知っている。けれど、開国という意思は繋がることも知っている。おでんが守り抜いた家臣達に、その意思は受け継がれている。

(ONE PIECE 82巻 第819話より)
……ただ、ね。
破られるんですよね、このカイドウとの取引。
いや、1度は守られるのかもしれない。
守られたからこそ、錦えもん達は都を逃れ九里城へ駆けつけたり、おでんの愛刀2本を飛徹に預けたりといった行動が取れたのかもしれない。
確かに、今回の取引の内容は「生き残った者を逃がすこと」。つまりこの場にいないトキやモモの助、日和をカイドウ達が狙う事は、その協定には関係のない事だ。
トキ達を狙う百獣海賊団を、解放された錦えもん達が自ら邪魔しに行ったのなら、それを跳ね除ける事もまあ、ギリギリ違反にはならないだろう。
しかし91巻の錦えもんの話では、いがみ合うイヌアラシとネコマムシが追手に捕らえられたのは処刑場から九里城へと向かう道中の出来事。なるほど解放後すぐに追手差し向けてんじゃねーか!!!
これはアレですかね。「解放するとは言ったがその後すぐに捕らえ直さないとは言っていない」という事ですかね。いわゆるひとつのスパンダム理論ですかね。
まあ私、どっちかと言えばこれ正論だと思ってる側なんですけどね。

(ONE PIECE 40巻 第382話より)
……まあ、そもそもオロチとカイドウは1度おでんとの約束を反故にしているワケで。信用できるわきゃねーんですよね。
状況が状況なんで、守られる可能性の低さを知りながらも賭けに出る他になかったんだろう。
■オロチの過去と目的
これまで清々しいまでの外道っぷりを見せつけて来たオロチ様の過去と、本当の目的が明らかに。
これねぇ~、なんか生々しいんですよね。
「見ず知らずの“正義の味方”」なんて表現とか特に。あ~いるよね~ってなっちゃう。
時代背景や世界観を考えれば、統治者に対する謀反は重罪だし、その実行犯が処刑されるのはまあ、当然と言えば当然の話として。
時代や地域によっては、族誅だとか三族皆殺しだとか言って、重罪を犯した者の一族にも罪が課される事は現実にあったらしいですし。
ただ黒炭家の場合、家の失墜以降の迫害に関しては単なる民衆の私的制裁であり、ワノ国や光月家がこう言った制度を設けていたわけではない様子。
要するにアレね、「こいつは悪人の血筋なんだから何をやっても構わない」みたいなね。調子に乗っちゃった感じの民達がね。
ひぐらしババアと出会ったばかりのオロチ様からは、これと言って復讐心に燃えた雰囲気は見えなかった。
むしろ最初は「爺さんは大罪を犯したのだから仕方がないこと」ぐらいの反応を見せており、ひぐらしから話を聞かされるにつれ、徐々にスキヤキへの復讐心を露わにし出した。
たぶん、迫害を受ける中で、自分の存在そのものの是非が分からなくなったんじゃないかと思う。
かつて少年だったエースは、「海賊王に子供がいるなら当然死罪」という言葉を聞かされ続け、「おれは生まれて来ても良かったのか」という問いに悩まされ続けることになった。
この頃のオロチは、少しだけエースに近い境遇だったんじゃないかな。あまりにも自分の存在が「罪」と扱われる事が当然の世界にいすぎて、自分は本当に生きているだけで罪人なのではないかと思い始めていた。
しかしオロチは、そんな問いにエースとはまったく違う答えを見出してしまった。
2人にはそれぞれ、手を差し伸べ、答えを導き出すきっかけとなる人物がいた。
ルフィやサボ、ガープやニューゲート達がエースに「愛」を教えたのに対し、ひぐらしやせみ丸がオロチに教えたのは「復讐心」だった。
どん底の状態から這い上がるに際し、拠り所とした感情の違い。それこそが、黒炭オロチを戻り様のない悪に染めていってしまったんだと思う。
…………ま、じゃあオロチ様の所業は「環境ゆえに歪んだ同情すべき悪」なのかと言えば、まったくそんな事はないので。普通に外道は外道なのですけどね。
良いんです。私はオロチ様の、外道で策略家なところが好きなんです。そして無残で愚かな最期を遂げるところが見たいんです。
オロチを突き動かす原動力が「野心」ではなく「復讐心」だったのは少し意外……と言うか「案外俗っぽいんだな」という感じだったけれど、これらの過程や今現在の処刑されゆくおでんを見守るワノ国民衆の民度の低さからしても、まあ妥当ではあるのかな。
この世界の民間人、結構血を好みますよね。ドレスローザ国民に限らず。
しかし、当時はともかく20年が経過した今のオロチ様は、CP-0とわざわざ直接交渉してまで「戦艦」や「ベガパンク」を取引しようとしていた。
当初の目的は「ワノ国を力ですぐに滅ぼしてしまうのではなく、時間をかけて民衆を疲弊させ、じわじわと苦しめて殺す」ことにあったと思う。兵器という「武力」の所持は勿論民衆を締め上げるためにも役立つかもしれないが、ベガパンクの頭脳を要求しているとなると話は変わってくる気がする。
これらを求めている辺り、今のオロチ様は単なるワノ国への復讐心と並行して、世界に対抗しうる武力や科学力を得ようとするだけの野心を持つ様になっているんじゃないかな?
まあ、「カイドウが求めてる品を代理で伝えていただけ」という可能性もあるっちゃあるんだけど。
あとしのぶさん、ずーっと「内通者いるならこの人じゃね?」と思ってたんだけど、今週の涙の訴えを見るに可能性は相当低そうですね。
すまんしのぶさん。でも内通者は誰かしらいた方が面白そうだなとは思ってるよ。
しかしこのしのぶさんが、20年後の世界ではああなってるんだな、と思うとなんか、すげぇっすね。
時間の流れって、凶器よね。