週刊少年ジャンプ2020年13号分の感想です。恋するワンピース出張版やらアオハルやら、なにかと並びがカオスな号。
ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 


★もくじ
福ロクジュとしのぶ
おでんの死
黒炭ひぐらしの末路
開国  




福ロクジュとしのぶ


福ロクジュが正式にオロチ側の配下となったのはつい先日(カイドウとおでんの決戦直前)の筈だけれど、既に真実は知っているのね。
上司として一応はしのぶから報告を受けていたんですかね。降伏を促す際、恐怖を与える意味でオロチ本人が話したのかな。

オロチにこのまま預けていてはワノ国が終わる事は明白なので、お庭番衆がオロチ側についたのは「光月を裏切ってでもワノ国を守るため」とかではなく、単に武力に屈服しての事のよう。
逆に言えば、別にオロチにも大した忠義心はないだろうから、旗色が変われば再度寝返る可能性もあるかもしれない。
まあ、そんなにコロコロと寝返りまくる福耳ハゲ、信用には値しないのでアレだけれど。雷ぞう&しのぶの元お庭番衆コンビとのバトルに期待。


仕える主へのこだわりが薄そうな福ロクジュとは反対に、しのぶの覚悟はもう決まっている様で。
「全員生きて…次こそはあんた達を討つ」。確固たる意志を持って待ち続けた20年だったからこそ、覚悟の重みが違うロー達が作戦を漏らしたかもしれない、となった時に激昂したのですね。

分かっていた事ではあるものの、当時の視点から直接言葉にして聞くと、あのシーンの重みもまた増してくる様に思えた。




おでんの死


一般的な食用油は350度~400度ぐらいで発火してしまうそうだが、おでんを煮殺そうとする油の温度は700度以上。もはや「釜茹で」というより、炎に直接焼かれている勢いっすね。
カイドウが「お前の体はもう死んでる筈」と言っている様に、肉体としてはとうに限界を超えていたんでしょうね。あとはもう、精神力だけで魂を繋ぎとめているような状態。ゆえにあれだけの拷問を耐えきった男が、たったの鉛玉1発でトドメを刺されてしまったと。

約束が果たされない事が分かり切っていただけにやるせなさもあった前回だが、流石に2度も真っ向から騙される程おでんもバカ正直ではなかった様で。
おでんは自分が殺される事を前提にした上で、家臣を生かすためにこの死刑に臨んだのね。


どうせ力技で逃がすなら、1時間もの地獄を耐えきらなくとも最初からそうすれ良かったのかもしれない。
確かにそれでも、家臣を逃がす事はできる。
家臣さえ生き残れば、いずれ新世界に押し寄せる「巨大な戦いの主役達」と共にカイドウを討ち果たすことはできるかもしれない。

けれどそれでは、失墜した「光月家」への信頼はそのままである。
光月家に対する支持が回復しなければ、仮にオロチやカイドウを討てる者が現れたとしても、それはワノ国にとっての「反逆者」に過ぎず、スムーズに開国へと繋げる事は難しい。
何より愛する家臣たちを何とか生かしたとして、このままでは彼らはこれから先も「バカ殿の手下」という嘲笑を受けながら生きなければならなくなってしまう。

おでん自身、身勝手な生き方で彼らには色々と迷惑をかけてきた身でもある。
主として最期にできる恩返しとして、おでんはあの地獄の拷問に挑むことで、「光月」と「家臣たち」の名誉を守ろうとした、というところだろうか。

おでん自身がそこまで考えていなくても、光月家が20年に渡り侍たちの心を繋ぎ止めた背景には彼の雄姿もあるだろうし、お玉を始め郊外での不遇な生活に身を置く者達の希望にもなっていたと思う。
おでんの戦いは最期の最期に至るまで、ワノ国を守る結果に繋がっていたのだ。




黒炭ひぐらしの末路


ワノ国崩壊の諸悪の根源こと、黒炭ひぐらし
敵側の人物にして現在では死亡していることが明確であるという特異な立ち位置にいるババアだったが、この20年前時点において、彼女の目的はほぼ全て達成していた。

復讐相手である光月家はほぼほぼ壊滅し、ワノ国はすでに黒炭家が牛耳る国家へと変貌。
オロチが倒され光月家の力が復活してしまうであろう現代に生存していない以上、彼女は黒炭家の最盛の時代を目の当たりにし、そのまま死んで行ったことになってしまう。

彼女がオロチを焚き付けた事に始まった動乱だと言うのに、それではあまりにも勝ち逃げが過ぎる。
これはどこかのタイミングで、ひぐらし自身がオロチに裏切られるなどして、惨めな末路を迎えていくに違いない……などと思っていたのだけど。

まさかコマにすら描かれない場所で消されてるとは思わなかったよ。
マンガの世界に生きるキャラクターとして、ある意味で最も虚しい末路と言えるかもしれない。ハリーポッター映画で「マッドアイが死んだ」の一言で済まされていたあのギョロ目爺さんを思い出す。


しかしこのカイドウとおでんのやり取り、個人的に無茶苦茶好きだ。

自分は数話前、ひぐらしの横槍によって気の逸れたおでんを殴り倒した時のカイドウの表情を「相手の想定外の強さを痛感したことによる余裕のなさ」と捉えていたが、実際には「不本意な勝ち方をしてしまったことによる複雑な表情」でもあったわけだ。

カイドウは恐らく、仁義や約束よりも「目的の達成」を最優先とする人間だと思われる。目的のためなら平気で相手を騙すし、守るつもりのない約束を結んだりもする。
だがその反面、「戦い」そのものに関しては誇りを持っていたんだろう。勝負の外で相手を謀ることはするし、勝てる盤面を整えるために時間を稼いだりもする。
それでも、勝負そのものには真っ向から挑んでいたんじゃないか。逆に言えば、真っ向から挑んでいたからこそ、海賊人生の中で何度もの敗北を経験してきたのだ。

けれど、個人と個人の実力のぶつかり合いが始まったあの局面において、人質という「実力」から外れた行為によって勝ちを拾ってしまった。「戦い」と「策謀」をない交ぜにしたひぐらしの行動は、カイドウの流儀に反するものだったんだろう。

うーん、何とも厄介な男だ。
ひぐらしからすれば「ピンチっぽいし助けてやるか」という良かれと思っての判断だったんだろうが、それが逆に明王の逆鱗に触れてしまったわけだ。
意外と理性的な面もあるのに「話が通じる相手ではない」と思われてるのも、酒癖の悪さだけでなく、「歪んだ部分と真面目な部分」の線引きが他人から見て分かりにくいせいなのかもしれない。


おでんの「せいぜい強くなれ」というセリフも良いですね。
相手は故郷を乗っ取り、約束を反故にし今まさに自分に銃を向けている人物なわけで。そんな相手に、このセリフ吐けますか。
まず常人じゃ無理ですよ。文句のひとつも言いたくなりますよ。

処刑寸前のおでんは、家臣を救う行動や開国についての話など、基本的には「主として」の立ち振る舞いをしている。しかしこのセリフに関しては、おでんの「海賊として」の一面が垣間見える気がする。
実際、この時点でのカイドウの実力は、おでんには僅かに及ばないものだったんだろう。ひぐらしの横槍がなければ、あのまま負けていたかもしれない。

そしてこの言葉を受けた20年後、カイドウは実際に「この世における最強生物」と称されるまでの力を手に入れている。
だがどれだけ強くなっても、おでんとの再戦を果たすことはできない。その引き金は、20年前に自分の手で引いてしまっている。
皮肉な話だけれど、意外とカイドウの中でもこの件はしこりになってるのかもしれないな。世界そのものを「退屈」と言うようにまでなってしまったのも、おでんの事と無関係ではないのかもしれない。




開国

800年前から続く鎖国体制を崩そうとしたおでんだが、それは何も「鎖国」そのものが悪だと判断したからではなかったのね。

約900年前から続く「空白の100年」の中で、『ある巨大な王国』と、のちに世界政府となる『連合国』の戦いが発生した。
光月家は敗北を悟った『巨大な王国』のために『歴史の本文』に真実を刻み、世界中にバラ撒いた。その後『連合国』からワノ国を守るため、鎖国体制を敷いた、という流れかな。
守りたかったのは国と同時に、必要となった時に歴史の本文を読み解ける「技術」もか。


おでんが待っている人物、というのはジョイボーイだろう。
ジョイボーイが再来した際、ワノ国との協力体制が潤滑に敷けるように、国を開けておかなければならないと。

だがおでんの見立てによれば、いずれワノ国を訪れるであろう人物は、他にもいた。
頂上戦争にてニューゲートも言い遺していた、いずれ巻き起こる「巨大な戦」。
その主役となる人物たちが、約20年後に新世界を訪れる。カイドウを倒す人物も、その中から現れると。
つまりカイドウを倒す人物が外の世界からワノ国にやってくる事を予期している事になる。


オロチ・カイドウの打倒なくして、開国などあり得ない。
おでんがトキに能力の行使を依頼している以上、おでんがダメだった場合、元よりワノ国の開国はカイドウを撃破する条件が整う20年後まで先送りにする算段だったと思われる。

つまり順序としては、

1.「巨大な戦」の主役が新世界へ
2.その者達がカイドウを撃破
3.ワノ国開国
4.ジョイボーイがワノ国へ


となる。
その流れで言うと、今すでに錦えもんらと協力し、ワノ国内に踏み入っているルフィやロー達は、ジョイボーイである可能性は低くなったと思う。
現時点でも問題なく協力体制を敷けてしまっている以上、開国の必要性が薄まってしまうからだ。

ジョイボーイは現在ワノ国におらず、年齢的には数年分の誤差を加味して、20歳以下ぐらいの人物だと思う。
……コビー?(超適当)



ジョイボーイについてはヒントも少ないのでアレだけれど、それよりもおでんを戦いに送り出してからのトキの覚悟が見事。
おでんの投獄を実際に目の当たりにした上で、子供達を不安がらせないようそれを表に出さず、いざ彼の死を知っても涙を堪えてやるべき事に向かう。
ロジャーを彷彿とさせる言葉まで発するなど、おでんと肩を並べる立場に恥じない、堂々とした姿だった。

「物語は現代へと~」とのことだが、回想は今回で終了なのかな?
片鱗こそ見えたものの本格的な喧嘩には発展していないイヌネコのくだりや、カイドウがモモの助に「お前の親父はバカ殿だ」と言い放つくだりなんかは拾われていないけれど、来週の前半でこの辺りをさらって現代へ~って感じだろうか。

まあこの辺りは「おでんのエピソード」とは直接関係ないのでアレだけれど、トキの最期についてはここぐらいでしか語れる隙間が無さそうなので、見てみたいような気がする。





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