誰かイワンコフを連れてこい。

週刊少年ジャンプ2020年31号分のONE PIECE感想です。
ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 






■扉絵連載
ローラ&シフォン、いわゆる「エネル顔」披露の巻。 

……なのだが、いかんせん元の見た目がアレな2人のため、いまいち変化に乏しくインパクト不足に終わるのであった。合掌。



■うるティ&ページワン
象銃でブン殴られただけのペー君はともかく、うるティまですぐに戦線復帰してくるとは予想外だった。
動物系能力における「異常な回復力とタフさ」は能力の覚醒によって得られる特徴だったが、どうも恐竜系の能力者にはデフォルトで備わっている強みらしい。まあ似たようなタフさはゾウゾウの実の能力者であるジャックも持っていたんで、リュウリュウの実と言うよりは『古代種』の能力者全般に共通する特徴なのかもしれないが。

即復活したとはいえ、雷鳴八卦の直撃を受けた事による手傷はそれなりに重かったらしく、やはり万全とは行っていない様子で。
事前にダメージを負っている事によるハンデ戦という事で、ナミやロビン辺りと戦ったりするのかしら。フルHPの状態ではまず勝てない相手だと思うし、彼女らを戦闘面で活躍させるなら多少のお膳立てはあっても良い気がする。
ただ、古代種の能力者がそのタフさだけでなく回復力も兼ね備えているのであれば、戦いの時までにしれっと傷を癒して来る可能性も大いにある。そういえばリンリンにブン投げられて一度はノビてしまったクイーン様も、鬼ヶ島に到着した頃には既にケロッとしていた。案外ヤマトにやられたダメージなど大して尾も引かず、万全の戦いを披露してくれるのかもしれない。

しかしうるティさん、雷鳴って。
なんかどっかで聞いた発想だなぁと思ったら……

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(「ONE PIECE」 22巻 第200話より)

……なるほどなるほど。
要するにうるティさん、脳の思考回路が概ねルフィと同レベルなんだな。
従えてるカイドウさんが急にスゴく見えてきた。



■ロー&赤鞘 鬼ヶ島侵入
潜水艇を利用した島裏口への迂回からの、『シャンブルズ』による少数での鬼ヶ島乗り込み。
乗り込んだメンバーは、ハートの海賊団からロー、ベポ、シャチ、ペンギン、赤鞘九人男から菊の丞、雷ぞう、イヌアラシ、河松、アシュラ童子の合計9名ですね。

クリオネとかはほぼモブキャラなので仕方ないとして、元キャプテン・ジャンバールもお留守番組なのはちょっとだけ残念。せっかく「海賊船長→奴隷→ハートの海賊団クルー」という波乱万丈な人生を送るお方なのだが、活躍に恵まれないなぁ。
まあ、強さとしてはゾウ編にて暴れるBBに容易くブン投げられる程度なので、正直なところ大した戦力にはならないだろう。ああ哀しきかな、実力主義の海賊道。

ベポはまだ拳闘術によって(モブ相手だが)無双するシーンも描かれた事があるので良いとして、ほならシャチとペンギンの実力はどうやねんという所なのだが、こっちはこっちでうーん。
レイリーの覇王色を絶え凌ぐ程度の力はあるにせよ、上のゾウ編のシーンではBBやロディに「手がつけられない」との零してしまっていたし……。
まああのミンクたち、アレでもペドロを欠いた現侠客団の中ではマトモに名前が出ている唯一のメンバーなので、意外と実力者なのかもしれない。しかしそれを差し引いても、ハッキリ言って他が強すぎる乗り込み組メンツの中では、シャチやペンギンが戦闘面で大活躍を果たすのはちょっと、難しそう。
それでもそんな彼らを連れて行くのは、付き合いの長いローなりの信頼の証なんだろう。ベポ達が足を引っ張ってしまう展開は羅刹町に捕らえられる件でもうやったので、再度彼らが足手まといになってしまう事にはならないハズ……と願っておく。



■マルコ&イゾウ&ネコマムシ、到着
高いところからこんにちは。遅れてやって来たネコマムシの旦那がようやく合流しました。

……ネコちゃん、あんたなんか、えらくファンキーな腕になってるね。
90巻での白ひげ故郷のシーンどころか、たった数話前の登場シーンですらこんな機銃型の義手は取り付けていなかった様なので、割と簡単に着脱可能なものなんだろう。電伝虫を使う文化さえないミンク族にこんなものを作れる技術力がある気はあまりしないが、フランキー辺りの置き土産だろうか。

デザインの変化としては、うーん、個人的に言うのであれば、そんなに好みではなかったかも。
というかONE PIECE、このテの銃火器型の義手つけたキャラ、割といるしね。扉絵でも活躍中のゴッティとか、百獣海賊団のアイアンボーイ・スコッチとか。名前あるのか知らないけれど、白ひげ海賊団にもいた。

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(ONE PIECE 57巻 第553話より)

けどまあ、全体的に地味よね。
腕からマシンガン放つキャラ、全体的に戦法の幅を広げにくくて、扱いづらいのかな。かのゼファー大先生だって、あんなに強力なスマッシュバスター、最後には投げ捨てて戦ってたしな。
まあネコマムシは長槍使いとはいえ、片腕でもイヌアラシと打ち合えるパワフルさを持っていたので問題ないと言えば問題ないか。エレクトロを纏わせた銃弾を囮に強襲を仕掛けるとか、義手だからこその戦い方でも見られれば良いなと思います。

イゾウさんの方は、落とし前戦争で負ったと思しき傷を除けばそんなに変化は無いのだが、強いて言うなら微妙に美形度合が上がった気がする。
垂らした前髪が一束から二束になったり、口の中央にしか塗られていなかった口紅が全体になったり、細かいディティール部分の変更が入ってるのが印象を変えてるのかな。

弟である菊の丞とはイゾウの白ひげ海賊団加入(おでんの出国時)以来の再会だが、その間に菊の丞は20年間の時をすっ飛ばして来ているので、お互いの体感時間にはかなりの開きがある。
菊の丞からすれば10年ぶり、イゾウからすれば30年ぶりになるのかな。何歳なんだイゾウ。
イゾウの方がよほど久しぶりという事になるが、感情を乱しまくってるのは菊の丞の方。この辺は性格的なものや、兄としての振る舞いというのもあるんだろうが、やはりおでんの死にも立ち会えず、国を放置したままだった事に対する罪悪感もあるんだろうか。
白ひげ海賊団として活動していた頃ならともかく、落とし前戦争から1年経って未だにワノ国に寄り付いていなかったのは、単に「おでんの死や国の状況を知らなかったから」というだけでは考えにくい。やはり赤鞘の仲間達や菊の丞に対しても、どこか後ろめたさを抱えていた1年間だったんじゃないかと思う。



■ヤマト
カイドウの子として名前だけが登場しており、前回仮面をつけた状態で姿を現したヤマト
今回はその仮面の下の素顔が初お披露目となったわけだが、その正体はなんと女性
騙された。カイドウから「息子」と呼ばれていただけでなく、ブラックマリアやその他部下達も「ぼっちゃん」と呼んでいたからなぁ。

しかし実際、飛び六胞であるうるティより格上っぽいし、ギア3のルフィと渡り合ってるし、相当強そうではある。女性陣としてはリンリンがダントツの最強として、次点にハンコックやスムージー姐さん、ステューシー辺りが候補に挙がるのだろうけど、そこに食い込めるかな…?

光月おでんによく似た衣装を着こんでいた事が気になっていた彼女だが、その理由としてはおでんへの憧れという事らしい。
というか、憧れを通り越して成り切りを始めてしまったらしい。あの伝説の処刑を目の当たりにしたのなら影響を受けるのは納得だし、20年前の事だから10歳以下?ぐらいの年と考えれば、変身ベルトに憧れる少年のように「おでんになりたい」と考えるのも分かる。
が、アラサーぐらいの年になってもそれを貫いてるのはある意味すげぇな。
フィクションだから個性立ったキャラクターとして見れるが、現実にいたらかなり痛い子扱いになってそうだ。

本人曰く「僕は男になった」との事で、そう言われると身体と精神の性別を異にする菊の丞に近いのかとも思えるが、ヤマトの場合はあくまでも「光月おでんを模倣する手段」として男性性に拘っているのだろうし、LGBT的なものとはまた別のお話だろう。いわゆるロールプレイ、ネナベとかの方が、概念としてはたぶん近い。
パッと見、ヤマトを息子として扱っているカイドウさんが性的少数派に寛容な人かの様に見えてしまうが、これも多分、ヤマトが男として育ってくれるのがカイドウにとっても好都合だったんだと思う。

百獣海賊団全体や飛び六胞の陣容を見ると、カイドウは実力さえあれば部下の性別は問わない考え方の持ち主の様だが、それでもやはり強さを得られる「可能性」で言えばどうしても男の方が高くなってしまう。
肉体的にもそうだが、何よりもヤマトが女性としての生き方を望むように育てば、いかに素質があろうとも本気で拳を磨き実力を高めようとする可能性は低い。男尊女卑の風習が少なからずある(らしい)ワノ国で育つのであれば猶更だ。
実力者を集めて最強の軍勢を作ろうとしていたカイドウにとって、折角自身の強靭なDNAを持つ我が子が強さに無頓着である事など、損失でしかないだろう。


以下完全な妄想。
カイドウは元々、ヤマトを男子として育てようとしたんじゃないだろうか。女児として生まれた娘にわざわざ「ヤマト」という男の名を与えた辺りからも、カイドウが本来なら男児を望んでいた可能性は高い。
カイドウは我が子を、自身の力に匹敵する様な実力者に育て上げようとした。性別に特別拘るカイドウではないかもしれないが、力を求めれば必然、女性らしさなど不要。カイドウが我が子に望むものも、男としての生き方に近くなって行くだろう。だが当初、ヤマトはこれに反発したんじゃないか。
伝説の瞬間を目の当たりにしたとはいえ、たった1度見ただけの「父親の敵」にあそこまでの憧れを抱く辺り、当時からカイドウとの間にまともな親子の信頼が築かれていたとは思いにくい。
「光月おでんは男だろ!? だから僕も男になった!!」という言葉には、「父親の命令」ではなく「おでんへの憧れ」からこの生き方を選んだという、自分自身の意志を強調する意味合いも込められていたのだ。

自身にとっても宿敵であった男である光月おでんになりたい、などとのたまう娘に対し、カイドウはブチギレた。そこには「おれの子の癖に何を言ってやがる」という思いもあれば、「あの男になりたいなんざ簡単に言うんじゃねェ」という思いもあったのかもしれない。カイドウにとっても、おでんは敬意を払うべき強敵であった。
この一件により親子仲は致命的なものとなり、ヤマトも本来カイドウが求めた生き方とはまるで異なる、おでんの模倣という道を歩み始めた。だがそれでも、当初強さを磨く手段として強要した「男としての生き方」だけは、皮肉にも合致してしまう事になった。
思っていた形とは違えど、言い聞かせようにも簡単に折れる我が子ではない。それこそ、うるティが呆れる程の「家族問題」を引き起こしながらも、ヤマトは日に日におでんの意志に染まっていってしまった。そんな過程を経ながら、カイドウからの彼女に対する皮肉交じりの「息子」としての扱いは完成したのである。
以上、妄想終わり。



エースとも出会った事があるというヤマトだが、どうも赤鞘九人男の生存は知らないらしい。
おでん信者である彼女のこと、トキの予言を耳にしていれば光月の復活を信じていてもおかしくないが、聞いてないんだろうか。予言の歌そのものは与太話として今もそれなりに伝わっている印象だったが。百獣海賊団内では「ヤマトにその話聞かすな」って空気になってても不思議はないが、九里に出入りしてるなら村の老人とか……いや、流石にいくらおでん派と言えど、カイドウの娘が気軽に村人と話すのは難しいか。

気になるのは、光月おでんの意志をまず第一に受け継ぐべき存在である息子・モモの助の生存を彼女が知った時の反応だ。
ヤマトが今、自分がおでんの意志を継ぐと息巻いているのは、赤鞘や光月の血統が絶えたものと思い込んでいるからだ。それが実は今も現世に残っている事を知った時、彼女は気持ちを切り替えられるんだろうか。
自分以上に、おでんの意志を継ぐにふさわしい存在がいる。それはつまり、彼女が光月おでんになる必要性はどこにもないという現実であり、彼女の歩んできた人生の否定にも繋がりかねない。
ヤマトがモモの助と邂逅した時、彼女はその存在を受け入れるのか、あくまで二代目おでんという自分自身の意思を貫くのか、あるいはカイドウ同様、あまりにか弱いモモの助に失望するのか。
色んなパターンが考えられそうで楽しみだ。



……ところで、彼女が拾ったおでんの日誌、やっぱ『ひとつなぎの大秘宝』の正体についても細かく書いてあるんですかね。劇中でモノローグとして流れたのはあくまで抽象的な事柄だけだったけど。
もし書いてあるなら、その日誌、目の前のゴム男にあんま見せない方がいいよ。焼かれるかもしれないから。ホラ……貴重な永久指針とか、握り潰しちゃう人だから。気を付けて。