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週刊少年ジャンプ2020年33・34合併号分のONE PIECE感想です。
ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 





■菊之丞 VS カン十郎 
鬼ヶ島裏口へと回った赤鞘達を待ち受けていたのはカン十郎。
曲がりなりにも仲間として長い時を過ごしていただけあって、彼らが簡単に諦める筈がない事は分かっていたらしい。侵入経路に裏口を使う作戦は、カン十郎も伝え聞いていた事だしね。

今回カン十郎らと出くわしたメンバーは、菊、河松、アシュラ、イヌ、ネコの赤鞘達にイゾウを含めた6人のみ。共に上陸していた筈のローやベポ、シャチ、ペンギンは、別行動になっている様子だった。(マルコは前回、「海で見かけた妙な影」の様子を見に行くと言っていた)
鬼ヶ島の裏口には上下2つの入り口がある事が前回説明されていたけれど、ロー達は下のルートから侵入しているんだろうか。ローは上のルートがカイドウへの道と予想していたけれど、何か策でもあるのかな。
ローは羅刹町に囚われた時、その脱走を手引きしたドレーク(らしき影)に対し、「おれを逃がす事がお前の陰謀なら乗ってやるよ」と告げていた。ルフィや錦えもんにも伝えていない、何らかの思惑を持って動いていても不思議はないかもしれない。


カン十郎に連行される道中、1度は自力で逃げ出そうとしたというモモの助
ボコボコにされた上に磔にされている現状を考えると、悲惨と言うか苦しいものもあるが、自分の力で抵抗を試みただけ中々立派になったものじゃないか。

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(ONE PIECE 96巻 第974話より)

モモの助を組み伏せて殴りつけるカン十郎の姿が、わざわざシルエットになっているのが気になる。
そういえば、彼はオロチ様から「役」を与えられる前までは、不定形の不気味な影のような姿で描かれていた。なにかに成り切った芝居を演じる事で、彼は初めて人間としての姿を保てているのだ。あくまで演出上の話だが。

以降、カン十郎は与えられた役に忠実に生きて来たわけだが、モモの助に斬り付けられた瞬間は「頭にきた」と感情的になっている。
この一瞬、素の感情を剥き出しにした彼は、珍しく演じている「役」を忘れ本来の自分に戻ってしまったのではないか。演じている「役」よりも怒りという「本能」が勝った。何かを演じる事でしか生きられない男が演技を忘れた事で、その一瞬、彼は再び「影」に戻ってしまったんではないか。

カン十郎がオロチ様より与えられた役は、「光月家として生き、光月家として死ぬ事」だった。しかしこの役は、自身の正体を錦えもん達に明かしてしまった時点で既に完結している。「心を失い、何者かを演じる事で生き長らえていた」という彼が今も人間として活動している以上、彼は新たな役割を今なお演じている事になる。
黒炭オロチの家臣、あるいは光月家の敵という今の姿さえも、彼にとっては自らが演じる役のひとつでしかないのかもしれない。

今話の最終ページでは、刀から血を滴らせ涙を流す菊之丞の姿が描かれている。
カン十郎自身も「時間を稼げればいい」と発している事もあり、流れ的には、かつての仲間であったカン十郎を斬り捨て涙する姿にも見えるけれど、どうなんだろう。
個人的には、カン十郎には改心する事なく敵として死んで行って欲しい派なのだけれど、あまりにもあっさりしすぎているのも事実。今週号ではオロチ様もああなって、黒炭家全滅……となるのだが、黒炭家が受けた迫害の歴史を考えると、単純な勧善懲悪で済ませるのもすっきりしない所はある。
カン十郎はまだ生きていると思う。または死んだとしても、菊達がその死を背負おうと思える何かを遺して逝くとか。


ちなみに、ネコマムシの義手については前回お披露目されていたけれど、イヌアラシの左足にも知らんうちに義足代わりの刀が取り付けられていました。金獅子のシキかな?
お互いの義手・義足を褒め合う2人。仲いいね、キミら。ついこないだまで殺し合いに発展しかけてたとは思えん。
けど義手はともかく、義足の刀はそれ安定性最悪そうだけど大丈夫なんだろうか。まあ片足でもアシュラと互角にやり合えてたし、大丈夫なのか。わざわざ刀くっ付けたのも、見栄え重視が半分ぐらいだろう、たぶん。



■ヤマト
8歳の頃から、鬼ヶ島に監禁状態だというヤマトくん。ササキさんが「島は出られねェ筈」と言ってたのは爆発する手錠があるからなのね。
ヤマトが島に監禁されたのは、「光月おでんになりたい」と言った事にカイドウがブチギレたからだろう。おでんの処刑は20年前なので、特に時間差がなければヤマトは今28歳という事になる。28歳と言えば、モモの助と同じ年に生まれた子供なのね。

8歳から監禁状態という事は、エースと出会ったのも鬼ヶ島の内部での事になる。エースはワノ国本土だけでなく、鬼ヶ島にも立ち入っていたのだ。
……何をしに?
エースは編笠村で、デザートが手に入る場所を尋ねていた。デザートを取るために鬼ヶ島まで行ったんだろうか。でも果物やなんかなら、九里の中にある桃源農園を襲うのが手っ取り早いだろうしなぁ。

「光月おでんである僕としては」と初っ端からエッジの利いたセリフをかまして来るヤマトだけれど、同時にルフィに対する「君の方がおでんかもな」や「おでんなのに僕は自由じゃない」と、自身がおでんに成り切れていない事は自覚しているらしい。
どうもヤマトから見た光月おでんというのは、「自由」を体現した存在である様に見える。「光月おでんになりたい」なんてぶっ飛んだ言い回しをするからややこしいのであって、要するに「光月おでんの様に自由に生きてみたい」というのが、ヤマトの本来の望みなんじゃないかな。



■カイドウ&ビッグ・マム
四皇2人が手を組むという史上最悪の海賊同盟、その目的は、『ひとつなぎの大秘宝』を手に入れる事だった。
同時に『古代兵器』を手中に収め、暴力の世界を作り出し、いずれ来る『世界の大戦』に臨むための戦力を整える事までを見据えているらしい。

大物達の『ひとつなぎの大秘宝』を視野に入れた動きが明確になって来た辺り、ONE PIECEの物語も遂に終盤戦に差し掛かって来たんだなというのを改めて感じさせられる。
しかしカイドウにとって、『ひとつなぎの大秘宝』の入手はあくまでも前哨戦であり、本当に興味があるのは『古代兵器』の方であるという印象を受ける。

というか、古代兵器を手に入れる事とひとつなぎの大秘宝を獲る事を同一視している様にも読み取れる。カイドウ達の認識の中で、この2者は同じ物なんだろうか。
秘宝を前にしたロジャーの反応を見るに、まず古代兵器とは無関係の代物だと思うが……まあカイドウ達も秘宝の正体を正確に知ってるわけじゃないだろうし、あくまで推測で動いてるんだろうけど。

ラフテルを目指すという事は『ロード歴史の本文』の文章を解読する必要があり、光月おでん亡き今それが可能なのは、ロビンとプリンぐらいしかいない。
プリンの「三つ目族の覚醒」を呑気に待つような雰囲気でもないし、ロビンの身柄が狙われる可能性は高いようにも思うけれど……今のところ、そんな素振りもないんだよな。ロビンが古代文字読める事、知ってんのかな、彼ら。



■オロチ斬首
今週のびっくりポイント。
なんとカイドウさん、20年以上に渡って連れ添った相方を、あっさり斬り殺してしまいました。
地味にカイドウに刀を差しだすキングの所作がキレイ。大看板には伝えてあったのね、あの大舞台でオロチを殺す事。

まあまあの頻度でサシ呑みしてたり、利害の一致で繋がった間柄とはいえそれなりに親しくしてるのかな、と思わせといてのコレである。
登場初期にあった「話の通じないキチガイっぷり」が最近では鳴りを潜めていたところもあったので、この情の欠片もない行動はカイドウらしさに溢れてて、個人的には割と嬉しかったかな。

逆にオロチ様の方は、ここで終わりなのかという所。
個人的には、カン十郎同様、まだ生きていると思ってる。カン十郎の項目でも書いた様に、これでは黒炭家が受けて来た迫害という要素が、ほとんど働いて来ない。カイドウにとっては「どうでもいい話」でも、ワノ国という土地の物語を描くにあたって、光月家と黒炭家というのは重要な要素の筈。それをこんなにあっさりと、ワノ国と無関係な第三者の手によって終わらせてしまう、というのは、ちょっと考えにくいんじゃないかと。

生存手段については、カン十郎の描いた影武者って線が妥当かな……。八岐大蛇の能力を応用してフェイクの首と摩り替えたとも考えられるが、動物系能力があくまでも「変身」能力である以上、人型の状態で首を落とされればタダでは済まないだろうし。
カン十郎から赤鞘九人男の生存を聞かされたオロチ様は大層怯えておられたし、磔台に自ら姿を晒すのを恐れて影武者を用意していた可能性は考えられる。切り口から血が流れているが、錦えもんがカン十郎(の影武者)を斬った時も、血だか墨だかが飛び散る描写はされていたし。





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