衝撃のラスト。

週刊少年ジャンプ 2021年 15号分のONE PIECE感想です。
ネタバレに配慮していないので、自分で買ってから読んでください。




■お庭番衆と見廻り組

氷鬼のウイルスによって死力を呼び覚まされたヒョウ五郎親分の活躍が描かれた前回からの続き。
寿命と引き換えに手にした力により、お庭番衆や見廻り組と言ったオロチ軍の主力達を一掃したヒョウ五郎だったが、遂にウイルスに抗う力を失い、弥太っぺ親分に自らの首を斬り落とすよう命じる……と言った流れ。

前回の時点で見廻り組が一瞬でやられちゃったのは分かってたけど、お庭番衆まで倒されちゃってたのね……。
この2チーム、敵陣営の中でも数少ない、百獣海賊団ではなく「オロチ配下の」敵達だったので、なんの活躍もなく退場してしまったのは惜しかったな……。ただでさえ狂死郎一家が抜けて、オロチ陣営は手薄になってましたからね。
残すところはフラッと戦場から姿を消してしまった福ロクジュのみですが、果たしてどうなるか。


あと地味に「“お庭番衆”と“見廻り組”の隊長達がほとんどやられちまった」っていう表現が気になったんですけど、見廻り組の隊長ってホテイ1人じゃないんですかね。
確かにオロチ死亡時に鞍替えした時の名前紹介をよく見ると、福ロクジュが『元お庭番衆 隊長』なのに対して、ホテイは『元見廻り組 総長』と、隊長ではなく総長という肩書きだったらしい。

調べて見ると元ネタであろう「京都見廻組」自体が2組の隊から成っていたという話だったので、こっちの見廻り組も1つ1つの部隊を率いる隊長達がおり、ホテイはそれらを総括する立ち位置にいるっぽい。94巻で都の警備にあたってた侍達とか、やたらと目立つ地蔵みたいな人とかが隊長候補かな。
結局ほとんど見せ場を貰えなかった見廻り組だけど、こういった組織設定がもし用意されてるなら本編でもう少し見てみたかったな、という気持ちは強い。SBSかVIVRE CARDに期待かな。



■クイーンの非情

プレジャーズ達には悪いけれど、カイドウが元々掲げていた野望の1つに「全員能力者の海賊団を作る」というものがあった時点で、もう能力者になれないプレジャーズが百獣海賊団で生き残る道は最初からなかったのよね……。
今はまだ「数」という力を求めて生かされていたけれど、遅かれ早かれこういう扱いを受ける事は必然だったと言える。
あくまで海賊団ですからね。船長が求める力を持っていない部下を、延々置いておく義理もない。
むしろ部下全員を皆殺しにする事を計画に含めていた船長が物語の最序盤に登場している事を考えると、ワクチンを用意していただけ有情な部類かもしれない。

個人的には、兎丼の採掘場で見せた初登場時のクイーンは少しコミカルに寄りすぎていて、四皇の最高幹部としての威厳があまり感じられなかったので、このぐらいの悪党感を出してくれたのは嬉しいです。敵ですからね。
まあ元々、大相撲インフェルノ中に部下を見下したような発言があったり、「小紫が死んだなんて言ったらおれ達が殺される」と部下に思われてたり、片鱗はあったんですけどね。今回やっとこさハッキリした感じ。



■チョパファージ霧砲ネブライザー

ネブライザーってアレでしたっけ、喘息の時とかに使う吸入器。私も昔使った記憶があります。
ウイルスに対してそれを中和するウイルスで対抗する、っていう発想は言葉にするだけなら簡単だけど、この短時間でそれを成し得るのは容易ではないはず。
高い製薬技術を持つトリノ王国の薬学を学んできたチョッパーだからこそ実現可能な対抗手段ですね。
その使用方法も、霧の砲弾を大砲に込めて撃ち出すという、Dr.ヒルルク最期の薬を彷彿とさせる使用方法なのがなんとも。

「たぬきに倫理を説かれる筋合いはねェ」と半ギレのクイーンさんだけど、そもそもチョッパーは倫理面より、「ウイルスを戦闘に使えばいつか手に負えなくなる」という医術的な観念から見た事実を述べているだけなのが興味深い。
両者の考え方の差や、医者と科学者という立場の違いが表されているやり取りだなと思いました。

最終的にはマルコの手助けもあり、怪物強化にてクイーンに一撃をかます事に成功したチョッパー。
大看板相手に血を吐かせる戦果は素直に凄いものの、流石に3分間の制限時間内に撃破まで持っていける相手ではないし、チョッパーの活躍は一旦ここで終わって誰かと交代ですかね。
個人的には、相手のレベルに対して戦力不足の懸念があるナミ、ウソップと合流して、元弱小トリオが組んで強敵と戦う展開希望。



■ベガパンクの失敗作

シーザーがSMILEという人造悪魔の実を作り出したのと同様に、彼と同じ研究チームにいたベガパンクも、人工的に悪魔の実を生み出す研究をしていた。
現状描かれている中では、ベガパンクが生み出した悪魔の実は1つだけで、それはパンクハザードに保管されていたと。モモの助が食べちゃったアレですね。

今回のCP-0の会話にて、その悪魔の実がカイドウの血統因子を抽出して作られたものである事が判明。
モモの助がカイドウと同じ龍の姿を得たのは、偶然でも皮肉でもなく当然の結果だったわけですね。
しかしカイドウは元々龍の因子を持っていたわけではなく、あくまで能力を得た事で「後天的に」龍の姿を得ただけに過ぎない。
にも関わらずカイドウから龍の血統因子を抽出できたという事は、悪魔の実を食べると本人の血統因子が書き換えられてしまうという事になる。

まだ『血統因子』というのが何なのかがまだ詳しく分かっていないのでアレだけれど、普通に考えたら割と怖い現象だと思う。要は遺伝子が書き換わってしまうのと似た様なものだろうから……。
まあ、動物の因子を宿す動物系能力に限った現象なのかもしれないけど。


CP-0はこの失敗作の悪魔の実について「失敗作でよかった」と意味深な発言をしているが、前後のセリフが微妙に回りくどいため、真意がなかなか読み取りにくい。

「その時吹き飛んでいればいいが」というセリフから、少なくとも政府の目が届かない場所に、ベガパンク製の人造悪魔の実が存在していては不都合だという事は分かる。
その後、パンクハザードの爆発後も研究所が稼働していた事に触れた上での「失敗作でよかった」なので、流れ的には「仮に誰かの手に渡ったとしても失敗作だからセーフ」って事なのかな……?
まあ、シンプルに「カイドウと同等の能力者が1人増える」って考えただけでもゾッとしない結果ではあるんだけども。


個人的な疑問点としては、「なぜベガパンクは失敗作の実を政府に渡さなかったのか」というのが気になる。
不完全とはいえ人工的に悪魔の実を作り出す技術など、世界的な大発明。
研究のステージが1つ上に進んだことは間違いないのだから、自身の功績として素直に実を献上したって良さそうなものだ。それとも、そうする事もはばかられるぐらいに危険なデメリットを隠し持った失敗作だったのか。

失敗作というのが具体的に何を指しての事なのかは分からないが、現状モモの助が他の動物系能力者と異なっている点としては、「変身能力の発動を制御できていない」という点かな。
本来なら自分の意思1つで変身を可能とする動物系能力だが、モモの助の場合は自身の感情が昂った場合などに自動的に変身が発生している。

これは単純にまだ幼く、能力の扱いに慣れていないだけという可能性はあるが、この「発動を制御できない」というのが失敗作たる所以で、かつこの一点がとんでもない結果を招いてしまう事を、ベガパンクは予想していたのかもしれない。
例えばアニメオリジナルの「海軍超新星編」に登場した海兵のオールハント・グラントは、かつて自身の動物系能力を制御できず、島ひとつを崩壊させてしまった過去があった。
これはアニオリなので原作本編に絡んでくる事はないだろうが、制御できない能力とはそれ程までに危険なのだ。暴走する力に振り回された幼き日のリンリンの例なんかもある。
しかし兵力を求める政府は、そんな危険を冒してでも不完全な能力に手を出すだろう。それを危ぶみ、ベガパンクは完成した実を「失敗作」と称し、渡すことを固辞したのかもしれない。


何にしても、CP-0さんの決め顔での「失敗作でよかった」発言は、この失敗作によってとんでもない事が巻き起こる大フラグ。
個人の力としては何も出来ない未熟な子供であるモモの助だけれど、もしかしたらこの「失敗作」の暴走により、何か大きな活躍をする結果になるのかも……?



■復活のおでん

数話前、シルエットに隠れた謎の人物の手当てにより、辛くも起き上がれるようになった赤鞘九人男(+イゾウ)。
いい加減そのシルエット誰やねんという多数読者の思いをガン無視し、赤鞘の前に現れたのはなんと光月おでん。死んだんちゃうんかい!!


……と言っても、このおでん様はまあ恐らく偽物だろう。死んだ人物を生き返らせることは基本的にはしないと尾田さんも言及してるし……(例外あり)。

おでんの偽物や幻影を作り出せる人物としては、カン十郎オニ丸、大穴で97巻曰く「幻術」を得意とするオロチお庭番衆の猿飛あたりかしら。(変化が得意な大黒はヒョウ五郎によって撃破済み)
……まあ猿飛はないだろ。この引っ張り方で猿飛だったら「誰やねん」の大ブーイングだよ。
ワノ国との因縁で言えばマネマネの実があるが、ボンちゃんは今もインペルダウンにいる筈だし、仮に出てきていたとしてもおでんにタッチできる機会など皆無だろうから、まああり得ない。


個人的な予想としては、やっぱりカン十郎の仕業派かな。
というのも、ここまでおでんの無念を晴らすべく戦って来た赤鞘の目の前におでんの姿で現れ、「あ、やっぱ偽物でしたー」をやるのって中々に悪質な嫌がらせだと思うの。
そう考えると、完全な味方陣営がやる事としては違和感が強い。オニ丸は確かに狐畜生だけれど、あれだけ人と密接に触れ合った動物が、そんな人の心を理解していない行動に出るとは思えない。

その点カン十郎はそもそも敵だし、正体を現してからは赤鞘達を挑発するような言動・行動が度々見られる。おでんの幻影を見せる事で不意打を成功させやすくしたり、精神面から崩そうとしていると考えると、行動として理に適っている。

赤鞘の面々に治療を施したのが、ここまでロクすっぽ本筋に絡まず、ここで出なきゃ何のためのキャラやねん感もある光月日和だとするなら、彼女はカン十郎の裏切りを恐らく知らないため、屋外でぶっ倒れている彼にも手当を施した可能性は考えられる。
日和自身は別の目的で島を訪れており、赤鞘が目を覚ませば自分を止めようとすると考え、治療だけを施して退散。河松が「夢だろう」と割り切ったのは、ワノ国本土に隠れており鬼ヶ島にいる筈のない人物だったから。
で、目を覚ましたカン十郎は城内へと舞い戻り、バオファンの通信を頼りに宝物殿へと向かったと。
(日和はなぜ赤鞘の居場所が分かったんだ、という問題が出てくるけど、まあ今は置いておく)

またおでんを本物だと思い込ませることが策略としてあるなら、おでんの腰に差している刀が閻魔や天羽々斬ではなくなっている事も納得がいく。
すでにゾロの手に渡っている閻魔を持たせるより、別の刀を代用させた方が騙しのリアリティは増すからだ。


……とまあ、カン十郎の仕業じゃないかと思う理由は多々あるのだけど、一番の理由としては「カイドウとの戦いをルフィに任せた以上、赤鞘達が戦って意味のある一番の敵は黒炭家だから」という点。
とんでもなくメタい考えだけれど、やっぱりワノ国に起きた悲劇の根幹には黒炭家と光月家の確執が関係していたはず。
カン十郎がどういう結末を迎えるにせよ、そこをうやむやにしたまま終わってしまうと、ちょっとモヤモヤしたものが残りそうだな、と思う。
オロチ様も生き延びていると個人的には思っているので、彼らとの決着は赤鞘ないしはモモの助にきっちりとつけて欲しいかな。


ついでに言うと、「おでんが実は本当に生きていた、生き返った」という展開には、どれだけ納得の行く答えが用意されていたとしても、個人的にはして欲しくない。
仮におでんが復活してしまったら、これまでおでんの最期の言葉だけを導に開国を目指し命を懸けていた錦えもん達や、死んだ父の名を背負い一人前の将軍になろうとしているモモの助の覚悟は何だったのか、という話になってしまうじゃないですか。それはちょっと違うだろうと、私は思うんです。