また久々の感想になってしまった。
週刊少年ジャンプ2021年26号分のONE PIECE感想です。
ネタバレを含むので、自分で買ってから読んでください。 





■ルフィとジョイボーイ
「覇王色の覇気を纏う」という新技術の会得により、カイドウと互角に渡り合うかと思われたルフィ。
しかし奮戦虚しく、カイドウには敵わず宙に浮かぶ鬼ヶ島から叩き落されてしまった……という前回からの引き。

当初はたまたま下を通りかかった誰かの船に救助されるものかと思っていたけど、結構思いっきり海に沈んでしまった。
ハートの海賊団有する潜水艦なら拾い上げることも可能だろうけど、今どの辺りにいるのやら。ロー達を送り届けた後再び潜伏していたけれど、鬼ヶ島から一旦離れているのかな。急に島が浮かび上がった時はさぞ驚いた事だろう。

まあモモの助の様子を見るに、ルフィの助けになるのはモモに「声」を送っている生き物という事になるのかな。
ズニーシャはワノ国の近くにまで来ていると思うけど、待機しているとして滝下だろうし……上まで登って来る手段はあるんだろうか。
動かす事ができれば、大戦力どころの騒ぎじゃないけどね。



そして落下していくルフィを見ながら、カイドウさんは意味深な一言。
「お前も…“ジョイボーイ”には……なれなかったか………!!」

まずカイドウがジョイボーイの名を知っていたというのが驚き。
てっきり表の歴史からは存在を消され、今は歴史の本文を読み解く事でのみその存在を知れる人物(称号?)なのかと……。

おでんを除くワノ国編の関係者でジョイボーイの名を知っていそうな人物というと、ロビンやネプチューンの会話を盗み聞きしたカリブーがいる。
とはいえ、仮に彼が命惜しさにこの情報を伝えていたとしても、「ジョイボーイとは何者なのか」までを掴む事は不可能っぽいし。

かと言って一般に「調べようと思えば調べられる」名前とも思えないので、ログポースの終着点である水先星島に辿り着くことで知れるんだろうか。
イヌアラシ曰く、歴史の本文の重要性にも、本来ここで気付くらしいし。
それともロックス海賊団が集結した理由である「儲け話」に、ジョイボーイの存在が関わっているとか? 「世界の禁忌に触れ過ぎた」とされるロックスなら、ジョイボーイが何者なのかを知っていてもおかしくなさそうだ。



1011話にて、カイドウがルフィのことを
「……楽しそうだな……窮地ほど笑い……」
「笑う程に………!!」「……か」
と評していた(「笑う程に」どうなるのかは微妙に不明」)のも、ルフィの中にジョイボーイの可能性を見出していたからなんだろう。
やっぱり、「笑う」「楽しむ」と言ったワードは、ラフテルやジョイボーイの謎に関わって来そうね。


しかしそもそもの話、何をもって「ジョイボーイになれた」という事になるんですかね。
ロジャー達が「おれ達は早すぎた」と理解したのはラフテルに到達した後っぽいし、世界の全てを知ってみない事にゃ分からない話の気もする。
カイドウはもうルフィを打ち倒し、その命運を摘み取った気でいるから、「ジョイボーイではなかった」と判断したんだろうけど。

なんとなく、カイドウの思ってるジョイボーイ像には、実際のそれとズレがありそうではある。
ニューゲートと違ってロジャーから直接話を聞いてるわけじゃないだろうから、ジョイボーイの人物像やワンピースの正体についても、多少の推測は入ってるだろうしね。



■チョッパー VS クイーン
攻撃がほとんど通用していないとはいえ、ペロスペローの援護射撃を受けた状態のクイーンを相手に、20分以上も戦い続けられるチョッパーのタフネスっぷりは中々凄いですね。
元は3分間という短い強化だった怪物強化に、シーザーの助言を加えることで制限時間を30分まで伸ばしていたと。

元々シーザーはベガパンクに勝てないというだけで、科学者としては超一流だし、自分の才をひけらかしたがる性格でもあるので、上手く扱えば便利な人物ではあるんですよね。倫理を無視した技術に走るのが珠にキズだけど。
シーザーのケガの具合的に、この回想はパンクハザード~ドレスローザ間のことだろうけど、WCIの頃はまだ改良に必要な薬品が揃ってなかったのかな。

一方のクイーン、巨大化したチョッパーの攻撃を受け続けてまったく堪えてないのも流石だけど、遂に口からビーム出し始めたよこの人。お前はマジュニアか。
見た目もパシフィスタのレーザーに似てるし、ジャッジと面識があるっぽい言動も含め、やっぱりベガパンクが元いたチームの関係者なのかな。ベガパンク、シーザー、ジャッジ、クイーンからなる研究チームって何それ濃ゆい。胸やけする。

それはそれとして、『ブラック光火(コーヒー)』って技名はアホほどダサいと思います。



■人生の大根役者
今回で一応、赤鞘九人男と黒炭カン十郎の戦いに幕が降ろされました。
カン十郎が狙っていたのは「光月の心臓」たるモモの助なので、それを守り抜いたという意味では、赤鞘側の勝利に終わったと言えるか。
しかし同時に、赤鞘側は重大な戦力であり同胞であるアシュラ童子と菊之丞を失ってしまった(死んだかは知らんけど)。戦いの内容をふまえても、しこりの残る勝利ではあっただろう。

裏切り者とはいえ元同胞を相手に切っ先が鈍り、それが基でアシュラを討たれる結果を生んでしまった菊之丞。その後自ら錦えもんに同道を願い出たものの、おでんへの恩義の前に結局は、刀を振るう事ができなかった。

これに関しては正直、菊之丞にはきちんとカン十郎を討ちとり、自分の手でケジメをつけて欲しかったですね。
一度目のしくじりについては人間的な情の深さ、仲間への想いの強さとして肯定的に取れるものの、二度目となると流石に甘すぎると言わざるを得ない。
片腕を失っても戦うことを止めない芯の強さを見せた菊之丞だからこそ、ここはひとつ情を振り切って欲しかったと思う。死の覚悟を決めた侍としては、少し残念な最期だったかな、個人的には。情を押し殺して行動できる人物が好きなので。
自らの命を捨てる覚悟は決まっていても、仲間や大切な人を斬る覚悟とはまた別物だった、とは言えるけども。

まあ、片鱗はあったんですよね。
1012話にて、単騎でモモの助を守りに行こうとする錦えもんに対し、
「カン十郎は拙者に討たせてください!! 次こそ……!!!」
と願い出た菊之丞。
それに対し錦えもんは、二つ返事で頷く事はなく、「……」と一度悩むような表情を見せている。
今回の内容を鑑みると、錦えもんはどこかで、菊之丞に情を捨ててカン十郎を討ち果たす事はできないと分かっていた様な気がする。
長い付き合いだし、菊之丞の性格は家族程に理解している筈。それでも同行を許したのは、自らの手で決着をつけたいという菊之丞の想いの方を汲み取ったからなのかな。



一方のカン十郎について。個人的、現時点でのワノ国編影のMVPと言っていいぐらい、面白いキャラクターに仕上がったと思う。
サブタイトル的にも、今週号の主役は彼だろう。倒れる瞬間、うっすらと涙を浮かべている辺りに、彼の中にあった心が透けて見える。

カン十郎の人生は、常に何かを演じる事に終始してきた。
彼の演技が生み出すリアリティのもとは、自らが作り上げた仮想の人格に、「心から」成り切ることにあったと思う。おでんの処刑後に散り散りになって逃げる際、わざわざ心の中でおでんとの出会いを思い出しながら涙を流している辺りからも、それは見て取れる。

そんな形でおでんに仕える自分を演じている内に、光月家臣としてのカン十郎が、確かに心の一部として生まれていた。心からおでんの家臣として生きる生き方にも、どこか幸福を感じるようになっていたんだろう。

すべてを打ち明け、おでんに改めて臣従する道もあった筈。
しかし、彼はその出自から「役者」としての生き方しか知らず、オロチというある種の救世主によって与えられた死に場所に、囚われていた。役を脱ぎ捨てた本来の自分として生きる事など、思い浮かべすらしなかった事と思う。
だから彼は、光月の「裏切り者」として踊り続けた。そうする事しかできなかった。
そして最期に出た「光月家臣」としての心が、錦えもんを親友と呼び、涙を浮かべさせたんだろう。

モモの助を討とうとしながら、錦えもんに斬られる事を望んでいた。光月への確かな想いを持ちながら、役に殉ずる道しか選べなかった。主君の名を汚し同胞を斬る一方で、親友に斬られる事を願いその最期に涙する。
役に徹するあまり、どちらが役でどちらが本心などと割り切れない複雑な精神。黒炭と光月。どちらもが役であり、どちらもが本心であるとさえ思わされる。
二面性という言葉では説明しきれない矛盾した行動とその生き様こそが、カン十郎の魅力なんだと思う。

まさに人生の大根役者。生きることへの上手さを欠片も持ち合わせていない裏切り者の、見事な最期だった。
まあ、死んだか分からんけどね、ONE PIECEだし。



そしてラストでは、カン十郎を斬った錦えもん達のもとにカイドウ襲来。
速いな。まあ龍になって外から回り込んでるんで、そりゃそうなんですけど。
屋上に向かってるヤマト、見事にスルーされたな……一度スカされて、その後復活したルフィと共闘する流れかしら。

ちょっとヤバ目な攻撃の受け方してる錦えもんだけど、無事なんだろうか。
刀こそ折られているものの、攻撃を受けた箇所や表情が写ってないので、何とか助かってそうな気はするけども、果たして。