「novel A」感想、第2話です。
本当は前後編に分けようと思ったのですが、3話目の感想が長くなりすぎたので各話毎に分ける事にしました。

そして前編から数日しか空いて無いってのに、細かい内容をすっかり忘れたので再度読み直しました。なんという効率の悪さ。恨むべし破滅的な記憶力。

というわけで2話目の感想は続きからどうぞ。1話目の分は前編にて。







〇第2話
 第1話においては、エースとマスクド・デュースとの出会い、メラメラの実の獲得、ストライカー誕生秘話などが描かれた「novel A」。
 デュースと共にスペード海賊団を結成したエースですが、2話目では少々時系列をすっ飛ばし、既に海賊として名を上げつつある状況となっている。 

 この第2話で行われる事は、基本的にはエースの新たな仲間達の顔見せ。
 故に物語として何か大きな出来事が起こるワケではなく、情報の提示を主題とした箸休め的な回となっている。ページ数的にも、全3話の中で最も短い。

 エースの首に懸けられた賞金を狙う賞金稼ぎとの船上戦を舞台に、船員それぞれの特徴や持ち味が紹介されていく流れ。
 今回登場した「スペード海賊団」の主要なメンバーとしては、以下の3人。

ミハール
 海の男でありながら「教師」という肩書を持つ異色の男。
 様々な理由で教育を受けられない子供達のため、海を越えて教鞭を振るいたいという夢があるらしい。
 しかしその肩書上、海の男達とはどうにも馬が合わず、中々受け入れて貰えなかったという。そんな中、彼の夢を応援するエースによって連れ出され、一味の仲間入りを果たしたのだ。

 シルクハットにメガネという紳士的な出で立ちとは反対に、引きこもり気質で普段はほとんど外に出てこない様だ。それでいて狙撃の腕前はかなりの物で、本作では銃撃により姿すら見せずに敵の武器を叩き落とすという凄技を披露している。
 その様は、彼と会話をしている最中のデュースですら、どこから狙撃しているのか分からない程。
 ・・・それは狙撃の腕が凄いのか? 喋ってるのに姿が見えないのは、もう隠密能力の賜物な気もする。

 詳しい経緯が語られたワケではないが、エースが彼の夢を応援するのは納得。エース自身、「教育を受けられない子供」の立場だったワケだし、マキノから礼儀作法を学んだ事で「教育の大切さ」もある程度は理解している事だろうし。

 しかし、騒ぎ立てる賞金稼ぎへの銃撃を「無粋な客への教育」と称している辺り、なかなかの不良教師になりそうですなぁ・・・いわゆるインテリヤクザってやつっすかね。

 ちなみに、多分ミハールかな? と思われる後ろ姿は、本編においても登場している。シルクハットにライフルを構えた姿から、たぶん彼だろう。こう見ると、この時期はかなりデカめの狙撃銃を扱ってるみたいだ。

ミハール







ONE PIECE第57巻 552話より引用






写真 2018-04-11 16 14 36




ONE PIECE第57巻 552話より引用





 上の方のコマでは服が黒塗りにされてないけど・・・まあ、気にする程でもないか。これ描いた時点ではスペード海賊団の仲間を発表する機会があるとは思ってなかったやろし、そこまで気を遣って描いてなかったんだろう、多分。
 シルクハットの男というと、もう一人レオネロなる人物が設定画に描かれており、若干紛らわしい。彼の武器は三叉槍なので、後ろ姿だとそこで見分けるよりなさそう。

 また本書に掲載されている設定画においては、「コミュショー」なんてメモ書きが添えられています。うん、ストレートな暴言だ。


スカル
 「蒐集人」を自称する海賊マニアであり、スペード海賊団の「情報屋」。
 海賊好きが高じて様々な海賊船に密航し、見つかっては雑用として世話になるという生活を送って来たという人物。
 名前の通り髑髏グッズのコレクターでもあり、全身に髑髏のアクセサリーを散りばめているという、内面・外見共にかなりの変わり者。情報屋として、自分の顔すらも情報の一つという考えから、仲間の前でも髑髏の仮面で常に顔を覆っている。その点で、デュースとは何かと気が合う様だ。

 様々な船に乗り込んだ事による知識量から、エースに情報屋としての才能を見出される事となる。その恩義から、世界一の情報屋を目指しスペード海賊団の一員となるも、本人の意志としてはあくまで「情報屋」であり、海賊ではないそうな。
 海賊好きなのに自分では海賊を名乗りたがらない辺り、なんとなくガチマニアっぽい。

 しかし数多の海賊船に自ら乗り込んでおいて、命を持って生還する世渡りの上手さは凄まじい。エース以外の海賊からは見向きもされなかったらしいから、戦闘能力が特別秀でているワケでもないだろうに。
 コビーなど、間違えて乗り合わせただけで2年もこき使われていた事を考えると、その交渉力も際立つというもの。まあ、あっちはあっちで不器用すぎだけど。

 賞金稼ぎとの戦闘時には、その豊富な知識量から相手の武器の弱点を見抜き、使用不可能な状態においやるという行動をとっていた。
 しかし、敵に銃を向けられた事よりも、その銃の希少さや髑髏の刻印に目が行くあたり、根っからのマニア気質だ。
 下手すりゃそのまま銃殺されてもおかしくないが、その緊張感のなさ故に敵側すらも戸惑わせてしまう。もしかしたら、これまで海賊相手に生き残り続けてきたのも、この辺が要因なのかもしれない。まあ、仲間からしたらヒヤヒヤもんだけど。

写真 2018-04-11 17 19 26




ONE PIECE第57巻553話、58巻567話、572話より引用


 スペード海賊団は白ひげとの敗戦後、白ひげ海賊団に吸収されている筈なので、彼もまた頂上戦争に参加していたのだろう。
 原作の頂上戦争編では多数のドクロマスクの者が登場しており、それぞれ微妙にマスクの形が違う。
 スカルっぽいのは・・・一番左、57巻553話の彼かな。髪形も近いし。真ん中はツノ付き、右は鼻までしか覆わない形状と、スカルの物とは少し違ってます。
 ていうか、髑髏マスク流行りすぎじゃないっすかね。スカルに憧れてつけ始めたやつでもいたのか、スカルのコレクションが流行したのか。


コタツ
 大型のネコ科の猛獣。動物系能力者などではなく、本物の動物。
 威嚇する際は猛獣らしい声を出すが、普段の鳴き声は姿に似合わず可愛らしい。
 密猟者の罠にかかっていた所をエースに救われ、そのまま懐いて仲間入りした。コタツという名も、エースが名付けたもの。デュースに次いで、またエースが名付け親となってしまった。

 コタツもまた、原作におけるエースとジンベエの決闘時にその姿を確認できる。
写真 2018-04-11 15 32 48




ONE PIECE第57巻 552話より引用






 その他、本文中では手長族のガンリュウや、魚人のウォレスという人物が仲間入りしている事が明かされる。
 各々居場所を持たないアウトロー達がエースを慕い集ってくる辺り、彼の人徳が表されているね。
 

 賞金稼ぎ達を撃退し、宴としゃれ込んだスペード海賊団。
 デュースによれば、エースの賞金額は、同レベルの海賊達に比べてもかなり高く設定されているらしい。それはエースの実力もあるが、ロジャーの血筋を持つ事が、何か関係しているのではないか、とデュースは邪推する。

 うーむ、確かにルフィの事例を見ると、賞金額は当人の実力以上に、起こした事件の危険度によって上がっていくという印象がある。いくら自然系の実力者でも、際立った事件を起こした訳でもないのに額がどんどん上がっていくのは不自然と言えば不自然。
 しかし、ロジャーとの繋がりが原因かと言えばどうなんだろう。
 お前が母親の名を名乗り・・・
 「スペード海賊団」の船長として卓抜した力と速度でこの海を駆け上がっていった時・・・
 我々はようやく気づいたのだ
 ONE PIECE第56巻 551話より
 このセンゴクの言を借りるなら、海軍がロジャーとの繋がりに気づいたのは、エースが既に名を上げた後。
 またセンゴク曰く、時を同じくしてそれに気づいた白ひげは、エースを自身の船に乗せたという。これはあくまでセンゴクの推測なので、白ひげが本当に、エースの申告より前からそれを知っていたかは分からないが、ハッキリしているのは「海軍がロジャーとの繋がりに気づいた時期」と、「エースが白ひげの船に乗った時期」はほとんど一致しているという事。

 となれば、まだ新世界にも入っていない駆け出しのエースが、ロジャーとの繋がりによって懸賞金が上乗せされていたとは思いづらい。この時点では、海軍もおそらくはその事実に気付いていなかっただろう。
 ・・・まあ、ロジャーの血筋を持つことが、エースの類稀なる戦闘能力に関与しているという意味では、デュースの予感も間違いではないのかもしれんが。
 あるとすれば、エースが「D」の名を持つ事かな。ただ、ルフィの懸賞金の高さには「D」の名は関係していなかったので、ただDの名がつくだけならあまり関係ない気もするけど。


〇釘打ちのイスカ登場
 第2話におけるもう一つの主題が、この女海兵・イスカ少尉との邂逅。
 細身の剣を用い、釘を打つ様な正確な剣技で敵を穴だらけにする事から“釘打ち”の異名がつけられたらしい。

 もはや将官クラスですら役者不足な空気が漂ってきた原作本編から考えると、少尉というのは物足りなく思うかもしれないが、ミハールの狙撃弾を事もなく弾き返すなど、その実力は確か。
 単身、敵船に乗り込み、多対一の状況ながらもその制空圏を完璧に掌握し、敵を近づかせぬ威圧感を放つイスカ。
 多数の軍艦を率いながら単騎で敵に挑む、一見非効率的とも思えるその戦法の真意は、自らを囮に敵の意識を惹きつけ、その隙に艦隊による包囲を完成させる事にあった。

 しかし、その意図に一瞬早く感づいたデュースの操舵術により、軍艦の一隻を岩礁地帯へと追いやる事に成功する。
 包囲網に空いた穴から脱出を図るスペード海賊団の船を離れ、イスカは海へと飛び込む。それは、軍艦のダメージによって海へと投げ出された部下達を、救いにいくためだった。

 荒波に物怖じもせず、部下のため身を挺する彼女を「いい奴」と称し、エースは浮輪を投げる。
 敵に救われる事となったイスカは、助けた事を後悔させてやると、いずれエース達を捕らえる覚悟を叫ぶのだった。

 短めのシナリオ、かつ海上戦故、エースとの直接対決こそ見られなかったが、その中で彼女の技量、そして男勝りながら部下を尊ぶその人格は十分に描かれていると思われる。

 ただまあハッキリ言って、ここでエースと本気でぶつかったところで、彼女に勝ち目は無かっただろう。いかに実力者とは言え、武装色の覇気も扱えぬ少尉の身空では、エースに有効打を与えられるとは考えにくい。
 まあ彼女に関しては、その人となりが本格的に描かれるのは次の第3話に持ち越しになる。