第836話
「マムの秘密 巨人の島エルバフと小さな怪物」 





【原作の対応話数】
86巻 第866話



もくじ
あらすじ
原作からの変更点
感想
登場した技
声の出演

【あらすじ】
 
今から63年前、5歳にして故郷から追放されたシャーロット・リンリンは、別れを惜しむ両親自らの手により、エルバフの地へ置き去られる事となった。
 かつて人間と巨人の争いを未然に防ぎ、和解を促したとされる"聖母"マザー・カルメルに迎え入れられたリンリンは、エルバフに存在する"羊の家"と呼ばれる家で、他の身寄りのない子供達と共に過ごす事となる。

 リンリンは心優しい少女ではあったが、生まれながらにして持ち合わせた圧倒的な力と体格により、動物や子供達に悪意のない暴力を振るってしまっていた。一時は周囲に怯えた視線を向けられる彼女だが、全てに許しを与えるというカルメルの教えにより、徐々に他の子供達とも親しくなっていく。

 やがてエルバフに、12日間の断食を行うという"冬至祭"の時期が訪れる。太陽の"死と復活"を祝う祭りであり、苦しい断食を乗り越える事で、太陽への感謝をより一層強くするというものであった。
 だがリンリンは、断食前の栄養補給として食べたセムラの味が忘れられず、断食7日目にして我を失い、村を焼き払うほどの暴挙を犯してしまう。
 元巨兵海賊団船長"滝ひげのヨルル"は、村を破壊したリンリンを"悪神"と断じ、斬り伏せようとする。だがそんな状況にあっても、自我の失われたリンリンは、ただひたすらにセムラを欲し続けていた。



【原作からの追加点・変更点】
※セリフの変更点は細かい差異が多いため、気になった箇 所のみ紹介

・リンリンを連れて来た船の船長が手にしていた酒瓶が削除。

・リンリンが置き去られてからカルメルに出会うまでのシーンが加筆。持たされたお菓子を食べ尽くしたシーン、リンリンの腹の音を聞いた巨大なセイウチが逃げ去るシーン等。

・巨兵海賊団の解説として、「海という海を荒らし回り、町という町を焼き尽くした」という一文が追加。

・カルメルの年齢の記載がなされていない。原作では、63年前時点で80歳となっていた。

・カルメルの教えに則り、リンリンが熊とオオカミのケンカを仲裁するシーンが加筆。
 その巨体で熊たちを押し飛ばす様にして、気絶させてしまった。

・リンリンに手を握られたカルメルが、一瞬痛みに顔を歪めるシーンが追加。その後、すぐに表情を戻し取り繕っていた。

・羊の家の子供達が、リンリンの善意故の暴力に怯えた様子を見せるシーンが追加。その後、カルメルに許しを促される。

・カーシーとオイモの名前を表示するテロップが追加。

・カーシーとオイモ、および彼らが迎えに行こうとしたドリーとブロギーの紹介シーンが追加。
 ドリーとブロギーが、リトルガーデンでルフィ達の出航を助けたシーン、オイモとカーシーがエニエスロビーにてフランキー一家と戦うシーン、そげキングに真実を伝えられ、政府を相手に戦うシーンが紹介された。

・断食の事を聞いた際、リンリンが上げた大声に驚くモヒカン君(手長族)と仮面君(ガスマスク)のシーンが追加。

・ハイルディンの紹介シーンが追加。
 ドレスローザにて、ルフィや戦士達と共に広場を駆け抜けるシーン、マッハバイスを吹き飛ばすシーン、子分盃を交わすシーンが紹介された。

・鍛錬を積むハイルディンの背後に描かれていた、スタンセンと思われる少年の姿が削除。

・原作では名前が挙げられるのみだった、ロードとゴールドバーグの赤子の姿が描かれた。

・断食前、ハイルディンがセムラを食べるシーン及びリンリンの食べる速度に驚くシーンが追加。

・リンリンがセムラを食べるのを止めた巨人の、「太陽に感謝する気持ちを忘れちゃならん」というセリフが追加。
 また、リンリンが制止を跳ね除けてセムラを食べ続けるシーンが追加。

・断食4日目の羊の家に、ゲルズや巨人の少年が同席している様に変更。

・リンリンが「痩せてきた」というシーンが、断食5日目である事が明言された。

・断食6日目、セムラを食べたがるリンリンが、喰いわずらいの片鱗を見せる様に変更。

・発作を起こしたリンリンの大声に、ゲルズや羊の家の子達が耳を塞ぐシーンが追加。



【感想】
>リンリンちゃん5歳児
 5歳児にして既に両親の3倍くらいの体格をしてらっしゃいますね、リンリンちゃん。
 見たところ、両親の姿は普通の人間。なんでこんな異常な大きさの子供が生まれてしまったのかは未だに分かってませんが・・・個人的には、これも"血統因子"なるブツの影響なのかなと思う。

 いや血統因子に関してもほとんど明かされちゃいないんですが、何となくね。
 ホラ、魚人族なんかの場合、「両親がどんな魚を元にした魚人かに関係なく、遠い先祖の遺伝子からランダムに選ばれた子が生まれる」ってヤツあるじゃないですか。あんな感じで、リンリンの遠い先祖より、わずかに混じっていた巨人の遺伝子が、半ば暴走する形で現れちゃったんじゃないかな、と。

 で、そんな感じで代々先祖から受け継がれてきた、生物を構成する遺伝子の事を"血統因子"と呼ぶんじゃないかな。ベガパンクやジャッジは、それを強制的に引き出させコントロールする技術を作り出したと。憶測だけどね。
 かと言って、両親の様子を見るにリンリンが政府の実験体となっていたワケではないと思われる(そも、63年前に血統因子は発見されていないハズ)ので、これは本当に偶然生まれてしまった子供なんだろうけど。まさに"NATURAL BORN DESTROYER"。


>酒を奪われた船長
 すっごいどうでもいいけど、リンリンを置き去って行った船の船長さんの手から、酒瓶が消えてます。
 BPOだかのお怒りも厄介なこのご時世、たとえ船とはいえ飲酒運転させるワケにもいかんかったんですかね。
 でも別に誰も困らない。というかたぶん誰も気にしてない。地球に優しい自主規制。
 

>置き去られたリンリン
 なんか、原作比6割増しくらいで悲壮感漂ってらっしゃいますね。
 音楽のせいなのか声がついたせいなのか。いや、空っぽになったリュックを名残惜し気に揺さぶるシーンの影響か。なんとなく、ゼフと共に漂流した時のサンジを思い出してしまう。

 しかし「腹の音を聞いただけで海獣が逃げ出す」ってのもスゴイ。
 確かにリンリンもデカイけど、あのセイウチもどきの大きさは彼女を更に上回る様に見える。なのにビビって逃げ出したって事は、過酷な海を生きた生物の本能が、食われると警鐘を鳴らしていたって事だからね。
 生まれながらに「捕食する側の存在」なのねリンリンちゃんは。


>シスター・カルメル
 アニメじゃ年齢表記がなされませんでしたが、リンリンを迎え入れた時点でカルメルの年齢は80歳。そして、巨人族の公開処刑を取りやめさせた時は37年前なんで・・・なんと43歳

写真 2018-05-15 19 35 21
©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 見えないわぁ。

 いわゆるひとつの美魔女ってやつですね。
 なんとなく、ワンピの女性陣って、50辺りを機に豹変するんですかね。骨格から老けだすというか。
 逆にそれまでは、20代の頃とほぼ変わらん見た目というか。

 
>羊の家の子達
 スタッフロールやテレビ字幕において、羊の家の子供達には便宜上の名前が割り当てられてます。
 と言っても本当に通称みたいなモノですけどね。下の声の出演欄を参照のコト。
 若干分かりにくいモノもあるけど、「モヒカン君」は関節千切られそうになった手長族の子、「仮面君」はガスマスクの子、「ヒンコン君」はグラサンの子っぽいですね。


>リンリンの暴力
 これはまた何と言うか・・・本人は100%善意である故、余計に太刀が悪いですね。しかも熊をワンパンで殺す殺傷性能付き。周りはたまったモンじゃないね。

 こういう場合、その歪んだ価値観や倫理観を修正し、導いてあげられる指導者に出会えれば良かったのかもしれないが・・・残念ながら、カルメルは「理解者」であっても「指導者」とはなれなかった様子。
 まあ冬至祭を迎えるまでの約10か月間は何だかんだ上手くやっていたみたいだけど、カルメル失踪後の現在はもう歪みに歪んでたからね。彼女を「受け入れる」事はできても、「導く」事はできていなかったみたいだ。

 まあ、カルメルの教えや失踪に関して話すのは次回かな。一応、ビジターにアニメオンリー派の人もいるらしいしね。結構ネタバレ放り込んでる気もするけど。


>ドリーとブロギー
 流石に十数年出てないしみんな忘れてるやろ、って事で解説が挟まれたお二人。
 扉絵連載なんかじゃ度々出てるけど、本編じゃ全然出てないからね。彼らが出てた頃のワンピを知らないファンもいるだろうし、こういう解説フェイズはありがたい。ついでに、メリー号とも久々に会えたしね。

 そしてドリー役の郷里大輔氏。そういや、2010年の御逝去から未だ、後任の役者がついていないんだった。
 まあ出番もないしねぇ・・・ゲームとかでも、声付きで出て来るキャラじゃないし。
 ライブラリ出演とは言え、久々に御声が聞けて嬉しかった。皆もついでに、ホットドッグ将軍をよろしくね! あとねじまき島の町長さんもね! ロックスターは別にいいや!


>冬至祭後のお祭り
 そういや、リンリンの暴走でメチャクチャになっちゃったもんで、このお祭りってのが何をやるのか分からず仕舞いでしたね。
 まあ子供のゲルズが楽しみにしてるくらいだし、現代日本で言うお祭りと大差ないんでしょうけども。
 エルバフじゃどんなもん食うんでしょうね。かき氷とか、出してくれるんですかね。俺はブルーハワイでお願いします。え?出ない? あ、そう。


>スタンセン
 ルフィやレイリーに救われ、のちにハイルディンの仲間となったスタンセン。原作では、彼の幼少期の姿と思われる少年が描かれていたが、アニメでは残念ながら削除されてしまった。

 うーん、彼の名はファンブックと扉絵連載でしか明かされなかったから、アニメじゃ未だに名もない巨人扱いだと思うんだよな。のちの事を考えると、オリジナルシーンとかで触れてあげても良かった気がする。
 
 ついでに、ゲルズがハイルディンを意味深に見つめるコマも削除。まあこっちは・・・意図が確定してるシーンでもないし仕方ないか。


>セムラ
 マジパン入りのパン生地で生クリームを挟み、更に粉砂糖をまぶすと言う糖分のお化けみたいな代物。甘味が苦手な人からしたら、聞いただけで吐き気がしそうだ。俺は甘党だから平気だけど。

 どうやら実在するお菓子の様で、スウェーデンでは伝統的なお菓子らしい。現実においても、主に復活祭期間中の断食前に食べられてたんだとか。へー。(※wiki調べなのでアテにしないで下さい)

 豪傑だらけのエルバフとはいえ戦士以外の女性なんかもいるワケで、12日という長めの断食にはこういった栄養補給が欠かせないみたいだ。というか、前後にセムラと祭りというお子様ホイホイを設置する事で、子供が断食を嫌がるのを防ぐ狙いもあるのかもしれない。知らんけど。
 
 どうでもいいけど、巨人の平均寿命300歳をゆうに超える340代のお二方は、こんな糖分お化け食べてだいじょうぶなんですかね・・・? 高血圧とかで、コロッといっちゃったりしないんだろうか。余計なお世話?


>リンリンに笑いかけるヨルル
 セムラを食べる前、ヨルル様とヤルル様が羊の家の子らを呼びに来た際、ヨルル様は「ちょうど良かった」とリンリンに笑いかけてるんですね。

 この表情が見えるのはアニメだけなんですが、のちにヨルル様は、村を破壊したリンリンに「とうとうやったな」と、以前から彼女を危険視していた事が分かるセリフを吐いている。
 にも関わらず、この満面の笑み。これにより、ヨルル様がいかにカルメルを信頼していたか、そして彼が疑わしき者に対しても、実際に大罪を犯してしまうまでは平等に接する精神の持ち主であった事が分かる。
  
 まあ結果論だけで言うなら、その甘さがリンリンの暴挙を許してしまう事になったとも言えるが・・・これは流石に、彼を責めるのも酷かな。


>巨人国エルバフ
 リトルガーデン編におけるドリーの話では、エルバフとは「村」であると説明されていた。
 だがこのホールケーキアイランド編においては、シフォンの口からは「巨人国エルバフ」と、エルバフが「国」であるとされている。この違いは一体なぜ生まれているのか。

 この63年前の時点でエルバフに生まれたロキは「王子」と呼ばれていた。この時点で、エルバフはひとつの「国」に属しているらしい。
 しかし今回、リンリン達を呼びに来たヨルル様は「村でセムラを食べる」と言っている。やはり、彼らが住まうこの地は「村」なのだ。

 よっておそらく、この地は「巨人国エルバフ」の中に「エルバフの村」が存在しているが為に紛らわしい事になっているんだと思われる。広島県の中に広島市がある様なものだ。

 国の名を冠するくらいだし、首都と呼べる様な土地なんだとは思うが・・・それにしては、村人全員を集める事が出来たりと、その規模は大きくはない。たぶん、エルバフは国とは言っても、この村にプラス城を含めたくらいの小国なんじゃないかな。
 このウォーランドの地には謎の巨木が存在してるし、その巨木のもとに集った過去の巨人達が集落を築き、やがて国を名乗る様になっていったんじゃないかと思う。



【登場した技】  
・覇国
使用者:ドリー、ブロギー
 2年前のリトルガーデンにて、島を喰らうほどの巨体を持つ金魚"島食い"を突き破り、ルフィ達の出航を助けるために使用した技。
 今回はドリーとブロギーの紹介のための回想シーンとして登場した。



【声の出演】
ルフィ・・・・・・田中真弓
ビッグ・マム・・・小山茉実
リンリン
マザー・カルメル・・・平野文
シスター・カルメル

ナレーション・・・大場真人

ゲルズ・・・・・・桑谷夏子
ヨルル・・・・・・田中亮一
ヤルル・・・・・・佐藤正治
カーシー・・・・・福原耕平
オイモ・・・・・・岡本寛志
ライディーン・・・小山剛志
ハイルディン・・・日比愛子

リンリンのママ・・・粗忽屋所沢店(山口由里子)
リンリンのパパ・・・宮崎寛務
モヒカン君・・・・・清都ありさ
ヒンコン君・・・・・広津佑希子
仮面君・・・・・・・関根有咲
王子君・・・・・・・今野宏美
パンダ君・・・・・・長久友紀
ツリ目ちゃん・・・・石橋桃
船長・・・・・・・・千葉俊哉
将校・・・・・・・・新井良平
巨人・・・・・・・・平井啓二